エッセイ:「宮崎駿は遠い親戚なのよ」ある日、母はそう言った
どうも、たろうtheグレートです。
ある日、母が言った。「宮崎駿は遠い親戚なのよ」
僕がまだ小学校に上がる前のことだ。
スタジオジブリは今ほど有名ではなく、当時「宮崎駿」の名前を知ってる人はほとんどいなかった。
半年後に「となりのトトロ」が公開をされるぐらいの時期だったと記憶している。
僕は当時、ピアノ教室に通っていた。
母に無理やり通わされていたのだ。「男の子でピアノが弾けたら素敵じゃない」との理由からだ。
でも僕は全くピアノに興味がなく、音感やリズム感もゼロ。
当然やる気もない。
ただ残念なことにピアノ教室の先生はとても厳しい人だった。
仮に名前を「ミホちゃん」としよう。
ミホちゃんは音大を卒業したばかりで、とても綺麗と評判だった。
僕にはただただ恐ろしい先生だった。
レッスン中、とても細い竹の棒を持っていた。
ピシッ!ピシッ!と!…詳しくは書かなでおこう。昭和という時代背景があったからこそ、だったのだろう。とにかくミホちゃんは怖かった。
僕は時より、レッスンから脱走した。
ミホちゃんが後ろを向いた隙に急いで教室から逃げ出す。
ピアノ教室は建物の2階にあり、1階はたこ焼き屋だった。
習いごとへは母の送り迎えで来ている。あたりにはその建物しかない。
ここは陸の孤島。逃げ場など最初からないのだ…。
行くあてもなく、たこ焼き屋のベンチに座っていると、案の定、僕はミホちゃんに連れ戻されるのだ。
そんなに嫌ならやめたらいい、そう思いませんか?
ところがどっこいなのだ。
ミホちゃんは母姉の親戚にあたり、無理を言ってレッスンをお願いしている。困ったものである。
そんなある日、母が言った。
「ミホちゃん今度結婚するの、ピアノ教室やめちゃうんだって」
僕は心の中でガッツポーズをした。
さらに母は続けた「宮崎駿って言うアニメの監督も来るらしいわよ」
「ミヤザキハヤオ? アニメノカントク?」
母の話によると、ミホちゃんの親戚にいるアニメ監督が「となりのトトロ」という映画を作ったらしい。
母と母の姉、母姉の娘、そして僕の四人で「となりのトトロ」を観に行った。僕たちは興奮し、とても誇らしい気持ちになった。
そして迎えた「ミホちゃん」の結婚式当日。
風が強く、よく晴れた日だった。暑くも寒くもない。心地いい天気。
素敵なチャペルでの結婚式。
ウエディングドレス姿の先生を見て、僕は初めてミホちゃんって美人なんだと思った。
式が終わり、母がカメラを手に言った。
「宮崎監督と写真撮ってもらおう」
あんな素敵な映画を作った人に会えるんだ!
僕は声をあげて喜んだ。
そして尋ねた。
「お母さん、顔わかるの?」
「お母さん、顔わかんない」
「……!?」
母は僕の手を引き、礼服姿のたオジサン集団の元へ走っていった。
我が家のアルバムには、幼い僕が礼服姿の知らないオジサンと手をつないでいる、いくつかの写真がある。
いいなと思ったら応援しよう!
ありがとうございます!チップはよりいいnoteが書けるよう、経験に使わせて頂きます。