勝利をつかむ組織づくり #189 井上康生さん
柔道をしていない方でも、井上康生さんの名前を知る方々は多いかと思います。
とにかく、小学生の頃から伝家の宝刀である内股で相手を投げ飛ばす圧倒的な強さでした。
これまで、私は、長谷川滋利さん、田中雅美さん、秋山幸二さん、大畑大介さん、落合博満さん・・・など錚々たる一流アスリートの皆さんの講演を多数、拝聴させていただいて来ました。
同じ柔道の野村忠宏さんの講演を拝聴させていただいたこともあります。
また、以前、井上さんに関する書籍も何冊か読んでいます。
ただ、今回、興味があったのが、井上さんがつい2021年9月まで、全日本男子柔道強化チームの監督であったことです。
選手ではなく、監督としての価値観などをお聴きすることができるのではないかと期待しました。

柔道は、日本発祥の競技です。
それだけに、国際大会でも日本人が優勝して当然と思われる方も少なくありません。
しかし、今や、柔道は、JUDOです。
例えば、フランスにおける競技人口は、なんと日本より多い柔道大国なのです。
また、1988年のソウルオリンピックでは、最終日の95kg超級まで、金メダルを1個も獲れず、斉藤仁さんが断崖絶壁まで追い込まれながらも、やっとの思いで金メダルを獲得したという話しは有名です。
対して、井上さんが監督を務めた2016年のリオオリンピックでは、全7階級でメダルを獲得、2021年の東京オリンピックでは自国開催とは言え、史上最多の5階級で金メダルを獲得しました。
この組織づくりについて、得られることが必ずあると必死にメモを取りました。
まず、組織として大切なのが、何を目的とするかです。
そもそもの柔道とは、その修行によって己を完成させ、世に補益することにあります。
その意味でも、2021年代表監督に就任の際、井上さんは、世界一、メダル獲得だけが目的ではない。
そもそも、強さだけとは、点でしかない。
勝負は勝つか負けるか、人生の擬似体験です。
ここから何を学び、何ができるかを、単一的ではなく、多角的に捉えることを訴えたと言います。
その上で、勝利をつかむ最強かつ最高の組織づくりを行なったそうです。
1.意識・組織
①MVV
Mミッション:最強かつ最高の組織
Vビジョン:具体的な目標
Vバリュー:具体的な行動指針・基準
②最高の組織
選手個々が主体性を持った組織にする意味でも、守るべき規律はを明確に定める必要がある。
組織が機能するためには、参画する個々が、目的を共有していることが大切です。
もちろん、共有するだけではなく、達成するために、貢献しようとする意欲を持って行動することが必要です。
そのためにも組織内では、常に適正な情報を共有すべくコミュニケーションが取れていなければなりません。
2.チーム力
選手に世界一を求めるならば、選手を含めたチームに世界一であることを求める必要があるという概念です。
選手、監督、コーチ、トレーナー、栄養士、アナリストなどの職務分掌によって、対話と共創を徹底させ、共有した理念や規律から誰一人、逸脱させないチームづくりが成されたと言います。
3.主体性と規律
やらされ事ではなく、選手たちが、自分自身のために日本代表としての誇りと責任を持って主体的に行動するマインドをづくりをしたといいます。
また、自分自身のために戦う誇りを優先させつつも、誰かのために戦うマインドも大切にしたそうです。
脳神経外科医で、日本大学名誉教授の林成之さんのある記事のなかで、顕在能力は当然ながら潜在能力を発揮するには、原点に従って全力を出すことが大切だと記載されていました。
原点とは「誰かに勝ちたい」ではなく「観た人が感動する勝ち方をしたい」と願うことであり、つまりは「人のために生きる」ということです。
4.自己マネジメント能力
結果を出すべき時に、最高のパフォーマンスを発揮するために計画を立案して、選手個人とチームが共有したマネジメントを行う。
企業であれば、組織のマネジメントは、マネジャーが行います。
しかし、個人のマネジメントは、自分自身で行わねばなりません。
決して、自分自身のマネジメントを上司であるマネジャーにやってもらうものではありません。
これと同様で選手も、監督やらコーチから指示された練習を漠然と受け身になっていては効果は高まりません。
主体性を高めるためにも自分自身のマネジメントは自分自身で行う意識が大切です。
5.準備力=異常な準備
質と量のバランスを見極めて、如何に適正な準備を行えるかで、結果が大きく違ってくる。
・メンタルのレジリエンス・タフネスの強化
・望ましい状態と最悪を想定したギャップを埋めるためのリスクヘッジ
・チームとしとのバックアップ体制
・偏らず様々な体験機会を提供する
望ましい結果には準備が重要です。
しかし、これから挑む未知の領域に対して完璧な準備は現実的ではありません。
100%の完璧な準備にこだわり過ぎると、いつまでもスタートを切れません。
むしろ、準備は70%に集中して、逸早くスタートすべきかと思います。
残り30%は仮説を基に試行錯誤して推進した方がむしろ良い結果を得られると捉えています。
正直、一人の井上さんのファンとして以上に、企業を経営する立場として参考になった講演でした。
経営課題は、その年々で詳細は変わるものの、常に組織力の強化にあります。
講演では全く企業組織と変わらない観点と、柔道という競技組織だからこその観点があって、思わぬ気づきもありました。
また、私の解釈の違いによって、井上さんの伝えたい主旨と異なってしまっている部分も多々あるかもしれません。
その場合は、何卒、ご容赦いただけますと幸いです。
私共の決算は、12月です。
間も無く新しい年度がスタートするために来年度の事業計画策定の最終段階に入っています。
今回の講演で得たことを、この事業計画にも反映させて、その達成は勿論、経営理念のビジョン実現を目指したいと思います。
