格差と労働、そして都市の問題の「結節点」としての「住宅」
さて、今日は昨日に続いて、もう少し「住宅」について考えてみたい。
たとえば、35年ローンというものがある。これは終身雇用&「離婚しない」ことを前提としたシステムで、この前提に人生への大きな束縛を感じる現役世代は少なくないだろう。今日においては、住宅価格の高騰で、そもそも「高くて買えない」という不満が前に出がちだが、ここで35年ローンを組むことで、転職と離婚のハードルがぐっと上がる(後者はペアローンの場合に特に)という問題は地味に大きい。要するに、戦後中流的なライフモデルの中核にある持ち家による資産形成というゲーム自体が、高リスクだと感じられ始めたのだ。言い換えれば、転職・独立・移住・学び直し・家族再編などの「人生のオプション価値」を金融機関に担保として差し出す行為だと考えられ始めているということだ。
もう少し突っ込んで考えると、フリーランスはどれだけ稼いでいてもローンを組みづらい、という信用評価の問題がこれに加わる。これはどちらかといえば、自立してバリバリ稼いでいる人の話だが、「失われた30年」以降の日本では、正社員様という貴族階級に入れなかったアンダークラスに、そもそも「稼いでいない」という問題がのしかかっている。こちらこそ、一番忘れてはならない問題だ。
要するに、旧来の家族賃金モデル+福祉国家政策が機能していたころの保障を身分的に与えられた役人と大企業正社員(令和貴族)の外部には、アッパーにもロウワーにも「そうではない」人々がいる。つまり「武士」と「貧民」がいる。ここを包摂しない限り、問題は解決しない。そして、戦後中流の「復活」は、倫理的にも経済構造的にも難しい。高い流動性+強力な個人単位のセーフティネット(BIはその一手段)というモデルが、長期的には現実解にならざるを得ないのはこのためだ。僕がこの令和貧民の連帯を目的とした新しい労働組合(おそらく情報銀行型になる)を提案するのも、このためだ。
そもそもの問題として、この先必要になるのは、単身世帯、またはパートナーとの二人世帯の急増に対応した住宅供給であり、同時に、相対的にマイノリティになる子育て世代への社会全体によるバックアップである(自分の遺伝子を継いでいない子どもなんか知らない……みたいなことを言うやつは哺乳類やめたほうがいい)。そして、その子育て世代も20年後には一人暮らしか二人暮らしになり、その後も、ほとんどの場合は「半世紀以上」生きる(人類最大の変化は「長命化」であることを、そろそろ認識したほうがいい)。
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u-note(宇野常寛の個人的なノートブック)
宇野常寛がこっそりはじめたひとりマガジン。社会時評と文化批評、あと個人的に日々のことを綴ったエッセイを書いていきます。いま書いている本の草…
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