【あがり症|仕事編5】孤独な仕事の理由|ふるえるままに、すすめ5
さて、前回までは、あがり症の対人恐怖症で
超ぎこちない面接だったはずなのに
なぜか採用になってしまった
うにのお話まででした。
いよいよ初出勤です。
では続きをどうぞ~!

初出勤の日。
うには、面接であった男性面接官と、
勤務する研究施設のロビーで
待ち合わせすることに。

ちなみにその人は
某国立大学某学部の准教授さんでした。
お名前は、カニ江准教授です。
カニ江先生「では、資料室へ行きましょうか」
ということで、カニ江准教授の後を
超ど緊張でついていく、うに。
そもそも、こんな研究機関に
入るのなんて初めてです。

事務棟の事務課長に挨拶して
事務室にいるお姉さま方に挨拶して
(当然ですが、目なんか合わせられない、うに)
移動中、すれ違う多くの人が
カニ江教授に会うと
嬉しそうに話しかけてきます。

人当たり抜群なカニ江先生が
だれかと挨拶するたびに
うに、ひたすら縮こまって待ちます。
50代くらいの、
偉そうな雰囲気のおじさん教授が
カニ江先生に話しかけてきました。

カニ江先生「あっ、エビ沼先生、ご無沙汰しています」
エビ沼先生「いやあ、いいですなあ、やはりそちらは資金が潤沢で」
カニ江先生「いやあ、カツカツですよ」
エビ沼先生「やはり南米ですか?」
カニ江先生「や~、それが正式にはまだでして……」
研究者同士の会話ってあまりよくわかりませんが
若干ですが、カニ江先生の歯切れが悪い気がします。
苦手な人のかな…?
カニ江先生が話している
お相手のおじさんをちらりと観察。


(あっ、やば、目が合っちゃた!)
反射的に目をそらす、うに。
(あっ、うにの馬鹿!
目を逸らしちゃった。
今の、感じわるいよね、わるいよね、
ど、ど、ど、どーしよう💦)
と内心パニック。
エビ沼先生「あ、その子が例の資料室の?」
カニ江先生「そうです、うにさんです、
今日から勤めてもらうことになりまして」
うに「よ、よろしくお願いします」
エビ沼先生「へえ~いくつ?」
うに「えっ?」
エビ沼先生「としだよ、と、し」
突然、歳を聞かれて面喰います。
うに「あ、えと、20歳です……」
エビ沼先生「ハタチ!」

え、何が…。
……
……
あっ、そうか!
うに、社交性ゼロなの、伝わってるんだ
頼りないなあって思われたのかも……
うう……心に沁みる……
エビ沼先生「まあ、何かあったら
わたしに何でも聞いてくれたらいいよ!ははは!」
うに「あ、ありがとうございます…
よろしくお願いします……」
カニ江先生「あ、すみません、エビ沼先生、
これからうにさんに
仕事の説明をしなくていけないので……」
エビ沼先生「おうおう、うにさん、またあとでなあ」
エビ沼先生は人がよさそうな笑顔を浮かべて、
手を振って去って行きました。
人がよさそうだけど…だけど……
ちょい癖もありそうなオーラだよ……
ちらりとカニ江先生を見上げると
カニ江先生、
エビ沼先生を見送りつつ
若干心配そうな表情で言いました。

はい?
今、何て?
『きみの〇〇はぼくだけから』
そんな少女漫画でも身もだえるようなセリフを
職場で、おじさん准教授から聞くとは…
(〇〇にほかの単語を入れてみて!
ロマンチックになるから!)
でもこの場合は
ロマンスのかけらもないどころか
なにやら不穏な気配すら漂います……
カニ江先生「この資料室は独立した組織で
この研究機関とは別の組織なんだ。
たまたま、ここに入っているけどね。
それに、この資料室を利用できる人は
事前に承認と予約を受けた人だけだから、
だから、それ以外の人は通してはいけないよ。
何かあったら、ここの人じゃなく、
僕に相談してね」
カニ江先生の説明を聞いているうちに、
うに、だんだんと理解してきました。

カニ江先生「そう!その通り!」
うに「では、お昼はお弁当を持ってきて
資料室の中で食べれば大丈夫でしょうか…」
(👆ひとりで食べたい一心w)
カニ江先生「あ~、施設内のカフェテリアとかは
全然行っていいよ!
敷地内は一般見学の人も自由に散策できるし
来場者用の海が見えるカフェテリアとか
庭園の中の和カフェとか
いろいろ行ってみると楽しいよ。
職員用の食堂も、このスタッフ入館証があれば
使えるよ。
ただ、ここは日本だけじゃなく世界中から
いろいろな研究者の先生がくるけど
どんな先生とも一定の距離感をもって
接してほしいんだ。
かれらは、うにさんの上司ではない。
うにさんは、彼らの部下ではない。
うにさんは独立した立場なんだ。
それはすごく重要なんだ……
どうしてかっていうと……」
カニ江先生、資料室の事務デスクの後ろの棚から
分厚いファイルを取り出してきました。

カニ江先生「日本だけじゃなく、
全世界の会員〇千人の
これまでの会費納入記録なんだ。
いままで全部手書きで管理していたんだけど、
これを、このPCに打ち込んで、
だれがいつ会費を払っていて
だれが滞納しているかを
すぐ検索できるようにしてほしいんだ」
カニ江先生「でね、僕とうにさんの仕事のうちのひとつが、
リストを作って、こういう滞納している人に
督促状を送ることなんだよね」
な、る、ほ、ど……!
カニ江先生「ちなみに、3年滞納すると、
4年目には会員資格がなくなってしまうんだ。
だけど、ときどき、
毎年1年分だけ支払うから、
常に3年滞納状態でぎりぎりで
会員資格を維持している
なぞの人がいたりするんだよね……」
はあ……??
カニ江先生「しかも、そういう人に限って
こちらから、督促状を再三出さないと、
入金してくれないらしいんだよね、ははは」
うに「な、なんでそんなことを……」
カニ江先生「う~ん、それがねえ。
僕も、今年から事務局長になったばかりだから
くわしくはわからないんだ。
まー、人それぞれ
いろいろ事情があるんだろうなあ、
ははは」
え?
ていうか、カニ江先生、
今年から事務局長になったばかり…??
もしかして、うにとカニ江先生、
ぺーぺーの二人組だったの……?
「あーうん、じつはそうなんだ。
僕も1年間の流れとかよくわかってなくて」

ひー!!
カニ江先生「っていうか、僕も、
勤めている大学は全然違うところにあるからさ、
月に一回は定例会でここに来るけど
基本的にこの資料室でつとめるのは
うにさんひとりきり」
うに、ひとりきり。
ようやく、面接で言われた
「ひとりきりの仕事」というのが
どういう事情なのか理解できてきました。
同じ建物内にいるだれとも、
うには職務上のつながりはない。
独立した組織のたったひとりの局員。
周囲の人とは、むしろ必要以上に仲良くせず
組織の中立性、公平性を保つのが、うにの仕事。
だから、『孤独に強い人』か……!
カニ江先生「これだけ会員が世界中にいると
まあまあ、色々な事情を抱えた
人がいるもんでさ
でも僕らは
個々の事情には
立ち入らない方がいいんだよね。
公平性が、大事だからね。
というわけで
これが、マニュアルと規約。
まずはこれを読んで、
一年間の流れを掴んで欲しい。
それからこっちが資料室内の配置。
どんな資料がどこらへんにあるか
書いてある。
資料室を利用する人に聞かれたら
ざっくりとでいいから答えられるように
なってくれると嬉しい」
カニ江先生「まずは年間業務の把握からだね
毎日何をしたかは業務日誌を書いて、
ファイルで共有してもらって、
僕も出張中でも週に1度くらいは
頑張って見るようにするから……」
途方もない量の仕事が
目の前に積まれた、うに。

これ、全部、自分で理解して
スケジュールたてて遂行して
全世界に数千人いる会の運営を
滞りなく回す、という仕事。
上司は、他大学に勤める
フィールドワーク大好き准教授で
ちょいラテンのノリの
『なんとかなるさ!』的なキャラクター。
月に一回、定例会議でくるだけ。
なんとか……?
ならないよ……!!
うにが、なんとかしなきゃだよ……!!
つい、数ヶ月前までは
美大のアトリエで教授につめられて
あがり症で言葉が出なくて
絶望していたのに
今は、全く分野違いの教授たちに囲まれて
働く立ち位置に。
まるで異世界転生したみたいです。
なんのチート能力もなく
ステータス:あがり症/美大中退20歳、
のままですけど……!
うに、明日から
ここでひとり勤務スタートです。
無事やっていけるんでしょうか…。
つづく!!

カニ江先生は研究テーマに夢中な
オプティミスト(楽観主義)
楽観主義の人って、
単にいい加減なわけではなく、
自分の人生の研究テーマを定めて
それに集中しているから
その他のことには
省エネしているのかもですね……!
とすると、いわゆる、
多方面に敏感なHSPさんも
「人生の研究テーマ」を一つ決めて
そこにだけ石橋を叩きまくる
エネルギーを注いで、
残りは「誤差」にできると、
生きやすくなるのかもなあ~


~今までの物語が読みたい!~
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※本作は実体験をもとに再構成した創作エッセイです。
