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春を見ていなかった天子様 ~京極派スペース テキスト版~

この記事は、X(旧Twitter)で毎週おこなっている

京極派スペース
(京極派和歌をテーマにした音声配信)

の音声をもとに、内容を整理し、読み物としてまとめたものです。


スペースでは特に台本も用意していませんし、話し言葉のまま思考を進めているため、
専門用語が多かったり、要点のつかみにくかったりする部分もあります。

本記事では
配信を文字起こしし、読みやすく構成を整理
それとは別に簡単な目次を冒頭に付けました


無料部分では
「この回ではどんなテーマを扱っているのか」
「どこが読みどころ・聴きどころか」
などがわかるよう、全体の見取り図を提示しています。

文字起こしを整理した全文は、有料部分に掲載しています。
じっくり読みたい方はぜひご覧ください。


無料部分、有料部分、いずれも音声を聴きながら理解を深めたり楽しんだりする補助として、ご活用いただけたらと思います。


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春を見ていなかった天子様 ~京極派スペース テキスト版~

今回のテーマは「立春直後の京極派和歌(風雅集)」です。


京極派スペース「立春直後の京極派和歌(風雅集)」

2026年2月14日放送


「立春直後の京極派和歌(風雅集)」ガイド

1.京極為兼ためかぬ「春てふけふ」――『風雅集』冒頭歌

  • 「春てふけふ」のことわり

2.西園寺実兼さねかぬ「春の光」――貴顕の伸びやかな歌

  • 上級貴族の伸びやかさ

  • 京極派以前の上級貴族の叙景歌

3.伏見院「天地あめつちの心」――政変後の春の歌

  • 正安の政変と伏見院

  • 春を恨んだ歌

  • 春を見つめた歌

  • 「見ているようで見ていなかった」という視座の転換

4.花園院「わが心春にむかへる」――春に向かう心

5.進子内親王「霞ぞ春のすがた」――発見の歌の洗練


京極派スペース「立春直後の京極派和歌(風雅集)」テキスト版

・ぜひスペースを聴きながらお楽しみください。
・文章だけでも読めるよう整えてあります。
・文字起こしデータをもとに整形しているため、読みにくい箇所や漢字変換などがあるかと思います(梶間がふだん仮名表記している副詞が漢字になっている、など)。ある程度整えてはありますが、諸々ご了承ください。
・本記事の書籍リンクにはAmazonアソシエイトを利用しています。



前回『玉葉集』入集の立春の和歌の紹介だけで終わってしまったので、今日は『風雅集』に入集した立春の京極派和歌をご紹介します。


『風雅集』の1首目です。
「『風雅集』のなかの京極派歌人の詠んだ1首目」ではなく、『風雅集』自体の1首目です。

春立つこゝろをよめる
さきの大納言為兼ためかぬ

足引の山のしら雪ぬが上に春てふけふは霞たなびく


……好き嫌いは分かれますね。
私はあまり好きでないけど、せっかく『風雅集』の第1首目に入っているので、確かに京極らしさもあるし、紹介だけはしておこうかなと思いました。


「足引の」は前回の放送でも紹介しましたが、「山」という詞を導く枕詞です。

「足引の山のしら雪ぬが上に」
まだ消えない、山には白雪が消えていない、まだ降り積もったままであるその上に、
「春立つこゝろ」ですから今日が立春です。春という今日は霞たなびく。

「春てふ」と書いて「はるちょう」と発音しますけど、「春てふ」という部分に京極派のことわりの歌らしさが表れています。


ここが好き嫌いの分かれるだろうところ。

京極派の和歌には理を強めに出した歌がいろいろありますが。
成功した歌もいくつかはありますが、この歌が成功しているかどうかと言うと……少なくとも私の好みではないです。

ないですが、「春という今日は、春だから、私の心が春と見なしたから」霞がたなびくのだ、と。
山の白雪が見える、雪の消えないその上に霞がたなびく。それはただたなびくのではなく、「春という今日は、春だから、私の心が春と見なしたから」霞がたなびくのだ。
「春という今日」ここが肝なんだろうなと思います。

その肝の部分が好きか嫌いかは、本当に人によると思いますけれども。


次の歌は『風雅集』4首目ですね。

早春霞をよみ侍りける
後西園寺入道前太政大臣

これは西園寺実兼さねかぬのことです。
『玉葉集』のほうでは「入道前太政大臣」が西園寺実兼。
『風雅集』では同じ人が「後西園寺入道前太政大臣」という名前で入集しています。

早春霞をよみ侍りける
後西園寺入道前太政大臣

山のはを出づる朝日のかすむより春の光は世にみちにけり


これはいいですね。
私がいまいち好きになれないと言ったさっきの為兼詠と比べても、すうっと入ってきます。
京極派らしさもあるし、だからといって伝統的な和歌の韻律とか美学というものから大きく外れることもなく詠み収められていて、これはとてもいい歌です。
難しい語釈も要らない。

「春の光」という言い方はちょっと京極派っぽいかな。
あまり京極派以外の歌人で使っているのを見た記憶はないですが、どうでしょう。
「京極派らしい言い方」と呼んでいいと思います。

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