窓の外は銀河(12)
猪、ときどき鰐
清涼な水と、躍動する海洋生物は、生命の輝きを示していて「彼」が喜んでいるということなんだろう、と思ったが、その景色はすぐになくなり、黒い玉の流れる川も卒業ということらしかった。
次に出てきたものがなにかといえば、
赤いイノシシである。なぜ猪か、は私にもわからない。その赤色は、郷土の土産物にある、焼き物の赤鬼のようなやや暗い強い赤で、全身すべての部分がその色でできていた。肌感は均一でシリコンや樹脂に近かった。
その赤いイノシシが、決まった通り道・・まるでレーンの上を流れるように、つぎからつぎへと等間隔で現れた。これだけでも十分にけったいな風景であるが、途中に流れてくるものはもっとけったいだった。
なにかの乗り物の座席にチョコンとのっている、ワニだった。ワニ、といっても本物の野生の鰐なんかではなく、爬虫類っぽい皮膚感のない、つるんとした暗い水色の肌のが、神社にいる狛犬のようなポーズで、よくよく思い出せばゴルフ場内を通行するカートのようなモノに乗って流れていたのだ。
こんなことで嘘をついてもしょーもないだろう、実際私が目の当たりにしたのはそうだったんだから仕方がない。嘘くさくても我慢していただくしかないのだ。目が片側に最低二つはついた赤いイノシシと、ときどきその赤の合間に、カートに乗ったうす灰色の狛犬ポーズのワニのようななにか・・・、が、私の部屋の中を等間隔で流れてきた。しかもその筋はひとつではなく、最高時6つあったと思う。
黒い玉のとき、川筋はほとんど直線だった。しかし、今回は違う、曲線が多かった。それはそうだろう、目の前に広がる世界は、ご丁寧に三次元の部屋に合わせてまるで「部屋にポータルを取り付けています。」みたいに、6つの入り口から赤いイノシシと時々ワニがやってきて、筋ごとに別の出口を作って部屋の外に出て行ったのだ。
いま、「彼」に聞いたが、赤でなければ抑えること=制御ができない、ということのようだった。かくして私は黒い玉と同様に、赤イノシシときどき灰水色狛犬型ワニを、浄化することとなった。
いやーほんとに洒落になんないなあ・・・とつぶやいたけれども、本当に洒落なんてもんじゃあなかったのである。
9月10日
その日は久しぶりの外出だった。私はJRの快速電車に乗っていた。目的は娘の志望大学のオーキャンだった。
バスと同じように、電車でもメタトロンの光を少しだけ、と思って廻すと、お腹や頭に目玉型のセベクさんをつけた乗客の姿が視界に入り、すぐ顔に出る私は娘に「ねえ、ママいまなんでぎょっとしたの?」と言われて素知らぬ顔で横を向いたが、思い直して、なんでもないと笑顔を作った。
それには理由がある。車外に顔を向けたら、電車に並走するデカイ目玉を見たからだ。ほんとうに、メタトロンは冗談がきつい。そして、目玉の速さに驚いた。音をさせないが並走する姿に擬音をつけるなら、「バビューン」である。
以前記事で漫画にしていました


無事に到着して、入口で飲料水を貰い、決められた教室に通されたけれど、私が不浄生物体、と呼んだ細胞型の丸っこいのが、緊張や疲労などでリラックスしてるとはいえない親子の合間を行き来しては、浄化しているときと同じように、不浄の波動を引き受けて青い色になり、自室の壁で見たのと同じように、床にぺたーっとくっついたままになった。いま気付いたが、私は初めての場所では緊張するたちで、そこでは低波動掃除機の設置を忘れた、というか思いつかなかったせいである。
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