「家系図」という受け継がれてきた、我が家の物語。
ある日、お爺ちゃんが大きな紙を広げました。
そこには、たくさんの名前が書かれています。
「これは、なあに?」
ぼくが聞くと、お父さんはにっこり笑って言いました。
「これは家系図だよ。お前が生まれるずっと前から続いてきた、我が家の命の地図なんだ。」
僕は紙をじっと見つめました。
お爺ちゃんも、ひいお爺ちゃんも、そのまたずっと昔のご先祖さまも、一本の木の枝のように繋がっています。
その木のいちばん先に、小さく僕の名前がありました。
「僕は、こんなにたくさんの人と繋がっているんだね。」
そう思うと、なんだか胸が温かくなりました。
その日の夜、お爺ちゃんが昔の話をしてくれました。
「実はね、子どものころのお爺ちゃんは、自分の事があまり好きじゃなかったんだよ。」
「勉強はなかなかできないし、運動も苦手。みんなのように上手くできなくて、失敗ばかりしていた。」
「周りの子と比べるたびに、
『僕はダメだ』
『ぼくなんていないほうがいいのかな』って思ってしまったんだよ。」
僕はびっくりして、お爺ちゃんの顔を見ました。
いつもやさしく笑っているお爺ちゃんにも、そんな気持ちの日があっただね。
お爺ちゃんは、少し考え込みながら続けました。
「でもな、あるとき気づいたんだ。」
「僕がいなくなったら、お父さんやお母さんがとても悲しむ。大切な人を泣かせてしまうことになる。」
「だから、まずは一日、また一日と、生きてみようと思ったんだ。」
「するとね、不思議なことに、少しずつ周りが変わっていったんだよ。」
「優しく話してくれる人ができて、笑ってくれる人ができて、お爺ちゃんも少しずつ、自分を嫌いじゃなくなっていったんだよ。」
そして、お爺ちゃんはにっこりしながら、
「それから、お爺ちゃんはお婆さんと出会ったんだよ。」
「そして、結婚して、家族になった。」
「それで3人の子供が産まれたんだよ。」
「その子どもが、お前のお父さんだよ。」
「お爺ちゃんがいて、お婆ちゃんがいて、その二人が家族になって、お父さんが生まれた。」
「そして、お前のお父さんとお母さんが家族になって、お前が生まれたんだ。」
ぼくは、家系図の紙をもう一度見ました。
一本の木の枝が、ずっとずっと繋がって、絶え間なく続いている、その先に僕のところまで来ている。
「僕は、ひとりで生まれたんじゃないんだ。」
そう思うと、胸の中がぽかぽかしました。
「だからね、生きていてよかった。」
お爺ちゃんは、ぼくの頭をそっとなでました。
「自分が嫌いだったころもあったけれど、諦めずに生きてきたから、お前と会えた。」
「孫のお前に会えたことが、一番嬉しいんだよ。」
「ありがとう。」
その言葉を聞いた僕は、涙が出そうになりました。
もし、お爺ちゃんがあの時生きることをやめていたら。
もし、その前の誰かが命を繋いでくれなかったら。
僕は、この世に生まれてくることはなかったんだよね。
それからしばらくして、お爺ちゃんはあの世に行ってしまいました。
お葬式の日。
家族みんなで「ありがとう」と手を合わせていると、ふわりとやさしい風が吹きました。
その時、不思議なことが起こりました。
「すまないねえ。」
どこからともなく、おじいちゃんのやさしい声が聞こえたような気がしたのです。
家族みんなは顔を見合わせ、涙を流しながら笑いました。
僕は家に帰ると、もう一度、家系図を開きました。
長い長い命の木。
その人たちが一人も欠けることなく命を繋いでくれたからこそ、
今の僕がいます。
これは、我が家の「物語」
その枝葉は、名前も知らないたくさんのご先祖さまがいます。
そして、命の木は、僕で終わりではありません。
いつか、この木には新しい枝が伸び、新しい葉っぱが芽吹くでしょう。
僕はその木を見上げながら、小さく呟きました。
「ありがとう、ご先祖さま。」
「僕は、この命を繋げていきます。」
命は、一人だけのものではありません。
何百年もの昔から受け継がれ、現在・過去・未来へと、大切なバトンなのですね!
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