選挙制度試案③-参議院議員選挙制度試案-
衆議院議員選挙、参議院議員選挙、公職選挙法に関する選挙制度試案に関する考察です。今回は参議院議員選挙に関する考察になりますが、選挙制度の試案にあたっての私のスタンスがありますので、そちらにまず御目通しください。
参議院のあり方
参議院においては衆議院と異なり、中長期的な視野で政策を問うことが求められる「良識の府」としての役割が求められていることについては前回の記事で述べてきた通りである。ただ、現状においては、憲法制定時に想定された衆議院との違い、距離を置くという位置づけにはなっていない現状にある。「衆議院のカーボンコピー」と揶揄されたり、参議院不要論が出る一方で、法案については参議院が否決した場合衆議院で3分の2以上の再可決が必要という憲法上の規定を以て参議院の権限が強すぎると主張する意見も出てくる。
1988年に「参議院制度改革研究会」(林修三座長)が参議院議長に提出した「参議院のあり方及び改革に関する意見」においては、参議院は、① 長期的・総合的な視点に立つこと、② 衆議院のみでは十分に代表されない国民各層の利益や意見を代表し、反映すること、③ 議員各自の意見をできる限り尊重し、反映することが参議院に期待される独自の立場であるとする。その上で、参議院において以上の役割を果たすには、参議院における選挙制度のあり方、参議院の運営のあり方をどう構築するのかが求められるとし、選挙制度については以下の提言を行っている(※1)。
1.現行の比例代表制度を廃止するか、比例代表の定数を大幅に減らすこと
2.比例代表制度に非拘束名簿方式を採用すること
3.現行の比例代表・都道府県単位の選挙制度を改め、広域のブロック単位による選挙制度を検討すること
4.民主的・公正な組織による、権威ある何らかの推薦母体を設け、その推薦による候補者に ついて一般選挙人が投票するという候補者推薦制度を検討すること
このうち、2.の比例代表制度への非拘束名簿方式については導入をされているところであるが、ここでは議論として取り上げない。4.の政党の公認を受けない職能団体による候補者を前提とした選挙については、当該推薦団体の民主性、公正性の担保をどのようにsるか、またどのような形で構成、運営するかという課題点、戦争中の「翼賛政治体制協議会」との兼ね合いを考慮すると、4.については採用するべきではないと私は考える。
以上を踏まえ、参議院の選挙制度においては、① 現行制度を前提とした選挙区割り案と、② ブロック割による選挙制度案の2案についてここに提示をすることとした。
参議院選挙制度試案
1.現行制度改定案
現行制度を改定することで一票の格差を解消するに際しては、以下の方法を採用することとした。
1.現行定数の248人をすべて都道府県単位で人口比に合わせて配分をする
2.都道府県に配分された都道府県選挙区において定数1となった鳥取、島根、高知、徳島の4県については、6年に一度の選挙とし、3年ごとの改選において都道府県選挙区での選挙がない年を置くこととする
3.都道府県に配分された都道府県選挙区において定数が上記のケースを除いて奇数となった都道府県選挙区においては、3年ごとの改選において定数が異なる形とする。例えば定数が3となった三重県選挙区においては、定数1の年と、定数2の年があることとなる。
4.比例区については、現行の100から50の半分に減らす。
5.以上定数を298人とする。
以上を踏まえた参議院選挙区は以下の通りとなる。
北海道・東北

関東

甲信越・北陸・東海

近畿

中国・四国

九州・沖縄

比例区

いびつな形の定数となったが、選挙区ごとの一票の格差を抑えかつ都道府県からそれぞれ代表を選出するという形とする際には、定数が奇数の選挙区を認める形とせざるを得ないこと、また、憲法上3年ごとに半年改選をすることとなっていることから、水色とオレンジでそれぞれ交互に分ける形となった。定数のいびつさを解消しつつ現行の都道府県ごとの選挙制度を維持する場合には、定数を増やすことが前提とならざるを得ないだろう。
2.ブロック別変更案
現行制度を前提とした場合、一票の格差の解消との両立で歪みが出ることなどの問題点への対応として、ブロック別による選出方法による案をここに提示する。選挙区は以下の通りとする。
1.ブロック別に選出する場合、以下のブロックごとに分ける
北海道:北海道
東北:青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島
関東:茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川
東京:東京
甲信越:新潟:山梨:長野
北陸:富山、石川、福井
東海:岐阜、静岡、愛知、三重
近畿:滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山
中国:鳥取、島根、岡山、広島、山口
四国:徳島、香川、愛媛、高知
九州・沖縄:福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄
2.選出方法は一票とし、候補者の名前を書く単記非移乗式とする。
以上を踏まえた各ブロックで3年ごとにに選出する定数は以下の通りである。

一票の格差という点や現行制度を維持した場合のいびつさは解消されているものの、四国ブロックにおいて4県のすべてから代表を送れないといった欠点が残る。地域性を維持する場合においては、定数の増加が求められるものと考える。なお、職能代表を想定した現行比例代表制度を残す場合には、定数は現行制度改革案同様50とし、半数ごとの改選とする。
その他
参議院においても投票用紙は自書式を改め、候補者の名前を記載したリスト方式とし、候補者の名前に〇を書く形とする。また、参議院においては衆議院と異なり、多様な人材を選出するとの観点から、すべての政党、政治団体、無所属候補について、立候補を予定する選挙区の有権者の2%以上の署名を選挙管理委員会に届け出た場合に限り届け出を認めることとする。これは比例区においても同様とする。併せて衆議院と同様に供託金制度を廃止することとする。
課題
参議院を衆議院と異なる院として独自性を発揮するにあたっては、衆議院と異なる運営を行う必要がある。具体的には参議院からは大臣、副大臣、政務官の役職など政府の役職につかず、立法府として行政とは距離を置くこと、6年の任期が保障されていることを踏まえ、中長期的視野からの参議院独自の調査会の活用(※2)など、衆議院からの自立性及び行政サイドからの自立性を強化する役割が必要であろう。
- - - - - - - - - - - - - - -
いかがだったでしょうか。次回は、公職選挙法に関する考察になります。

私、宴は終わったがは、皆様の叱咤激励なくしてコラム・エッセーはないと考えています。どうかよろしくご支援のほどお願い申し上げます。
脚注
(※1) 「参議院のあり方及び改革に関する意見」 参議院制度改革研究会
(※2) 参議院の調査会
いいなと思ったら応援しよう!
サポートいただいたお金については、noteの記事の質を高めるための文献費などに使わせていただきたくよろしくお願い申し上げます。