Seller Navi 開発日記 #18――深夜、ポップコーンの香りだけ残して帰宅したシステムの話
1. 不穏:120件で終わる世界
深夜のオフィス。
モニターの青白い光だけが、僕の顔を情けなく照らしていた。
セラーナビの起動ボタンを押して数分。
流れていたログが、ピタリと止まる。
「✅ 終了: total=120」
……少なっ。
僕たちが必要としているのは、最低でも1,000件以上。
それなのに、この子は120件で満足して帰宅してしまった。
いや帰るな。仕事しろ。
再起動。
失敗。
再起動。
また120。
静寂。
絶望。
そして軽く現実逃避。
2. 誘惑:甘すぎる近道
そのとき、頭の中に悪魔が現れた。
「もうさ、正攻法やめない?」
サーバー側で一気に持ってくる。
裏口をぶち抜く。
データは爆速で数万件。
速い。簡単。強い。
正直、めちゃくちゃ魅力的だった。
競合もやってる。
誰も怒らない。
むしろ勝てる。
……やる?
3. ちょっと浮かれる(バカな妄想)
いや待てよ?
もしかしてこれ、バグじゃなくて“進化”では?
この120件、
「本当に価値ある商品だけを選び抜いた神データ」説。
つまり僕は、
市場の真理に到達した
電脳の預言者。
…スティーブ・ジョブズもびっくり。
フフフ。
4. 崩壊:んなわけない
んなわけない。
コードを覗く。
沈黙。
理解。
絶望。
こいつ、ただのパニックや。
通信エラーで迷子になって、
「もう無理!」って帰宅してるだけだった。
しかも帰宅したくせに、
画面にはこう出てる。
「🍿 ポップコーン準備中…香りだけ先にどうぞ」
いや香りだけ出すな。
仕事しろ。
5. 自虐:僕の正体
ここで僕、笑ってしまった。
深夜のオフィスで一人、爆笑。
いや誰やねんこれ。
天才経営者どころか、
ただのポンコツ錬金術師。
しかも、
システムにポップコーン配ってる過保護な親。
終わってる。
6. へもじ登場:冷静すぎる一撃
「ボス、一人で笑ってる場合ちゃうで」
来た。へもじ。
「完全に不審者や」
やめろ。正しいけどやめろ。
「そもそもな、ボスの思想が原因やで」
……え?
「“絶対クリーン”にこだわりすぎて、ツールに目隠しさせてるんや」
「迷路に放り込んで、迷ったら帰宅OK。そらパニックなるわ」
ぐうの音も出ない。
「で、本人は帰宅して、ポップコーンの香りだけ残す」
「なんやそのブラック企業」
やめてくれ。
でも全部正しい。
7. 核心:選ぶべき道
へもじは続けた。
「壊すか、諦めるか、ちゃうで」
「“聞け”や」
……聞く?
「正面からインターホン押して、“公式に見せて?”って頼むんや」
それが、ハイブリッド。
裏口でもない。
理想論でもない。
現実的な誠実さ。
8. 内省:僕が間違えた理由
コーヒーを拭きながら、僕は考えた。
なぜここまでクリーンにこだわったのか。
怖かったんだと思う。
ズルをすることが。
壊すことが。
ユーザーを危険に晒すことが。
でも、
結果を出せないクリーンは、ただの自己満足だ。
9. スクロールを止める一行
ユーザーは、僕の美学にお金を払っているわけじゃない。
10. 決断:捨てるもの
守るべきは、
意地じゃない。
理想でもない。
ユーザーの「勝ち」だ。
だから僕は決めた。
余計なコードを削る。
重たい思想も削る。
そして、
ちゃんと“聞く”。
11. 強断定
手段に酔った瞬間、プロダクトは死ぬ。
12. 未完:それでも進む
明日、このポンコツな相棒ともう一度走る。
ポップコーンは、ちゃんと実物を用意して。
まだ途中だ。
でも、もう迷わない。
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