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【連載小説】第35話『真昼に潜む影と真夜中に猛る獣の物語』

〜前回からの続き〜
遂に相対したビ・アクーとその男、チョウマ。
どちらも怯まず挑む姿勢は刀光剣影の気配を纏い、さらに戦いが加速する。
果たして二人の勝敗は何処に向かうのか。

※残酷な描写を含みます。
心身の状態に留意してお読み下さい。


火花散る② 光明璽来迎 


ビ・アクーの兵は男に斬りかかる
だが一方的にやられはしないチョウマ
幻想と現実が交わる祈りと魂の叙事詩




「イオリ!」
 男。チョウマが大きな声で呼ぶ。

「キュルルルルゥ――!」
 昼間ゆえ怪異となったイオリはチョウマの陰に潜み、とぐろを巻くように現れた。
 蛇神のような長いその尾に怖ろしげな白い面。
 それは二人を護る為の兇悪なる鬼相であった。
 イオリの影こそが銃弾を遮った理由だった。

「はて? 潜む影!? あれは何処かで?」
 影を見たビ・アクーは首を捻る。
 
 駆け寄る兵たち。
 その前でチョウマが手を伸ばした。
 影は白い面を前に突き出して口を大きく開く。
 喉の奥から長いものが出てきて、それをチョウマが掴んで引き抜くと、
 キイイイィィ――ン!
 甲高い金属音が台地に響き渡る。

抜刀するチョウマ

「な、何だ?」
 驚くビ・アクーを尻目にチョウマはそれを抜刀した。

 兵の一人がチョウマに銃剣を振り下ろす。
 チョウマはそれを太刀で弾く。
 チョウマが影から引き抜いたのは太刀だった。
 それもただの太刀ではない。
 金属音はまだ鳴り響く。
 その太刀が音を発していた。
 玉吉を庇いながらも、それで斬りかかってきた兵を一合に斬った。

「グアッ!」
 初めて声をあげた黒い兵。
 その呻き声が最期となる。
 その場で固まり動かなくなった。
 やがて兵の身体が褐色に変色してひび割れる。
 そして身体のひびから眩いほどの聖光が漏れ出て、土塊になって崩れ落ちた。
 あとに積み上がった土塊は、灰になって春風に吹かれて散っていく。
 他の兵たちの動きが止まった。
 戸惑っているのか。
 底なしの体力を誇っていた彼らも一瞬怯んだ。
 感じたのはおそれか。

 ビ・アクーの驚く赫い目が、チョウマを捉えて離さない。
 たかが下人と馬鹿にしていた今までとは見る目が明らかに違う。

「何だと!?」
 キイイイィィ――ンと、金属の滑車が歓喜の歌を詠むかのように鳴き、排気口から蒸気となった“気合い”が漏れる。

 ビ・アクーが気がついた。
「なぜだ!? 
 貴様如き下賤な輩がどうして『イーシュワラ王朝』の武具を持っているのか!?」

 チョウマはビ・アクーの言葉は判らない。
 だが彼らが驚いているのは十分に伝わった。
「へへへ……『たからもの』だよ。たからもの!」

 チョウマは太刀を青眼に構えた。

 チョウマの構えた太刀。
 その棟区みねまちから棟に、複数の金属の滑車が縦に並んで、それが高速で回転している。
 甲高い金属音はその滑車の回転音だった。

光明璽来迎こうみょうじらいごうに驚いているのか。
 この太刀が何であるのか、知っているのだな」
 独り言を呟く。

『光明璽来迎』は、ただの太刀ではない。

 特徴の一つは棟の滑車。
 それと柄にある引き金。
 チョウマが引き金を絞ると滑車の回転が始まる。そして引き金を絞るたびに回転が速まる。
 それは大陸にある大国『イーシュワラ王朝』を起源とする、そこで造られた正真正銘の武具である。本来はここ、三奏にはないはずのもの。

 驚くビ・アクーが問いかける。
「貴様如き下人が屍人兵の天敵となるなどとあり得ようか!?
 どうやって手に入れた!?」

 聖クィシン皇国の兵たち――彼らは『屍人兵しびとへい』と呼ばれている。
 元はただの死体にすぎない。
 それを聖クィシン皇国の皇帝が強力な魔導の力で黄泉から死んだ魂を呼び起こし、手先として使役するのだ。
 息はしない。
 食べ物も飲水もいらない。
 それでいて体力は生者以上にある。
 不死身のつわものと云われる。
 その稀有な魔導は、聖クィシン皇国のような貧しい軍事大国では国の根幹をなす貴重な魔導でもあった。
 一説には、クィシンの皇帝はだからこそ皇上という天命を賜わったのだとも云われていた。
 これこそがクィシンの死霊魔導。

 そんな屍人兵に対抗できる武具。
 聖クィシン皇国にとっては厄介な武具。
 その太刀にかかると不死身の屍人兵が呆気なく葬り去られる。
 屍人を操る魔導が無効化されてしまう。


 それは語り継がれる昔噺むかしばなし


 それが“奇械刀”、光明璽来迎。

『奇蹟を成す機械仕掛けの刀』

 と称される武具であるそうな


つづく





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