組織の根底にあるべき思想「自他共栄」 #180
現代、多くの企業にとって「組織力の強化」は、避けて通れない経営課題になっています。
すでに人材不足は深刻化しており、今後は人口減少によって、その問題はさらに加速していくでしょう。
限られた人材で成果を出し続けなければならない時代の中で、従来のような「決められた役割だけをこなす組織」には、いずれ限界が訪れるのではないかと感じています。
もし、互いに無関心なまま、
「自分の仕事だけをやればいい」
「自分さえ評価されればいい」
という空気が組織に広がれば、組織は確実に弱体化していきます。
人が減る時代だからこそ、一人ひとりが孤立する組織ではなく、互いを補完し合える組織でなければ、生き残れない。
これからの時代の組織には、その視点の対応力が不可欠なのだと思っています。
■組織に必要な要素とは
人は、一人で成せることに限界があります。
だからこそ、人は目的を共有する仲間と組織をつくります。
それは国家や社会のような大きな単位かもしれません。
あるいは、地域コミュニティ、学校、家庭。
そして、個人の目的や理想を実現するための代表的な組織が企業です。
企業が組織として機能するためには、当然ながら、そこに集う一人ひとりが「目的を共有」していることが欠かせません。
しかし、単に同じ目標を掲げるだけでは、組織は前に進みません。
互いに「コミュニケーション」を取って長所と短所を認め合い、組織への「貢献意欲」を持って行動してこそ、初めて、組織は力を持ち始めます。

■ 完璧な人間はいない
誰にでも、得意なことと不得意なことがあります。
だからこそ、組織には意味があります。
もし全員が万能なら、互いを必要としません。
しかし現実は違う。
だから、人は支え合い、補い合うことで、個人では到達できない成果を生み出していきます。
そのために必要なのが「自己開示」です。
自分はどんな人間なのか。
何が得意で、何が苦手なのか。
どんな価値観を持っているのか。
それを適切に共有できる組織では、補完関係が生まれます。
そして補完は、やがて相乗効果へと変わっていく。
私自身、過去に「自分一人で何とかしよう」と抱え込み、周囲との連携がうまく機能しなかった経験があります。
逆に、自分の弱さを認め、仲間を頼れた時ほど、組織は強く機能しました。
組織とは、「強い個人」が支えるものではなく、互いを信頼できる関係性によって成り立つものなのだと実感しています。
■ 組織に必要なのは、正しいコミュニケーション
組織が健全に機能するためには、常に適切な情報共有が行われていなければなりません。
コミュニケーションが不足すると、
• 誤解が生まれる
• 不信感が蓄積する
• 協力関係が崩れる
• 組織の目的が見えなくなる
結果として、組織は徐々に機能不全へと向かっていきます。
逆に、互いの考えや状況を率直に共有できる組織では、信頼が育ちます。
信頼があるからこそ、人は挑戦できる。
助けを求められる。
そして、他者のために力を尽くそうと思えるのです。
■ 「自他共栄」という思想
私は、組織において最も重要な考え方の一つが「相互依存」だと考えています。
自分の弱みを、仲間の強みで補ってもらう。
そして、自分の強みで、仲間の弱みを補う。
この関係性こそが、「自他共栄(じたきょうえい)」なのではないでしょうか。
「自他共栄」とは、
「互いに信頼し、助け合うことで、自分も他者も共に栄える」
という考え方です。
これは、柔道(正式名称:講道館柔道)の創始者である
嘉納治五郎
が説いた思想です。
嘉納師範は柔道だけでなく、日本のオリンピック初参加にも尽力し、「日本の体育の父」とも呼ばれています。
彼は、人が社会の中で生きる以上、互いに融和協調しながら共に発展していくことが不可欠であると説きました。
「自分だけが得をしよう」としても、必ずどこかで衝突が起きる。
逆に、「他者のため」に尽くすことは、巡り巡って自分自身の成長や幸福にもつながる。
この思想は、現代の組織論にも通じる、本質的な考え方だと思います。

■ 組織を壊す「エゴイズム」
一方で、自他共栄を阻害するものがあります。
それが、エゴイズム(利己主義・自己中心主義)です。
エゴイズムの特徴は、
「自分の考えが正しいこと」を前提にしてしまうこと」
にあります。
その結果、他者の意見に耳を傾けなくなり、健全なコミュニケーションが失われていきます。
組織内のエゴイズムは、例えば次のような形で現れます。
• 破壊的な批判ばかりを行う「批判型」
• 仲間を排除しようとする「排他型」
• 協力しない「非協力型」
• 無関心を装う「無関心型」
批判型や排他型は目立つため認識しやすい存在です。
しかし、非協力型や無関心型は静かに組織を蝕みます。
「自分には関係ない」
「面倒だから関わらない」
そうした姿勢が広がれば、組織は徐々に熱量を失っていきます。
そして今後、人材不足がさらに進めば、一部の人間だけに負荷が集中し、支える側が疲弊していく組織も増えていくでしょう。
互いに支え合えない組織は、やがて持続できなくなる。
私は、その危機感を持つ必要があると思っています。
組織とは、本来、同じ目的のために集まった集合体です。
だからこそ、
• 互いに関心を持つこと
• 必要な時には本気でぶつかること
• 建設的に議論すること
が重要なのだと思います。
もちろん、感情的に壊し合うことは違います。
大切なのは、「同じ目的に向かっている」という前提を忘れないことです。
■ 組織の根底に必要なもの
組織に必要なのは、完璧な個人ではありません。
弱さを認められる人。
他者を信頼できる人。
そして、自分の力を誰かのために使える人。
そうした人たちが集まった時、組織は単なる集合体ではなく、「チーム」になります。
人口減少が進み、人材確保がますます困難になるこれからの時代。
企業が本当に問われるのは、「優秀な人材を集められるか」だけではなく、
「限られた仲間たちと、どれだけ強い組織をつくれるか」
なのだと思います。
その根底にある思想として、「自他共栄」は欠かせないものだと考えています。
