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小説『ワンダリングノート・ファンタジー』(35)弱気になって

Chapter35


『もう一度聞く。お前はそこで何をしている?』

 レナは怒気を帯びた男の迫力に圧倒され、彼女の中の「自信」が萎縮していくのを感じた。途端に体が重く沈み込むようになり、気がつけば学生服を着た元の姿に戻っていた。その変化を目撃した男は何かに気づいた様子で、自身の後ろを振り返り、腑におちない素振りを見せた。

『そこに倒れていた娘がいつの間にか消えている。そして池に浮かんでいたのは幼女だったが、今この瞬間に制服姿の娘へと姿を変えた。ふむ、面白いな』

 信じる力の源は「自信」であり、それを一瞬でも失った彼女の身には魔法が解けたかのような変化が起こり、以前の浮力が奪われてしまった。金色の斧は突然重くなり、レナは自身の泳力のみに頼って必死に体勢を保っていた。

「弱気になったから、その瞬間にこの世界の法則が解けてしまった!?」

 レナは落ち着きを取り戻そうと試みたが、この異常な状況と水中でのプレッシャーが重なり、集中力を維持するのが難しくなって焦りを感じた。それでも、金色の斧を手放さず懸命に泳ぎ堪えていた。

『おい、なかなか興味深い展開だと思わないか? お前はこれをどう考察する?』

 男は釣り竿の男性に向かって問いかけた。

「は⋯⋯はあ、そうですね⋯⋯ええと、彼女は何か不思議な力を持っていて、その⋯⋯そこに倒れていた彼女と、池に浮かぶ少女は同一人物?」

『池から浮き上がってきたのは、最初は幼い子供だったぞ? それが今や、成長した娘の姿だ。なるほど、お前はこう言いたいわけだ。その娘はある能力を隠していたが、お前はそれを見抜き、娘にこの世界の秘密を少しばかり漏らしてしまう。娘はそれを理解し、何か見事な力を発揮して自身の才能に驚く。歓喜した彼女は尊敬の眼差しでお前のことを見つめながらこう言う。「私、あなたに一生ついて行きます」とな』

「え? まさか⋯⋯なんですかその唐突な展開は? その子はまだ学生ですよ? 私はそんなシチュエーションはお断りですね。はは、ちょっと愉快ですが」

『愉快か? では、その「設定」で行こう』

 男はレナの方へ左腕を伸ばし、手のひらを大きく開きながら呟いた。


『セカンド・ミラー』


「何? ⋯⋯きゃあっ!!?」

 その言葉は彼女がこれまで体験したことのない鈍い重低音となり、こだまのように周囲に響き渡った。空気が震え、その衝撃が池の水面を稲妻の如く走り抜けた。水上でもがいていたレナの目の前で激しい波飛沫の壁が形成され、それが霧散して消え去ると、その場所には立派な装飾が施された「大きな鏡」が突如現れた。

「え!? この鏡はどこから!?」

そこに映ったのは、水色のワンピースを着て、白いおにぎりのぬいぐるみを浮き輪代わりに抱えている幼い自分の姿だった。その姿を訳もわからず見つめていると、鏡はひび割れて粉々に砕け散り、レナは一瞬のうちに男のいる池のほとりまで吸い寄せられた。


What!? Where did this mirror come from!?


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