見出し画像

【連載小説】第49話『真昼に潜む影と真夜中に猛る獣の物語』

〜前回のおはなしからつづく〜
拉致された緒川村の村人たちは魔導汽船から二手に分かれ小舟に乗り込んで帰ることとなった。
黄金の災厄が乱暴に小舟を曳いて海上を駆け抜け、無事に三奏の浜辺に着いた。
与力と町方に保護されていた玉吉は、父母を見つけて再会を果たす。泣いて喜ぶ玉吉親子。
イオリは与力と事情を話し、勅命を果たしたとして家のある郷へ帰る。
皆にさよならと告げて,イオリとチョウマこと黄金の災厄はお別れをする。


再会


父母との再会を待ち侘びていた玉吉が
ようやく手にした温もりに泣く
祈りは届き幻想と現実から魂は救われる




 限りなく黒に近い夜がまだ明けるほど前。
 黄金の災厄と曳かれていた手漕ぎ船が、あらた下越の西岸の浜辺に到着した。

 村人たちは岸に降り立つと肩を叩き合い喜び合っている。そこへ、
「おばさん!」
 イオリを大声で呼ぶ声。

 玉吉である。

 提灯を持った与力と町方の役人に付き添われていた。
 駆け出す玉吉。

 その姿を見た村人の中から、
「玉吉!!」 
 と、玉吉に駆け寄る男女。

 直次とおスミである。

「とうちゃん! かあちゃん!」
 玉吉も気づいて、父母に向かって駆け寄り抱きついた。

「とうちゃん、かあちゃん……うえぇん!」
「玉吉、よかった! 無事だったか……!」
 玉吉も、父母も泣き出してしまった。

 そんな親子の様子を、黄金の災厄は穏やかに見つめ続けていた。

 与力が黄金の災厄に怖気づきながらもイオリに話しかけてきた。

「イオリさまでいらっしゃいますか?」
「はい」
「拙者、与力の松山吉右衛門と申します」
「申し遅れました。イオリです。
 仔細はチョウマからあった信書の通り。こちらは、かどわかされた緒川村の方々。
 狼藉者は私とこの獣が退治いたしました。もう大丈夫だと思います」
「ご苦労さまでした」

 お互いの無事を称え合う村人たち。その場は純粋な喜びに満ち溢れていた。

 その様子をみていたイオリには、早春の冷たい風もひとしきり温かく感じられた。

「皇宮へは私の方から注進しておきます」
「承知致しました」

「では私はこれにて。帰ろう、チョウマ」
 イオリは黄金の災厄に飛び乗って、その場を去りゆく。

 それに気づいた玉吉が振り返り大声で、
「おばさん! ありがとう! 
 おじさんもありがとう! さよなら!」 
 と、手を振った。

 イオリは振り返り微笑みを返して、同じように手を振って別れを告げた。

「さようなら、玉吉。お元気でね」

 玉吉、直次、おスミ、与四郎、村人たち皆、そして与力。

 それぞれが、そうして別れを告げた。


つづく


▶次回、第50話【最終話】『今を生きる』
 いよいよ最終話、お楽しみに。



いいなと思ったら応援しよう!