「DARK FORCE」第2話 #創作大賞2024 #漫画原作部門

アレスティル(お、俺の夢がぁー!!
       なんであんなに腰の曲がったおじいさんが、
       誰よりも早く戻って来る!)

 しかもアレスティルが予想していたよりも
 かなり早いスピードで戻ってきたのが、ショックに追い討ちをかけた。
 
アレスティル(どんだけ足が速いんだよ!
 
 やはり他にはおじいさん以外の人影はなく、
 アレスティルが予想したのと同じくらいの時間で
 じわじわと村の人々が戻ってきた。
 
 おじいさんは金髪の天使レーナに
 「お怪我はありませんか?」などと手厚い保護を受け、ご満悦のようだ。
 
 アレスティルはこのおじいさんが、
 ただ逃げ遅れていただけなのかとも思ったが、
 長年の経験でこれくらい逃げれば安全というのがわかっていたらしく、
 慌てて余計に遠くに行った人たちよりも
 早く帰って来たというだけのことだった。

 そうして戻ってきた村人たちは、
 アレスティルを取り囲むように集まって来る。
 
 アレスティルの立ち姿は神々しいほどに美しい。
 彼のプラチナブロンドの髪に流れる光は金色に煌めき、
 雪のように白い肌に端整な顔立ち。
 
 彼の雰囲気に気圧されるかのように、
 人々は一定の距離までしか近づくことは出来ない。
 
 彼らはアレスティルと言う『存在』を見つめているのだ。
 決して彼という『人間』を見ているわけではない。
 
 いつも見慣れたその景色に、
 アレスティルは次第に心が冷えていくのを感じた。
 
 人々によって隔てられた見えない壁の輪の中に、
 不意に飛び込んできた金髪の彼女はこう言った。
 
レーナ「もう、恥ずかしいじゃないですか!
    私だけが知らなかったなんて。
    早く教えてて下さいよっ!!」
 
 照れながらレーナはアレスティルの肩を
 バシッ! っと勢いよく叩く。
 レーナのその不遜な行為に村人たちは凍り付く。
 
村人たち(なんて恐れ多いことを!
 
 その瞬間、アレスティルがクスッと吹き出し、
 堪らず大声をあげて大笑いをした。
 
アレスティル「アハハッ、何だかすごく気分がいいよ」
レーナ「最初からあなたがあの有名な勇者様だって知っていれば、
    私だってもっとちゃんとした態度を取っていましたよ」
レーナ「そりゃ本人を前にして知らないなんて、
    私の方が悪いかも知れませんけど」
レーナ「ホント、ちょっとド忘れしてただけなんですから。
    もう、そんなに笑わないでください」
アレスティル「アハッ……ごめん。
       でも勇者様はやめて。呼び捨てでいいから
       名前の方でお願いします。レーナさん」
 
 その彼の表情がどこか和らいだものに変わっていくのに、
 一つ外で取り囲む村人たちは驚かされる。
 見えない壁のようなものが解けていくそんな感じだった。
 
 気高く神聖で触れがたいオーラのようなものは、
 今のアレスティルにはない。
 彼の美しい顔の頬がほんのりと赤くなっている。
 
レーナ「では、アレスティル君と呼びます。
    私のことはお姉さまと呼んでいいですよ」
 
村人たち(上から目線かよ!?
 
 と一斉にレーナの方に振り返る村人たち。
 
 再びアレスティルが笑いだすと、
 彼自身も見えない壁の向こう側にあったものに、
 気付けるだけのゆとりが生まれていた。
 
アレスティル「ケガをしてるじゃないか、ちょっと見せてごらん」
 
 アレスティルは血が流れている少年の膝を軽く抑える。
 すると何かの光を発して少年の傷を一瞬で治した。
 
 その小さな奇跡に吸い寄せられるように、
 人々はアレスティルを囲むようにして集まり、
 その子の母親からは「ありがとうございます」と感謝される。
 
 人肌が伝わる距離に自分はいる。

 アレスティルにとって、それはとても嬉しいことだった。
 
レーナ「アレスティル君ッ! なに一人で目立っちゃってるんですか」
レーナ「第一、専門家の僧侶である私をほおっておいて、
    素人が勝手にそんなことして破傷風にでもなったら
    一体どうするんです!!」
 
 村人たちはそんな滑稽な彼女の姿を見て笑い出す。
 レーナは何処からか救急セットのような物を取り出して、
 意地でアレスティルに対抗しようとする。
 
レーナ(ペカッと光って傷を治せるなんて、勇者ってズルい
 
 レーナは人々に何処か悪いところはないかと聞きまくるが、
 大抵帰ってくる言葉は、膝が痛いだの、腰が痛いだのその辺りだった。
 
 実はこのレーナ
 聖職者でありながらバトルに能力を全振りしていたので、
 治癒魔法が一切使えない。
 パーティーでは前衛しか居場所のない女僧侶なのだ。
 
 こうしてアレスティルとレーナは、村人たちからの熱烈な歓迎を受ける。
 日が暮れると村人たちは村の中心の広場で、
 惜しげもなく貴重な食料を使い真心のこもった宴を開いてくれた。
 
 レーナは何処か納得のいかない表情をしたまま、
 アレスティルに「お酒はハタチになってからです」と説教し、
 自分はしっかりとリンゴ酒片手に酔っ払っている。
 
 聖職者でありながら、
 誰よりも美味しそうに酒を飲むレーナにアレスティルはツッコむ。
 
アレスティル「確か19才って言ってたよね?」
レーナ「女性に向かって歳の話なんて言うもんじゃありませんっ」
アレスティル「仮にも聖職者だし。
       今日の事は誰にも言わないから、飲み過ぎには気を付けて」
レーナ「ウフフッ、実は今日が私の誕生日なのです。
    つまりハタチ! さあ私の誕生日も盛大に祝って下さい」
アレスティル「う、ウソだっ」
 
 レーナはいい加減な事を言っては、
 ご馳走のチキンをモグモグと口いっぱいに頬張る。
 事実、数日前に20才を迎えていたのだが、
 旅の途中で日付の感覚が曖昧になっていた。
 
 酔うと性格がさらに明るくなるのか、
 レーナは寄ってきた村の子供たちにこれまでの冒険譚を語り、
 子供たちを中心に笑顔の花を咲かせる。
 
女の子「おねーちゃん、すごいっ!」
レーナ「そう言ってもらえると嬉しいなっ」
レーナ「私の同期の僧侶たちは、
    私が治癒魔法を使えない盾女とか言うんですよ、まったく」
男の子「魔物を倒せる方がぜったいカッコイイよ!」
レーナ「ううっ、良い子ばかりですねぇ。
    さあみんな、お姉さんに頭を撫でさせて。
    みんなが健康でありますように神様に祝福してもらいますっ」
 
 レーナはその高い神聖力で子供たちを祝福していく。
 頭を撫でられた子供たちを淡い光が包むと、
 アレスティルはその光の正体が地母神クレリスの加護というのがわかる。
 
 優しさが広がって行く光景に、
 自然とアレスティル自身も優しい気持ちにさせられていくのを感じた。
 
 アレスティルはたき火の傍らで頬杖を付きながら、
 人々の笑顔の輪の中にいるのを心地良く思った。
 
アレスティル(笑顔が伝わってくる、こんなにも自然に
 
 
 次の日の朝、二日酔いで頭を抱えるレーナ。
 その後、アレスティルは据わった目をした彼女にこう告げられる。
 
レーナ「さあアレスティル君、一緒に私の国に行きますよ」
アレスティル「えっ」
レーナ「おねえさんがいい所に連れて行ってあげるから。うっぐ、
    ほら女の子を待たせない! さっさと歩く!!」
 
 と半ば強引に手を引かれ、
 彼女の居場所である『セバリオス法王国』へと
 連れて行かれるアレスティルであった。
 
 
         ***
 
 
 北西のノウエル叡智王領と南西のティヴァーテ剣王国に
 挟まれる形で存在している西の大国、神聖セバリオス法王国。

 アレスティルはレーナに連れて来られて、
 日々が過ぎるのを早くを感じた。
 
 国でのレーナの姿はまるで聖女のようで、
 孤児院の子たちの面倒をみたり、
 困った人がいたら優しく手を差し伸べていった。

子供たち「お姉ちゃん、彼氏連れてきたの」
レーナ「もう、ませた事を言うようになっちゃって。
    彼氏というより弟みたいな感じですよ。
    みんなも私の弟や妹たちですっ」
子供たち「わーっ」
男の子「レーナ姉ちゃんはボクのお嫁さんになるんだから、
    背の高い新入りがちゃんと守ってよ」
アレスティル「良い子で仲良く過ごすんだよ。
       その間にお兄ちゃんがレーナさんを
       お嫁さんにしてあげるから」
レーナ「そこ、張り合わないで。
    みんなが大きくなる頃にはミアやマリアにアンが
    凄い美人に育っても、それでも私が良いんですか」
男の子たち「うーん、一番可愛い子がいいなぁ」
アレスティル「そういう足長おじさん的見方もあるのか」
レーナ「この子たちに手を出したら、私、軽蔑しちゃいますからね」
アレスティル「大丈夫、今はレーナさんが一番だから」
レーナ「もう」
 
 アレスティルはこの暮らしに豊かさを感じていた。
 そしてレーナの事を深く知って行く内に、
 彼女に惹かれる気持ちが芽生えていく。
 
 レーナは冒険者ギルドにも顔を出しては
 困った集落の情報を集め、問題解決の為に奔走した。
 
レーナ「アレスティル君が来てくれると、
    何倍も早く解決出来るので助かります」
 
 アレスティルは大量の荷物を亜空間に収納出来るスキルを持ち、
 転移魔法が使えた為、一度訪れたことのある場所に一瞬で向かえた。
 
アレスティル「それじゃ一番近くの街まで飛ぶよ」
レーナ「勇者って便利だよね」
アレスティル「多分魔法使いなら同じ事が出来ると思うけど
       レーナさんはバトル専門だからじゃない?」
レーナ「んもうっ! 魔法を守護系で覚えちゃったんだから仕方ないのっ」

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