【あがり症|仕事編14】ひとりじゃできない仕事の壁にぶつかる①|ふるえるままに、すすめ14
これまでのおはなし
極度のあがり症と対人恐怖で大学を中退した、『うに』。ひょんなことから大きな研究所の中にある某事務局のたったひとりの局員として勤めることに。「人と会わなくていい仕事だから、ASD的な性質のある『うに』にはパラダイスなはず」と思ってたら、『これ、思ってたんと違う……』ってなるお話です。 いろいろな人に出会って揉まれて、『うに』なりに成長して、いつか『うに』から人間になれるかな?(まだまだしばらくは『うに』が主役)
さあ、今日もお仕事です。
と、意気揚々にはなれなくて。
うには、痛む胃を抱えて
ため息をついていました。
なぜって。
これを見て。

事務局に印刷所から届いた、ニュースレター 1000通。
同封するフライヤー 1000通×何種類か。
そして、料金別納郵便のマークがついた茶封筒。
段ボールがいくつも積み上がり、資料室の床がほとんど見えません。
【ニュースレターの発送 年3回】
①アルバイトを募集する
②アルバイトの調整をして作業日を決める
③印刷所から届いた印刷物を検品する
④宛名シールに宛名印刷をする
⑤封筒に宛名を張る
⑥会費滞納者を分ける
⑦会費滞納者用の振込用紙を必要数用意しておく
⑧…..
以下延々と、発送完了まで続くタスクの山
うには、早速、ステップ①で躓いているのです。
アルバイトを募集する……???
アルバイトの調整をして、作業日を決める……???
ちょっと待って。なんのことでしょうか。
この仕事につくとき、
仕事内容に書いてあったじゃないですか。
ひとりでする仕事です、って!!!

もちろん、この1000通のニュースレターを
うに、たったひとりで、
全部三つ折りして(!)、封入して、
宛名シール貼って、発送するなんて
無理に決まってます
けど……
けど……
社交不安症(あがり症)の上に
グループ活動恐怖症(←オリジナルでつくりました)の
うににとって、ハードルが高すぎますぅぅぅ(´;ω;`)ウッ…
それに……
「料金別納郵便……?」

これも、何のことかわかりません💦
「たぶん、大量に切手を貼るのは大変だから
まとめて料金を払うっていう意味……?」
とぼんやりと考えるけど、
合ってるかどうかわからない。
でも一体、どこから、どうやってだすの?
具体的なイメージがさっぱり湧きません……。
うに、試しにニュースレターを三つ折りして
ひとつ作ってみました。

これを、1000通?
……いやいやいやいや
これはもう絶対に
お手伝いしてくださる人を
探さないと物理的に無理だわ……。
キリキリと痛む胃。
でも、どうやって~~~?

あ!そうだ、こういうときの『上司に相談』です!

カニ江先生に電話しました。

カニ江先生の、のほほ~んとした声が受話器越しに響いてきました。
なぜだろう、カニ江先生の声を聞くと、
どんな無理そうな仕事も
「なんとかなるのかもしれない」と思えてくる……
おそるべし、カニ江マジック。
「うんうん、それじゃ、中身を検品してね。
発送はね、いつも手伝ってくれる子たちがいるからさ」
「え! そうなんですか!」
なんと、うにが募集しなくていいらしい。よかった~~😂
「で、その方たちはどこに……?」
「う~んと、たぶん珊瑚さんが知ってると思うんだよね~。聞いてみてくれる? あ、当日は僕もそっち行くからね……アラタ先生に会いに行く予定で……お昼、一緒に食べようって話しててさあ……何食べよう……甘いもの……楽しみだなあ……」
👆うに、カニ江先生の雑談パートは、
毎度のことながら、左から右へ流れていきます。
ごめん、カニ江先生、
うに、それどころじゃない。
珊瑚さん探さなくちゃ!
珊瑚さん、珊瑚さん~。

「日程は、来週でみんなの予定を調整して、うにちゃんに伝えるわね。
場所はいつも通り、1階のミーティングルームを押さえておくから安心して」
うに、ぱあああ✨✨
珊瑚さまさま!!です!!
なんて頼もしいんでしょう。
珊瑚さんの声を聞くと、
現実的に「うん、なんとかなりそう!」って希望が湧いてくる
すごすぎる、珊瑚さんマジック。
ひとまず、バイトと作業場所の確保は珊瑚さんにお願して、
うには郵便局へ。
謎の「料金別納郵便の出し方」について聞きにいきました。
わからないことは、聞くしかない……!



局員さん「たくさん?って何通ですか?」
うに「えっと、1000通くらい……」
局員さん「大口発送ですね!」
うに「初めてで、やり方がわからなくて。
別納郵便物差出票?っていうのが必要だって……」
局員さん「あ~はいはい!、これに書いてきてください」
うに「あ、はい」
こういう書き込む書類系は
事前にもらっておかなくてはなりません。
うに、書痙(※)があって、
人に見られていると文字が書けないのです……。

※書痙というのは、人に見られていると手が震えて文字が書けなくなる症状で、社交不安の一種です。うにの場合は、指の力が抜けてしまってペンが持てません。
なので、何か教えていただくときにメモがあまり上手に取れないので、心がけていたのは、【復唱すること】でした。
この場合も、「出て、左にぐるっと回って裏に行くと、窓口がある。そこに、郵便物と差出票を持ってくる」と復唱して、ひとつひとつ確認を取っていました。いわゆる、レストランで注文を取るウェイトレスさん方式です。
たいていの方は「そうそう」とうなずいてくれます。ときどき、お相手とのちょっとした認識の違いがわかることもあって、その場で解決できるのでトラブル減にも役立ちます。
局員さん「そこで計量して発送になるんですが、
1000通以上となりますと、
計量にお時間いただくことになりますので
できれば、事前にお電話で
日時をご連絡いただきたいんです、
混雑時や、17時直前などを避けて……」
局員さんが、大量の別納郵便の出し方について
丁寧に教えてくださいました。
教えてもらった通りに
郵便局の裏側に回ってみました。
すると、たしかに、
郵便局の裏は駐車場と
発送作業場になっていました。

なるほど、ここまで台車でゴロゴロ運ぶのか
……1000通分の郵便を。
やっぱり、ひとりじゃむりだ~~。
よく見ていると、局員さんは、
大量郵便物を青い大きなカゴに入れ替えて
持っていくみたいです。
たしかに、職員さんたちの仕事量を考えると、
17時直前に大量搬入されたら超迷惑そうです、納得。
ということは
封入作業の終わる時刻を
気をつけなければいけないから、
つまり、スタート時間を何時にすればいいんだろう

たぶんこれも、珊瑚さんに今までの様子を聞けば
わかりそうな気がします。
つらつら考えながら、
道を確認しながら歩いて帰ります。
外の歩道を行くより、
研究所敷地内の道の方が、ちょっと遠回りだけど
広めでスムースな鋪装面です。
台車を転がすなら
こちらを通る方がガタ付きがなさそうです。

片道徒歩7分くらいだから
台車ひいて歩いたら倍くらいかかるかな……。
でもきっと、今まで何回もやってきていることなら
すでに決まったルートがあるんだろうな
それはそのときの状況をみればいっか……。
そうだ。雨だったらどうしよう。
1日くらい発送が遅れても大丈夫なのかな?
来週の天気予報確認して、
カニ江先生に連絡だな……

こんな風に、うにはいつも
何か新しい仕事をするとか
新しい場所に行く必要があるときには
できる限り事前に下見して
色々なパターンを想定するようにしていました。
というのも、これまでの数々の失敗の経験上
はじめてのことをぶっつけ本番でやって
うまい具合に切り抜けられるような器用さは
全く持ち合わせていないからなんです。

うにの中の、物事の習得過程ってこんな感じなんです。
1回目:うまくいかない、時間がかかる。
2回目:ちょっとうまくいく。意外といい数値が出ちゃったりする。
3回目:気がゆるんでミスる。凹む。
4回目:立て直す。ハプニング発生。あわあわする。
5回目以降:何度も繰り返して、やっと安定してできるようになってくる。
我ながら、なかなかの要領の悪さです(苦笑)
実は大学受験でも、1つ目の大学は
緊張のあまり課題を誤読して大失敗しました。
👇その時の様子はこちら……
その失敗を糧に、
2つ目以降の大学からはなんとか持ち直して
合格することができたのです。
もっと器用で、なんでもスルスル
うまくこなしていくような人たちが
羨ましくなることもしばしばです😢

さあ、宛名印刷です。
これまでコツコツと構築してきたエクセル名簿から、
会費完納者と未納者を分けて出力します。
うまくできるかな。できるかな。
何回かテスト印刷を繰り返し
ズレとか微調整しながら、本番印刷。

やったあ。
事務局内は基本ひとりなので
遠慮なく、ひとりガッツポーズ★
あとは、作業当日までに
全てのあて名を貼って、
会費の滞納者の封筒に請求書と振込用紙を入れて……
と、タスクは続きます。
人から見たら、
「ひとりなんて大変そうだね」とか
「寂しくない?」って言われがちなんですが、
うにには、この仕事のスタイルはパラダイスでした。
ひとりで、だれからも見られずにいられると、
うにの脳はとてもリラックス。
仕事内容もマニュアルがしっかりしていて
「いつまでに・なにを・どのように成果を出すか」が明確。
それでいて
「なんのために、どうやってこの仕事をするのか」を
自分が納得できるまで調べたり、
自分なりに工程を工夫して組み立てたりできるのです。
だれからもせかされず、
評価の目も気にせず、
淡々とやるべきことだけをやれる幸せ——
👆パ、ラ、ダ、イ、ス!

でも問題は、グループ活動恐怖症です。
当時は、まだ、美大での様々な挫折から
あまり立ち直れていなくて
複数の人と一緒に何かをするということに
全く自信が持てませんでした。
それどころかむしろ怖いくらい。
バイトさんたちにお仕事を説明して
1000通余りの郵便物を作ってもらい、
郵便局まで運んでもらって発送する……
バイトさんといっても
研究所の若手研究員さんたちです。
みなさん、うにより年上です。
ううう、できる気がしない……
もう何日かかっても
うに、ひとりでやらせてくれないだろうか。
なんてアホな考えが浮かんでくるほど
誰かと一緒に何かをするということに
アレルギーがありました。

でも、この時、人に協力してもらいながら物事を動かす経験が、うににとって大きな転機になりました。
これまでのうには、ずっと個人プレーの世界で生きてきました。
大学受験も、大学生活も、「自分ひとりが頑張れば結果が出る」と信じていたし、実際にそうでした。
けれど、仕事はチームプレー。
しかも、うにはいきなり『バイトを雇う側』になってしまいました。
そこから、思考の向きが変わっていきます。
「どうしたら、できないことを周囲に助けてもらえるか」
「どうしたら、意図が正確に伝わるか」
「どうしたら気持ちよく働いてもらえるか」
「もし何か起きたら、どうリカバリーすればいいのか」
――そんな問いを一つずつ考えるようになっていきました。
たかが郵便物の発送なんですけど、
でも、うににとってはプロジェクトでした。
相手の立場に立って段取りを組み、
うまく回すために準備を重ねる。
そんな小さな挑戦の積み重ねが、
うにを少しずつ変えていきました。
もちろん、完全に克服したわけじゃありません。
いまだに、初対面は緊張するし、雑談も苦手です。
けれど――
「この人に嫌われたらどうしよう」
「この人は私のことが嫌いなのかもしれない」
なんて怯えるよりも、
「どうしたら全体がうまく回るか」
「どうしたらみんなで成果が出せるか」
を考えて動いているときのほうが、
心が自由になっていて、
そのときだけは、なぜか
あまり人が怖くない自分に気づいたのです。
(意識を向ける先がちがうからかなあ??? わからないんだけど( ´艸`))
そうして、うにの世界は、少しずつ、少しずつ、広がっていきました。
つづく…

👇続きはこちら!
大切なお知らせ
本作は実体験に着想を得たエッセイですが、プライバシー配慮のため登場人物・団体・時系列・場所等に創作・合成・編集を含みます。特定を意図していません。ただし、うにが感じた気持ちと気づきは本物です。

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※本作は実体験をもとに再構成した創作エッセイです。
