路地裏で ゆずぴた選書感想
今日の打ち合わせも予定より早く終わった。
気づけば師走。すっかり冬の空気に包まれている。
落ち葉もまた、なんだか良い。
寒いのは苦手だ。この寒い冬も、秋の様に一瞬で通り過ぎて早く春が来ないかななんて、そんなことを考えながらまたこの街にやってきた。
この街を訪れたのは3回目。
今日もあのオシャレなカフェで少し遅いお昼ご飯にしよう。足は人通りの少ない方へ向く。
メインの通りから二本も裏通りに入ると、すっかり喧騒は遠のき、穏やかな午後が広がっている。
歯医者や小学校、昔ながらの文房具屋さんや畳屋さんが住宅と共に点在している。いい雰囲気だ。
いい雰囲気なのだけれど、一際異彩を放っているビルがある。いや、いたって普通のビルで変わったところはない。ただ、おそらく低層住宅地であろうと思われる場所に一棟だけ聳立っている。やっぱり違和感しかない。
ビルのある方向へと角を曲がって路地裏に進む。
いつもは通り過ぎてしまう和菓子屋さんで、美味しそうなきんつばを買った。少し歩くとお目当てのお店『喫茶 花』。
入り口の少し古びた木製のドアを押して中に入る。
カランコロン…
なんとも言えない懐かしい音が響く。
店内はコーヒーの香りに包まれていた。
午後の中途半端な時間帯ということもあって、店内は空いている。
いつも接客してくれる20代と思われる女性は、パリッとしたスーツを着た男性の接客中だった。他のお客さんは、テーブル席でパソコンを広げつつオムライスを食べている若い女性が居るだけ。デジャビュの様だ。
「いらっしゃいませ」
落ち着いた雰囲気の、マスターと呼ばれていた女性店員が案内してくれた。
窓際の明るい席に腰を落ち着かせ、備え付けのメニュー表を手に取る。
さて、何にしようかな…
あのお客さんが食べているオムライスが美味しそうだけど…チラとその女性客を見ると、期待の眼差しでこちらを見ている……気がした。
そうね、今日もオムライスにしよう。
オムライスを注文すると、明らかにその女性客が微笑みかけた。
確かにここのオムライスは美味しい。
あっという間に平らげてしまい、バッグから文庫本を取り出す。
しばらくページをめくっていたが、視界の先に見えるビルが気になる。
…今日も行ってみるか。
お会計を済ませ店を出ると、まっすぐビルへと向かった。
近づくにつれて、ビルの場違い感が際立ってきた。周りに公園や月極駐車場があるものの、それ以外は二階建ての住宅やアパート。その中で見上げるようなビルが一棟だけ。

「ワールドブルー……」初めて立ち寄ってからネット検索してみたけど、調べれば調べるほどよく分からない会社だった。
さてと。今日もビルの一階部分にある書店へ向かった。
書店を見つけると、何か面白そうな本に出会えるかもと、ついつい入ってしまう。
広さはコンビニくらいだろうか。雑誌の類は置いていない。文庫や単行本がほとんど。
いわゆるベストセラーや人気作家の本も見当たらない。
店主のこだわりのラインナップといったところなのだろうけど、やはり『なんのはなしですか』と『ワールドブルー物語』と付いたタイトルが目立つ。
会社の物語でこんなにも書籍を出す意味が全く分からないんですけど。
もうひとつの『なんのはなしですか』ってのもおびただしい量が並んでる。
いくつか手に取って読んでみたけれど、どれもこれも一体なんのはなしですか?
気が付くと今日も一冊まるまる読み終えていた。
この本には中毒性がある。かなり危険な本なのかも知れない。
なかでも、大量に平積みされている『三年間。no+eの街の路地裏で「なんのはなしですか」と叫んでいた。』 これはこないだ買って読んだ。
なんのはなしか分からないのに感動させられてしまう危険を感じる本だった。
レジの前を通り過ぎようとした時に、にこやかだけれどもヨレヨレのおじさんから声をかけられた。

名札には『蒼 広樹』とある。
「いらっしゃいませ。『ワールドブルー物語』はいかがですか。お客様にぴったりだと思いますよ」にこやかに言う。
何を根拠に!?って思わずツッコミたくなったけど、ギリこらえて「いえ、大丈夫です」とだけ言う。
途端におじさん顔が寂しげになる。
「そうですか。きっと面白いと思うんだけどなぁ……はい、どうぞ」
どん。
いや、出されても要らないって。
「今日はいいです。また今度にします」
「そうですか…残念だなぁ…」
しょんぼりする表情を見て、ちょっと可哀想な気もした。
「そうだ、お客様。先日、私にぴったりの選書をしていただいたんですよ。橘ゆずさんて方でね、ただオススメの本を紹介するんじゃなくてですね、私にぴったりの私のためだけの選書なんです。いやぁ、これがまた普段読まないようなジャンルでね、新たな出会いって感じでですね、新鮮な気持ちで楽しく読めたんですよ。この気持ちを誰かと共有したくてしたくて。なんならふたりで読書会しませんか。………で、なんのはなしですか」
「それはこっちのセリフですよ」
「あ、そうそう。こんな企画に参加してみたんですよ『 #ゆずぴた 』って言うらしいんですけどね」
「それでね、こんな本を選んでいただいたんですよ」
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ここは本屋なのになぜAmazon……?
「この『北欧こじらせ日記』が面白くてね。フィンランドが好きすぎて寿司職人を目指すの!なんのはなしか分からないでしょ?マンガやイラストと文章の割合もちょうど良くて、読み応えがありつつサラッと読めてしまうんですよ。いやぁ、この続きが気になるなぁ~なんて思ったら続編も何冊か出てて、ゾクゾクしちゃいました。続編だけに。…………もうね、フィンランド愛が強すぎて、本当に『こじらせてる』んですよ。で、なんで寿司職人かって?それはご自身で読んでね。」
笑うべきところで笑わなかったからか、熱弁だったのに最後は素っ気なかった。
「それからもう1冊の『ラインマーカーズ』は正直、難解でした。短歌なんですけどね、私は今まで触れて来なかったジャンルでね、短歌ってなんと言うか、行間を読むと言うかそんな感じじゃないですか。でね、この穂村弘さんの世界観と言うのが私の中には無い感覚だったんですよ。どうにか理解しようと頑張ったんですけど、なんのはなしか分からない。ひと通り読んでみて分かったんです。理解するもんじゃないんだなと。雰囲気や曖昧さを感じればいいだなと。そうしたらね、面白くなってきちゃって。私の中には無い感じ方を延々と綴ってあるから、これは私にとっての異世界ものですよ。」
早口でまくし立てるもんだから、途中からはなんのはなしか分からなかった。
「あともう1冊は、こないだまとめたんで読んでみてね!」
「あと、他にも路地裏にはたくさんのお店があるから、散策してみてね!」
「あ……はい」
「ありがとうございました。また来てね~」
今日もなんだかよく分からないまま、何も買わずに店を出てしまった。
#なんのはなしですか
#ワールドブルー物語
346話目。
どうも、あおです😄
noteは誰のために書いていますか?
私は私のために書いてます。
私が楽しく書けたら成功です。
私が楽しく書けて、読んでくれた方が楽しんでくれたら、それはもう大成功です。
#挨拶文を楽しもう
今回は、『路地裏で』シリーズ3回目です。
自分だけが楽しんで、読者を置いてけぼりです。
日々のエッセイを『ワールドブルー物語』に取り入れて、少しづつ物語を進めてみようかなとも思っています。
また、回を重ねる度に少しづつ変化している間違え探し的な要素も取り入れてみたら面白いかなとも。
1回目と2回目も置いて置きますので、良ければぜひ。
という訳で今回は、
分かりにくいかもだけど、 #ゆずぴた 選書感想回だよ!
って、お話でした。
物語に登場するお店は架空ですが、お店で使うのをイメージしたブックカバーは実際にBASEで販売していますので、ぜひ。
他にもユニークなブックカバー等を販売しているので覗いて(そして買って)ください。(切実)
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あおでした😄
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