現実にあった怖い話を聴く|山猫堂で過ごすホラーナイト|岩手県陸前高田市
思えばあの日も雨だった。目を凝らさないと道を見失いかねないほど真っ黒に染まった景色の中を一人歩きながら、頭上で傘が鳴らす不規則な音を耳にして、そんなことを思った。あの日と大きく違うのは、気温だろう。たった一ヶ月程度しか経っていないというのに、めっきりと寒くなった。
10月11日。この日は、岩手県陸前高田市の山の麓に建つ山猫堂で、人々が集まり怪談を語り合う怪談会が催された。怪談というと、一か月ほど前に熊谷珈琲店で催されたコマいぬ怪談 朗読「牡丹燈篭」を思い出す。その時と違うのは、今回は朗読劇ではなく、体験談である点だ。
ぴちゃり、ぴちゃりと雨水が路面を打つ音がやけに響く中、宵闇に染まった道を抜けて山猫堂の敷地内に入る。ぼおっと灯篭の火が灯ったようなほのかな光だけが浮かび、薄っすらと店内を照らしている光景は、何度も訪れて勝手知ったる場所とは思えないほど、異質な景色に見えた。
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写真と文章で見る普段の山猫堂と山猫堂「怪談会」
普段の山猫堂とこの日の山猫堂を頭の中で思い浮かべる。
普段の山猫堂























怪談会の夜の山猫堂











山猫堂 怪談会|厄用妖冥宗(やくようようめいしゅ)が語る現実にあった怖い話を聴き楽しむ
怪談会に参加すべく、山猫堂を訪れたのは20名前後だった。怪談会は今回で三度目となるようで、参加者の中には、二度目、三度目の参加を数える者が少なくなかった。会が始まる前は、幼子と戯れる人々や歓談する人々の様子が窺え、和気藹々とした雰囲気が流れていた。
しかしながら会が始まると、しとしとと降る雨音を背景に、屋内は静寂と”厄用妖冥宗”の面々のおどろおどろしい声色で語られる現実に起こった不可解で奇怪な物語に包まれ、乏しい光源に照らされ浮かび上がる面妖な人形と熊猫の頭部も相俟って、異様な雰囲気が漂うようになった。
一方で、”厄用妖冥宗”の面々の話が終わる都度、怪談とは打って変わった朗らかな歓談が差し込まれることで、場が恐怖に支配されることはなかった。怪談を聴きに訪れる人々の中に怪談を苦手とする人はあまり居ないと思われるにせよ、会は怪談が苦手な人々でも楽しめるようになっていたのである。
ただ怖がらせるだけでなく、ただ怖がって終わるだけでない怪談会は、温かな時間であった。怪談の中には、山猫堂のある陸前高田市、隣接する大船渡市といった地元を舞台にした怪談も語られている。地域に根差した怪談は、テレビや雑誌などであまり見聞きされないだけに、山猫堂の怪談会だからこそ聴ける怪談であった。
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