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【連載小説】第七夜『王さまお伽草子』(The Sultan’s Otogizōshi)

第七夜 
世界情勢


「では陛下スルタン
 此度こたびのお出かけはシイラ連合からのお誘いで?」
 位の一番高い貴族、イブラヒムが問いかけた。

「そうだ。王のいない国が何の用事かと思えば、何のことはない約束ごとだ」
「――約束? はて?」
西欧ヨーロッパを相手にするなら、ご一緒に取引をいたしませんか、とな」
「いやはや、実に勝手な云い分ですな。
 元々西欧の市場を独占したがっていたのは、商人組合ギルドのシイラ連合の方ではございませんでしたか?」
「そうだ!」「そうだ!」
 賛同する他の一同。
「あてが外れたのだよ」
「――あて? はて、それは?」

 ここでスルタンは無言になった。皆が首を傾げる。
「……陛下?」
 陛下と声を掛けられたスルタン自身が首を傾げていた。

「ぇと、待ってくれ。何だっけ?」

 すかさず傍に立つニザムに問いかけた。
(……まただ)

 問われた近侍は訝しむが、その不安を口にはしなかった。そして無愛想な仏頂面で呟いた。
「……『艦隊アルマダ』――」

「おう! そうだ。スペインのフェリペ二世の艦隊だ」
 スルタン自身は気にもとめてない。

 一拍置いて、その場にいた皆が口にする。

「おぉっ! 『艦隊アルマダ』!」
「二十年近く前にレパントの海戦でオスマン帝国の艦隊を撃破したという、あの?」
「その艦隊アルマダがどうかしましたか?」
 とハッサン将軍が尋ねた。
「敗北したらしい。先だってのイングランドの遠征で」
「まさか!?」
「密偵が知らせてくれた。
 嵐にも祟られ、イングランドに散々打ち負かされたそうだ」
「イングランドの陣営は私掠船でしょうか?」
「知らん。だが、たぶん加担はしていような」
「そのスペインが、どうシイラ連合と関係しているので?」
「スペインに西側諸国での海上で護衛を依頼していたらしい」
「あてが外れたというのはそういうことですか」
 イブラヒムもハッサンも納得したようだ。

「西に行けばイングランド。
 東に行けば倭寇。
 海賊たちはやりたい放題だからな」
「仰る通り」
「それで危機感を持ったのだろう。吾らと協定を結び協力し合わなければとな」
「それを約束という『契約』にしようという魂胆ですか」
「うむ」
「なるほど」

「まぁ、吾らにしたら『渡りに舟』だ。
 海賊たちにはほとほと手を焼いていたし」
「左様ですな」
「協定を結べば商売がやりやすくなる」
「陛下がよろしければ私どもには異論はございません」
 イブラヒムとハッサンその他一同、全員納得したようだ。

「あゝ、皆に感謝する」
「御意」


つづく


<次回、第八夜 近侍ニザム>



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