「現場から求められる価値」を届け続ける。自動運転ロボエンジニアが技術で変えたい世界のパラダイム
まえがき
人を乗せて歩行領域を自動走行するサービスとして、世界で初めて羽田空港で社会実装された「WHILL自動運転サービス」。今では、国内を代表する主要空港や病院をはじめ、ロサンゼルス空港やバルセロナ空港、コペンハーゲン空港など世界の主要ハブ空港で展開されるほど安定成長を遂げています。

そんなWHILL自動運転サービスは世界的な高齢化や多様化に伴い、あらゆる人が安心快適に移動できるとともに、これまでその介助を担っていたスタッフの身体負担を軽減できるインクルーシブかつアクセシブルな移動インフラとして、グローバル全体で一層求められつつあります。
スマートかつスムーズな運用を支えているのが自動運転の開発エンジニアたち。この記事では、ちょっぴりベールに包まれたWHILLのソフトウェアエンジニアたちにフォーカスします。
シリーズ形式でお送りしており、WHILLの自動運転サービスを支える他のエンジニアの記事も末尾のnote記事からお読みいただけます。
今回は、自動運転の"要"ともいえるセンシング領域を担い、WHILLの技術で世界のパラダイムシフトを見据える大城に話を聞きました。

テクノロジーで世界の枠組みをアップデートしたい!
ハードとソフト両方の視野を持ちながら、企画から開発、実装まで一気通貫で挑戦したい!
そう考える方々へ、必読です。
プロフィール
東京大学学際情報学府 山中俊治研究室を修了。新卒で電動歯ブラシの企画職を経て、2023年にWHILL株式会社へ入社。学部在学中には、ハードウェアエンジニアとしてWHILL社でのインターンに従事。現在は、自動運転ソフトウェアの開発に従事し、主にセンシング領域やSLAMを用いた環境構築を担当する。屋内モビリティの自動運転を通じ、グローバルな社会課題解決に貢献することを目指している。
概要説明も多いので、大城の登場ページまで一足飛びしたい方は「目次」より読みたい見出しをクリックして先へお進みください。
世界に広がる近距離移動インフラ、WHILL自動運転サービスとは?
WHILL社は「すべての人の移動を楽しくスマートにする」をミッションに、近距離移動のモビリティ・ソリューションでグローバルNo.1を目指しています。展開事業はモビリティ販売事業とモビリティサービス事業で、ハードウェアとソフトウェアを融合させたサービス体験を提供しています。
WHILL自動運転サービスは後者のモビリティサービス事業のひとつ。決まったルートを、人を乗せて自動走行することで、安心快適かつ効率よく遠い先の搭乗ゲートまで楽々移動できると同時に、これまで人力で介助していたスタッフの負担を軽減しています。
まさに施設に欠かせない移動インフラ。採用実績は、前出の羽田空港をはじめ成田国際空港、関西国際空港など国内主要5空港にとどまらず、世界中の巨大ハブ空港にまで及び、サービス提供件数は累計70万件を超えます。

WHILL自動運転サービスには、センサー群が搭載され、ほぼ全方位の障害物を検知・回避(場合によっては一時停止)しながら、人が行き交う歩行空間を自動で走行。ゴール到達後は、無人運転で元の場所へ自動返却されます。
「技術で世界のパラダイムを変えたい」グローバル展開するWHILLに入社
(前置きが長くなりましたがここからが本題。大城さん目線で紹介します)
私は、かねてから技術の力で世界のパラダイム(特定の時代の社会通説として広がる物事の見方や枠組み、価値観)を変えたいと考えていました。
技術の力を世界にどう役立てられるか?と、いろいろ調べている時に知ったのがWHILLです。かっこいいのに、「技術」でちゃんと勝負して世間に広く販売しているという印象を受けました。※WHILLは当時、普及価格帯モデルとしてWHILL Model C(現行のModel C2の旧モデル)の販売を開始したころ。
私自身の体感では、世の中にはデザイン寄りのものや、技術は優れており特定の業界や対象にはしっかり愛されるが万人受けしづらいものも存在します。その中でWHILLは、デザインもさることながら、しっかりとした技術に支えられたプロダクトやサービスを世界中のお客様に広く届けている企業。もっと知りたい、学びたいと思い、在学時はインターンとして携わりました。
WHILLに戻ってきたのは、技術でビジネスに貢献し、結果として世界を変えたいという、近しい目線を持つメンバーらがいたからです。WHILLのグローバル展開も、目標の実現には必要だと考えました。

自動運転の"要" SLAMとセンシングを開発。世界中でサービスを継続的に提供するための仕組み
WHILL自動運転サービスでは、センサーで周囲を観測し、その情報をマップと照合することで、機体が自己位置を推定しながら走行します。
重要なのは、単に走れることではなく、空港や病院のように人が行き交う歩行領域で、安全かつ安定してサービスを継続できること。私はそのためのマップ生成(SLAM)と、運用によってセンシング品質を維持する仕組みづくりを担当しています。

SLAMによるマップ生成の運用課題
WHILLが扱うマップは、空港などの広い施設全体をカバーするため、一般的なロボット用途と比べて大規模になりやすい特徴があります。このマップをSLAMで生成するのですが、サービス運用において難しいのは「作ること」より「再現性を担保してマップを量産すること」です。
その理由は大きく2つで、施設ごとに環境や条件が異なる(例:人混み、設置物、通路幅、レイアウト変更)ためと、現場ではエンジニアが常駐できないためです。
マップ作りが「職人作業」になってしまうと、サービス提供拠点が増えるにつれ、運用が破綻する可能性が高まります。 そこでWHILLでは、エンジニアが介在しすぎないマッピングを目指し、機体のモード切り替えによって、CX(カスタマーサクセス)や現場メンバーでもマッピングできる仕組みを整えています。
センシング品質を"運用で"保つための3つの改善
自己位置推定の精度は、マップだけでなくセンサーデータの品質にも大きく依存します。WHILLの機体は量産され、すでに世界中で稼働しているため、重要なのは初期性能よりも、運用中に品質を保ち続けられるかです。
量産機体では、センサーの微小な取り付け誤差や経年変化、環境差によって想定外の挙動が起こりえます。これらを現地対応で吸収するのではなく、仕組みとして解決することが、商用サービスでは不可欠です。
そこで、センシング領域では次のような機能を構築しています。
①傾き推定機能
センサーの取り付け角のわずかなズレが挙動に影響するため、センサー自身がズレを推定できる仕組みを実装しました。

②診断機能の拡張
異常が起きた際に原因を切り分けられるよう、WHILL独自のカスタムドライバを開発。センサーの状態を詳細に把握・診断できるようにしています。
③ファームウェアOTA
運用を通じて必要になる改善を止めないため、遠隔からファームウェアを更新できるOTA機能を整備しました。

これらのシステムは、世界中で自動運転サービスを継続的に提供するという一点に向けて設計されています。グローバルに展開するWHILLでは、現地で人力に頼ることよりも、最初から、持続可能な運用を見据えた構造を創ることに価値があります。
私はその構造を、技術として形にすることに取り組んでいます。
常に「現場に求められる価値」を実装し続けている肌感と使命感
WHILLの仕事は、毎日楽しいです。なぜなら、日々の開発が、世界中の現場から求められている価値提供につながっていると実感できているから。
サービスが提供されているシカゴやシアトル、デトロイトの空港へ出張で赴くと、行き交うお客様にたくさん話しかけていただけますし、実際にサービスを利用している方も多くお見かけします。老夫婦そろってウィルに1台ずつ乗っていたり、一人が乗って同行者は一緒に顔を見ながら移動していたり。
ただ、実装して終わりではなく、現場や社会から求められている価値を常に提供し続けることが求められています。
サービスを使ったお客様や空港オペレーターの声、現場のデータなどが、CXや営業のメンバーを通じてエンジニアにフィードバックされるのですが、これらは私たちにとって非常に重要な財産です。
新たなマーケットにこれまでにないサービスを投入するということは、正解も不正解もないがゆえに、不確実性を伴うものです。前例も手がかりもない中、何が本当に求められているのか?なぜ必要なのか?と問い続け、その答えを現場から見つけるほかありません。WHILLのエンジニアチームは積極的にCXや営業のメンバーとコミュニケーションを取り、フィードバックをもらう姿勢をとても大事にしています。

ハードもソフトもクラウドも、企画・開発・実装も内製できるチームで、提供価値の最大化へ
ロボットビジネスの難しい理由の一つは、ハードウェアの制約とソフトウェアが持つ改善スピードにギャップがあること。この課題に向き合えている最大の強みは、ハードウェアもソフトウェアも、クラウドもすべてWHILLで内製している点にあります。そんな企業はそう多くないと思います。
ハードウェアを自社開発しているからこそ、その制約を正しく理解した上で、ソフトウェア側で補ったり、ハードウェア設計そのものを見直したりする選択肢が取れるのです。上述のセンシングの改善もその一例です。
また、世界中の空港や施設でサービスを提供する中で、「荷物を置きたい」「もっと安全に障害物を避けたい」「お客様の到着をお出迎えさせたい」といった多様な要望が現場から寄せられます。
WHILLではそうした要求に対し、ハード・ソフト・クラウド上のいずれかの制約に縛られることなく、最適な手段を選び、企画から設計、開発、実装まで一気通貫で形にできる環境が整っています。このチームのおかげで「現場に本当に求められる価値」を基準に、プロダクトを進化させ続けられています。
私はこの積み重ねがいつか「人間が提供していたサービスよりも、ロボットに任せた方が良いね」というパラダイムシフトにつながると信じています。
WHILL自動運転サービスは、これまでスタッフによる人力での移動介助サービスをロボットに置換することで、限りある人的リソースの省力化を実現しています。

北米ではこの転換が少しずつ定着・浸透しつつあるものの、現状はWHILLの自動運転は人が歩くスピードより遅く、地域によっては、いまなおオプションとして利用される傾向もあります。

「人が押すより、ロボット化する方が便利だし早い」に変わる臨界点。
技術で、人間が提供しているサービスを超えていくことをこれからも目指し続けます。
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