見出し画像

浮気しない人を称賛するあほ構造② 我慢を愛と呼ぶ人たち

浮気しない人を称賛するあほ構造① 浮気しない人は人格者なのか


前回、私は「浮気しない人=人格者」

みたいな空気に違和感がある、

という話を書いた。

すると、

ある人からこんなことを言われた。

 

「みんなは相手を傷つけない誠実さを褒めているんだよ」

 

なるほど。

確かにそうかもしれない。

 

コメント欄の人たちは、

人格認定をしているつもりではなく、

相手を傷つけないことを称賛していたのかもしれない。

 

でも私は、

そこで別の疑問が浮かんだ。

 

なぜ浮気は、人を傷つけることになるのだろう。

 

もちろん、

浮気されたら悲しい人はいる。

怒る人もいる。

苦しい人もいる。

 

それは分かる。

 

私だって、

パートナーが別の女性とイチャイチャしていたら、

普通に悲しいと思う。

 

腹も立つと思う。

 

「なんやねん」

とも思う。

 

でも、

なぜそこから、


私は傷ついた。


あなたが私を傷つけた。


私の価値を下げた。


あなたが悪い。


みたいな流れになるのだろう。


私はその感覚がよく分からない。

 

悲しい。

 

寂しい。

 

腹が立つ。

 

それは分かる。

 

でも、

傷つけられた。

 

と言われると、

なんか違う。

 

だって、

パートナーが別の女性を好きになったとして、

 

私の魅力がなくなるわけでもない。

 

私という人間が壊れるわけでもない。


私という存在価値まで持っていかれたわけじゃない。

 

だから私は時々、

不思議になる。

 

なぜ人は、

そんなに簡単に他人へ、

自分を傷つける権利を渡すのだろう。

 

よく、

浮気された人の話を聞くと、

こういう言葉が出てくる。

 

裏切られた。

 

選ばれなかった。

 

負けた気がした。

 

自信を失った。

 

価値がない気がした。

 

でも私は、

その言葉を聞くたびに思う。

 

本当に相手が奪ったのだろうか。

 

それとも、

もともと相手に預けていたのだろうか。

 

自信を。

 

価値を。

 

存在の安全を。

 

私は昔から、

人に採点権を渡すのが苦手だ。

 

だから、

相手が私を選ばなかったとしても、

 

「そうなんだ」

 

とは思う。

 

悲しいかもしれない。

 

寂しいかもしれない。

 

でも、

それで私の点数が下がる感覚がない。


むしろ私は、

なぜそこまで他人に採点権を渡せるのかが不思議だった。

 

ここで誤解してほしくないのは、

私は

「傷つくな」

と言いたいわけではない。

 

人間だから、

傷つくことはある。

 

好きな人が離れたら悲しい。

 

関係が終わったら苦しい。

 

期待していた未来がなくなったら寂しい。

 

それは自然なことだと思う。

 

でも私は、

 

「傷ついた」

 

と、

 

「傷つけられた」

 

は、

同じではない気がしている。

 

前者は体験だ。

 

後者は解釈だ。


この二つは、

案外遠い。

 

その間には、

たぶん色々なものが挟まっている。

 

私は特別でいたかった。

 

私は選ばれていたかった。

 

私は唯一でいたかった。

 

私は捨てられたくなかった。

 

私は比較されたくなかった。

 

私は約束が絶対だと思っていた。

 

そういうものが揺れる。

 

その揺れが苦しい。

 

でも、

その苦しさを全部、

相手が作ったものとして扱う感覚には、

少し違和感がある。

 

私は時々、

「傷つけられた」

という言葉を聞くと、

その人の状態を見てしまう。

 

それは被害の報告というより、

相手に人生の採点権を渡した告白にも聞こえるからだ。

 

そして私は、

もう一つ不思議なことがある。

 

なぜ恋愛だけ、

こんなにも所有の匂いが強いのだろう。

 

私はもはや、

恋愛に所有感覚があまりない。

 

所有したいとも思わない。

 

所有されたいとも思わない。

 

所有されているとも思わない。

 

だから、

 

「私だけを見て」

 

という感覚が、

正直あまり分からない。

 

私だって、

素敵な男性が現れたら、

 

「どんな人なんだろう」

 

と普通に興味がわく。

 

ワクワクもする。

 

人間だから。

 

だからこそ、

パートナーが別の女性に興味を持っても、

そんなに不思議ではない。

 

世の中、魅力的な女性は沢山いる。

 

もちろん、

それで関係が終わることはある。

 

話し合いになることもある。

 

腹が立つこともある。

 

でも、

興味を持ったこと自体を、

異常だとは思わない。

 

むしろ私が嫌なのは、

欲望そのものではない。

 

検証されていない理想化の方だ。

 

例えば、

目の前に魅力的な女性がいたとする。

 

でも、

「今の彼女がいるから」

で、何も起こさなかった。

 

すると時々、

その女性は脳内で神格化される。

 

もしかしたら最高だったかもしれない。

 

もしかしたら運命だったかもしれない。

 

もしかしたら今の彼女より良かったかもしれない。

 

でも、

付き合ってみたら、

価値観が合わないかもしれない。

 

会話がつまらないかもしれない。

 

相性が最悪かもしれない。

 

そもそも相手が自分を好きじゃないかもしれない。

 

つまり、

何も分からない。

 

なのに、

現実は知らないまま、

可能性だけが美化される。


「あの女性の方が良かった」

 

私はあれが嫌だ。

 

比較するなら、

ちゃんと比較してほしい。

 

実物も見てない。

 

運用もしてない。

 

欠点も知らない。

 

それなのに、

「あっちの方が良かったかも」

はフェアじゃない。

 

だから私は、

「私がいるから欲望を抑圧してください」

より、

 

「欲望があるならちゃんと見ろよ」

 

の方が近い。

 

その上で選べばいい。

 

だって、

友達は比較する。

会社も比較する。

住む場所も比較する。

服も比較する。

人生のほとんどの選択は比較の上にある。


なのに恋愛だけ、

比較した瞬間に愛がない

になる。


人間はみんな代替不可能だ。

けれど、

選択は比較の上で行われるものだと思う。


私は、

比較した上で選ばれた方が納得できる。

 

そして、

ここから先は、

かなり嫌なことを言う。

 

もしかすると、

私たちが愛と呼んでいるものの中には、

所有や恐怖や抑圧が混ざっているのではないか。

 

私が傷つくから、

あなたは欲望を抑圧して生きてください。

 

他の異性を見ないでください。

 

他の異性に惹かれないでください。

 

他の可能性を考えないでください。


私だけを見てください。

 

そして、

その抑圧が守れたことを、

愛と呼びましょう。


私にはどうしても、

それが愛には見えない。


我慢を愛と呼ぶ遊びに、

あまり参加したいと思わない。

 

人間は不思議だ。

 

欲望がない人より、

欲望を我慢している人を評価する。

 

そして、

我慢の量を、

愛の深さとして換算する。

 

私は時々、

 

「私は絶対浮気しません」

 

という言葉を聞くと、

誠実さより先に、

自己認識の方が気になってしまう。

 

欲望もある。

 

迷いもある。

 

他人に惹かれることもある。

 

気持ちが変わることもある。

 

それなのに、

まるで人間を卒業したみたいに、

 

「絶対浮気しないから大丈夫です!」

 

と言われると、

逆に、

「大丈夫?」

と思う。

 

私はむしろ、

 

「私にも欲望はあります」

 

「他の人を好きになる可能性もあります」

 

「その時はちゃんと向き合います」

 

と言う人の方が信用できる。

 

欲望がない人ではなく、

欲望があることを知っている人。

 

その上で、

どう生きるかを選んでいる人。


私はそっちの方に、

誠実さを感じる。


相手を所有物として扱っていない。


お互いに自由でいられる。


私はそんな人と一緒にいたい。

 

そして最後に。


たぶん私は、

人間をあまり信用していない。

 

もちろん嫌いなわけじゃない。

 

でも、

人間なんて当てにならないと思っている。


私自身、

私が当てにならないことを一番理解している。

 

気持ちは変わる。

 

欲望も動く。

 

判断も揺れる。


あほなことをする。

 

だから私は、

誰かに裏切られない前提で生きているわけではない。

 

相手が永遠に変わらないと思っているわけでもない。

 

そんなことは、

最初から期待していない。

 

だから、

傷つくことはあっても、

壊れはしない。

 

悲しいことはあっても、

価値までは渡さない。

 

人間なんて、

そもそも当てにならない。

 

だから私は、

誰かに裏切られないことを信じているのではなく、


そんなことで傷つけられるなんて、


自分を安く見積もっていない。





いいなと思ったら応援しよう!