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【連載小説】第36話『真昼に潜む影と真夜中に猛る獣の物語』

遙か彼方の昔から伝わる噺。
大陸より海を渡りし一柱の神は、神にもあらず、魔女と呼ばれたまがいものと与した。
神は永い旅路の果てその土地の女と、
魔女は男と契りを結び、しばし蜜なる時を得た。
されど所詮、人と神、そしてまがいものは
異なるもの。
人ならざるものと人とが結ばれることなど、
ついぞ叶わぬ定めであった。
やがて両者は人と決別し、別れに際して授けし『たからもの』をそのまま地に遺したと云う。
しかしながら、それは人と人、国と国との均衡を揺るがしかねぬものだった。
男と女は帝に御慈悲を蒙り、安住の地を賜った。
そのたからものを護り続けることを、
ただ一つの約定として。


火花散る③ 最果ての地


その神の式鬼神しきがみを 人々は怪異と呼んだ
知らぬゆえの誤解だった
現実が霞がかると幻想は牙を剥く




「はっ!」
 と、何かに思い至ったビ・アクー。
 ふところに仕舞い込んでいた短筒たんづつを取り出して、子ども、玉吉を狙って発砲した。

 パパンッ!
 続けざまに二発。

 しかし、先ほどと同じように、黒い影がフワッと舞い玉吉を庇う。
 影の姿をしたイオリは、
「キェアアアァ――!」
 と、怪鳥の哭き声のように鳴き、白い面を震わせてビ・アクーを威嚇した。

「――思い出したぞ!
 あれは『太陽神ヒュペリオン』さまの式鬼神しきがみ……『魂の影』!
 ヒュペリオンさまのご寵愛を受けた女がここにいるのか!?
 魔女にたばかられ故郷くにわれたと聞いていたが、まさか、このような僻地に?」
 ビ・アクーは驚愕していた。

「クルルルゥ――」
 イオリこと、魂の影がチョウマに囁く。
「へぇ? 太陽の巨人の真名まなを知っているのか?」

 魂の影は秘術『以心伝心』の力でビ・アクーの言葉を訳してチョウマに伝えた。

 チョウマはビ・アクーに構わず玉吉に尋ねた。
「どうだ、玉吉。
 あのデカいオッサンに憶えがあるか?」

 玉吉はしばし呆けていたが、気を取り直すように頭を振って両頬を手でペチペチと叩いた。

「……ン〜〜。ごめん。あのとき、まっ暗で雨もふってたから、よくわかんない」
「そうか。気にするな。構わんよ」
「でも、声はわかった!
 だって、あのときと同じ、どなってばかりだったもん!」
 チョウマはそれを聞いて声をあげて笑った。
「ハハハ! そうか、そうか!」

 そして鋭い眼光で睨みつけているビ・アクーに、あっかんべーをして云った。
「それだけで十分!」

 玉吉の頭に手を置くと、
「玉吉はここで待ってろ。
 イオリ。こいつを頼む」
 すると魂の影は再び現れて、玉吉のまわりを包んだ。

チョウマが振るうのは奇械刀きかいとう光明璽来迎こうみょうじらいごう


「さて、こっちの番だな。
 来ぬなら俺から行くぞ!!」
 と、台地を蹴って駆け下りたチョウマ。
 猛然と屍人兵に襲いかかる。

「へへへ。
 さぁて、かかってくるのはどいつだ!?」

 光明璽来迎の滑車の回転する甲高い金属音が鳴り止まない。そして零れる黄金の輝き。
 そこには屍人兵を容赦しない強い意志がみなぎっていた。


つづく





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