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工学部で留学って意味ある?

※留学記事①

私は国立大学の工学部で電気電子工学を学んでいる。ついこの間までフィンランドで約10か月の交換留学をしていた。

留学に行く前、ネットで交換留学についての記事をたくさん読んだのだが、如何せん文系学部の留学記事が多い。どうやら理系ないし工学部が留学に行くのは比較的珍しいらしい。

という事で今回は工学部が留学することについて考えていこう。


なぜ工学部は留学する人が少ない?

まず、そもそもなぜ工学部の人たちは留学する人が少ないのだろうか。その理由はたくさんあるだろうが、主な理由は以下の二つが挙げられる。

そもそも英語が好きじゃない、国際的なことに興味がない

この理由はシンプルであるが、最もよくある理由であろう。

大学に進学した者の多くは高校生の頃、文理選択を経験したことだろう。「弁護士になりたい!」とか「新たな素材を開発したい!」というように将来の夢に向かって文理を選択した人も中にはいるだろうが、実際のところ、なんとなくの感覚と科目の好き嫌いで文理選択することは多い。かくいう私も、なんとなく理系科目のほうが文系科目よりもやっていて楽しかったという、なんとも単純な考えで文理を選択した。

英語は文理どちらを選択しても必須科目であるが、文系のほうが英語の重要度が高く、英語が好きな人は文系を選ぶ可能性が高く、嫌いな人は理系を選ぶ可能性は高い。

それ故に、工学部の学生は英語が嫌い、苦手という人が多い。良くも悪くも英語が苦手でも理系科目が得意であれば工学部の試験を通ることは十分に可能だ。そのため、英語が苦手な工学部の学生は多い。

それに付随して、国際的なことに興味がない学生は多い。実際、私は留学生交流サークルのイベントにたまに行くのだが、多くの学生は国際系の学部、外国語学部、人文、社会科学系の学部の人が多い。工学部は人数が多いので見かけることはあるのだが、お世辞にも多いとは言えない。

カリキュラム的に留学するのは難しい

工学部の中にも英語が得意な学生、国際的な活動に興味がある学生は一定数いる。近年は留学する学生の数が増加傾向にあり、留学というのは物珍しいものではなくなってきている。しかしそんな人たちの大きな壁となるのがカリキュラムである。

留学には様々な方法があるが、例えば交換留学では短くても半年、長くて一年のものが多い。そこで留学を検討してみるのだが、やれ実験だの必修だのでとても留学に行くタイミングはない。留年してしまうならば留学はあきらめようという学生も多い。

交換留学というのは単位互換制度という一見素晴らしそうな制度があり、「交換留学なら留年せずに長期留学できる!」などと紹介されることは多いが、そんなに現実は甘くない。単位互換ができるケースは留学先の大学の授業の内容が、自分の大学の授業相当だと認められるケースである。これがまた難しいのだ。大学によって教える内容は微妙に異なることは往々にしてあるし、まして実験の授業の場合、留学先の大学で自分の大学の実験の授業と同じような授業を取るなどあまりにも難しい要求である。

つまり、「交換留学、長期留学をするなら留年」という残酷な現実を受け止める必要があるという事だ。大学生の中には浪人して大学に入るものもいる。現役で大学に入学した人はまだしも、浪人して入った人ならば一年の留年はあまりにも重い。さらに交換留学の場合、留学中は日本の大学のほうに学費を納める必要があり(これのおかげで学費が高い海外の大学にも交換留学できるのだが)、一年留学するという事は、一年分の学費が余計にかかるという事でもある。ただでさえ留学だけにお金がかかるのに、さらに一年分の学費となると、考えるのをやめたくなるだろう。

さらに交換留学をする場合、英語試験(主にTOEFLかIELTS)で一定のスコアを取得しなければならず、そのために勉強をしなければいけない。学校の授業に並行して、英語試験の勉強もするとなるとハードである。英語試験は四技能(リーディング、リスニング、ライティング、スピーキング)あるため、日本で受験のために英語を勉強してきた人たちには決して簡単な試験ではない。

このように、工学部のカリキュラムで留学をするのは簡単ではない。

ちなみに私の場合、大学に入学した当初からなんとなく留学してみたいと思っていたため、英語を勉強する時間はたくさんあった。一方、カリキュラムに逆らうことはできないため、あきらめて一年留年することを決めた。

工学部で留学する価値って十二分にある?

私が留学に行っていることからも察せられると思うが、工学部で留学する価値はあると思っている。お金の面や留年を考慮してもである。

英語力の向上、就活に役に立つ、などなど

英語力は多かれ少なかれ向上するだろう。悲しいかな、留学を一年言った程度で英語が完璧になることはないと思っておいたほうがいい。だが英語でコミュニケーションを取るのにある程度困らないレベルまでなら十分に到達できる。

自分の専門分野に加え、英語力という新しい強みを得られるのは大きい。私が高校生の頃、化学の先生が「将来国際的に活躍したいと思ってるなら、国際系の学部や外国語学部に入るんじゃなくて、工学部とか農学部に入って、専門分野とに加えて英語を学ぶほうがいい。英語ができるだけの人はこの世にごまんといる。」と言っていたことを今でも忘れられない。たった一つのスキルだけを磨いて活躍するのは極めて難しいことだ。何個も強みを持ち、それらを組み合わせることで複合できな力を発揮するほうが何倍も実現可能なのである。

また、就活にも役に立つ可能性がある。私はまだ就活をしたことがないため確実なことは言えないが、留学で得たスキル、知見、経験を就活に生かすことは少なからずできるはずである。

その他にも知らない場所、知らない環境、知らない人たちに囲まれて生きていきながら、積極性や自主性を育むことも可能であろう。周りに友達や家族がいなければ自分で何とかするしかない。人間、追い込まれたら何とかしようと思えるものだ。

留学で得られるのはスキルだけではない

私は英語力の向上や就活で役に立つといった実務的なメリットよりも、もっと大きなメリットが留学にはあると思う。

それは現地で気づくこと、感じることである。これは大雑把な言い方であるが、例えば私のようにヨーロッパ諸国に留学に行けばアジア人はマイノリティであり、マイノリティの人たちがどのような感覚でその国に住んでいるのかが実体験できる。フィンランド留学において黒人と東アジア人は数が少なかった。そのことが関係して差別を受けたり仲間に入れてもらえなかったりしたことはなく、この世には優しい人が多いものだと実感した一方で、留学した当初はなんとなく感じる違和感的なものがなかなか拭えなかった。

外国人観光客が少ない観光地を観光しに行ったとき、周りからの視線を感じ、少しその場にいづらいなと感じた。きっと東アジア人が珍しかったのであろう。敵意の視線には感じなかったが、日本の特に田舎に住む外国人たちもこんなことを経験しているんだなと感じられたのは興味深い経験であった。

他にも気づいたことがある。それは同じ国の人たちは、その人たち同士で集まってしまうという事である。そんなのあたりまえだろと思うかもしれないが、私は日本にいたときこんなことを言っている人を見た。「(日本に住んでいる外国人について)せっかく日本に住んでるんだから同じ国の仲間とばっかり集まってないで、日本人とか他の国から来た外国人たちとつるめばいいのに。」と。これを聞いたとき私は、そううまくいかないのだろうと思う反面、確かに彼らはずっと同じ国の仲間ばかりと一緒にいて、もっと他の人とも仲良くなれればいいのにと思っていた。

私が行っていたフィンランドの大学はたくさんの留学生を受け入れており、国際色はかなり豊かだった。そんな環境でも結局同じ国の仲間と集まってしまうのである。みんな英語を話せるのに。そして自分もやはり日本人と一緒にいるのが楽だと感じるのである。私が通っていたキャンパスには日本人がほとんどいなかったため基本的に日本人以外と一緒にいたが、やはり自国民と一緒にいるのは楽しい。なんせコミュニケーションは楽だし、バックグラウンドが似ているために話も合う。

「どの国の人たちも一緒になって生活を送れればいいな」なんて言う考えがいかに難しい話かを理解した。少し悲しいが。

少し長くなってしまったが、このように実際に現地で住んで生活することで、気づかなかったこと、知らなかったことを経験できる。そしてそのような経験はたとえ直接的に将来に役立たなくとも、間接的には役に立つかもしれないし、何より人生が豊かになる一因になるだろう。私がよく見るYouTuberが「旅行の良さがわかんないんですよねぇ。本とかネットで情報も手に入るしきれいな景色も見られるじゃないですか。」と言っていたが、実際に行って感じることもある。もちろんその経験が優れているいて正しいとは思わないが、やはり自分で経験したことことで何かを得るのは楽しい。

なぜ私は留学したのか

最後に、私自身のことを書いておく。

私は大学2年生の夏から約10か月フィンランドに交換留学をした。留学を意識し始めたのは大学に入って間もないころで、なんとなく留学に行くチャンスがあればいいなと考えていた。高校2年生くらいまでは英語や国際的なことに特段興味はなく、むしろ英語を楽しいと思ったことはなかった。大学生になるまで海外に行ったことがなく、英会話などもしていなかったため、英語は受験のための一つの科目だとしか考えていなかった。

大学入学後、やりたいことがなかったため将来役に立ちそうなことをしようと思い、英語を勉強し始め、留学生と交流ができるサークルのイベントにもいくようになった。そのサークルでは英語が上手に話せず悔しい思いをしながらも、たくさんの留学生と出会い、自分も留学をしようと考えるようになった。

私が留学をしようと決めた理由は二つ。一つは英語をしゃべれるようになりたいこと。もう一つは単純に海外に住んでみたかったことである。

前者について、留学を通して達成できたかと言われると、100パーセントの自信はない。留学をすれば英語をペラペラしゃべれるようになるというのは幻想で、実際には何とかしゃべれるというレベルに落ち着いてしまった。しかし、他の留学生と会話する中で、非ネイティブ英語話者の私たちはコミュニケーションができることが何よりも大切だというマインドを学ぶことができた。

後者については良い経験をさせてもらったと言えるだろう。留学は楽しいことばかりではなくつらいことも多かった。何百回日本に帰って友達や家族と会いたいと思っただろうか。自分の英語力の低さ、積極性の低さに辟易する毎日であった。それでも気づいたことは多い。私の人生の中で一つの大きな節目であることは言うまでもない。社会人になればお金は増えるが時間は減り、新しいことに挑戦するハードルが高くなる。家族ができれば責任も増える。大学生である今、留学に行くという選択をしたことは賢明な選択だったと思う。

最後に

今留学に行こうか迷っている人には行ってみるべきだと後押しをしたい。

経済的に不安な人は、日本から比較的近い場所や物価の安い国を検討してみてはいかがだろうか。奨学金も探せばたくさんある。

大した理由がないことに憂いている学生も心配することはない。留学について調べると「目的意識が大切」とか「目的がないと意味がない」などやたらと煽ってくるが、そんなことをいちいち考えていては挑戦できない。もちろん目的があるならそれは素晴らしいことだが、無ければ無いなりに新しく頑張りたいことが見つかるかもしれない。私も「英語を頑張りたい」とか「海外に住んでみたい」とか言う誰でもいえる陳腐な理由をもって留学に行った。

もちろん留学をしたからと言って私の人生は劇的には変わっていない。しかし、私の人生は良い方向へ10度ほど傾いたのではないかと思っている。

Xのアカウント: @Uri_xxx_111


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