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新築アパートを建ててみた記録。賃貸営業の経験を活かしたのに、思い通りにいかないことだらけだった

中古物件を中心に不動産投資をしてきた夫が、2023年に初めて挑戦した新築アパート。
土地探しから完成まで、実はスムーズに進んだことの方が少なかったように思います。

良さそうな土地が見つかっても簡単には買えなかったり、こだわって伝えたはずの間取りがうまく形にならなかったり、着工してからも予定外のことが次々と起こったり。

今回は、そんな新築アパートが完成するまでの道のりを、当時の記録をもとに振り返ってみたいと思います。

中古物件を買いたかった夫が、新築アパートに向かった理由

中古物件を中心に不動産投資をしてきた夫。

利回りを重視し、自己資金の回収をできるだけ早くしたいという考えから、最初は現金で戸建てを購入しました。
その後は中古アパートへと、少しずつ買い進めていきます。

ところが、中古アパートへの融資はだんだん厳しくなっていきました。
耐用年数が切れていたり、空室が多かったりする物件には、融資がほとんど下りなくなってしまったのです。

しかも、夫が欲しいと思うような高利回りの物件は、たいていそうした条件に当てはまるものばかり。
「自分が欲しい物件」と「銀行が貸したい物件」の間には、大きなギャップがあったといいます。

それでも不動産を買いたい気持ちは収まらず、選択肢に入ってきたのが木造の新築アパートでした。

とはいえ、低価格帯の中古しか手がけてこなかった夫にとって、新築は金額も自己資金も大きくなるものというイメージがありました。
物件価格の2割が自己資金の目安だとすると、6,000万円の物件なら1,200万円が必要になる計算です。
「さすがに無理だろう」と、はじめは選択肢にも入れていませんでした。

そんな折、すでに新築アパートを建てていた知人からこんな話を聞きます。

「担保評価次第だけど、土地を自分で用意できれば、建物のほうは融資してもらえることが多いよ。自分もそうだった。自己資金は1割くらいだったかな」

漠然と「いつか新築もいいな」と思っていた程度だった夫にとって、この一言は思いのほか大きな後押しになったようです。

もちろん、中古と新築では購入金額そのものが違います。
借入額が大きくなれば返済比率も上がりますし、固定資産税も中古より高くなります。

家賃収入が増えても手元に残るお金はかえって少なくなるのではないか、という不安もあったそうです。

この点についても、知人から具体的なアドバイスをもらいました。

金融機関によっては、一定期間、元本の返済を猶予してもらえる場合があること。
新築は固定資産税が高くなりやすい一方で、設備が新しい分、当面のメンテナンス費用は抑えやすいこと。

実際に新築アパートを建てた人の話を聞くうちに、夫の中で「新築アパート」という選択肢が一気に現実味を帯びていきました。

良い土地は、見つけても簡単には買えない

新築アパートに踏み切ることを決めた夫が、まず取りかかったのは土地探しでした。

正確には、その前にアパートメーカーを決めています。大手ハウスメーカーは利回りが低くなりすぎるため候補から外し、地元の木造ローコストメーカーの中から、大家さん仲間の評判が良く、土地探しや融資付けまでサポートしてくれる会社を選んだそうです。

アパートメーカーが決まると、いよいよ土地探しが始まりました。

夫が意識していたのは、土地値が安く、ある程度の家賃が見込めるエリアを選ぶこと。

賃貸営業の経験から、家賃相場はある程度わかっていました。
家賃が安く見えるエリアの中にも、実は築浅物件が少ないために家賃が下がりにくい「歪み」があることに目をつけていたそうです。

土地は、アパートメーカーからの紹介と、不動産ポータルサイトを自分でひたすらチェックする方法の両方で探していました。
しかし、良い土地はなかなか一筋縄では手に入りません。

最初に見つけたのは、約120坪の変形地。
坪単価3万円と安く、初めての新築にはちょうどいい条件でした。

ところが、一緒に新築に挑戦していた仲間に相談したところ、そのうちの1人も同じ土地に目をつけていたことが発覚。
しかも相手は夫にとって先輩にあたる人でした。

話し合った結果、決着はまさかのじゃんけん。
3回あいこの末、夫が負けて土地は先輩の手に渡りました。

気を取り直して見つけた2件目は、約120坪の長方形の宅地。
前回より立地も良く、間取りの自由度も高い土地でした。

しかし見積もりを取ってみると、建築費が予想より1割ほど高いことが判明。
その土地が準防火地域にあり、建築に規制がかかることが理由でした。

すぐに判断がつかず数週間悩んでいるうちに、土地は別の買主のもとへ……。

しかもこの後、ウッドショックによる資材高騰で建築費はどんどん上がっていったため、「あのとき悩まず決めていれば」という思いが残ったそうです。

2件続けて逃した後、条件を「予算600万円程度、広さ100坪以上」と定め直し、探し続けました。

そしてある日、不動産会社のサイトで見つけたのが約180坪、530万円の旗竿地。
しかし指値交渉の返事を待つ間に、売り止めとして情報が削除されてしまいます。

また、買えなかった……。

あきらめかけていた矢先、数日後にその土地が別の業者から350万円で再掲載されているのを発見。

見つけたのは、夜11時。
居ても立ってもいられず、翌朝7時半に電話をかけ直し、その日のうちに買付証明書を提出しました。

半年以上ポータルサイトを見続けていたからこそ、即座に判断できたといいます。

ただし、この時点ではまだ、アパートメーカーに「この土地に建物が入るかどうか」の確認は済んでいませんでした。

賃貸営業の経験を、間取りと設備に詰め込んだ

土地が決まり、次はいよいよ間取りと設備の検討です。
ここで夫が頼りにしたのは、日々賃貸営業として物件を案内してきた経験でした。

まず考えたのは、8戸すべてを同じ間取りにしないこと。
同じ間取りが並んでいると、内見する側は「まだ空いているから急がなくていい」と感じやすく、決断が先延ばしになりがちです。

逆に、タイプごとに少しずつ違いをつければ、「このタイプは1部屋しかない」という希少性が生まれて入居の決め手になると考えたそうです。

木造という構造上避けられない騒音の問題には、全室角部屋にすることで対応しました。
さらに、水回りや収納をできるだけ隣室との接する面に集め、少しでも音の伝わりを抑える工夫も加えています。

収納はウォークインクローゼットにしました。
エリア内ではすでに標準設備になりつつあり、ここを外すとお部屋探しの候補から外れてしまう可能性が高いと感じていたためです。

また、共用部分は広くせず、その分居室を広く取ることで専有面積を確保し家賃を狙える設計にしました。

このエリアならではのこだわりが、バルコニーではなくサンルームをつけること。
冬は雪が多く、外に洗濯物を干せない日も多い土地柄です。
室内干しができるサンルームは、暮らしやすさの面でも他の物件との差別化という意味でも、外せない設備だと考えたそうです。

あわせて、地方の木造アパートでは珍しいエントランスのオートロックも導入を決めました。

最後まで悩んだのが、キッチンです。

壁付けにすれば、リビングを広く使えます。
一方で、対面キッチンにするとリビングは少し狭くなります。

それでも夫は、対面キッチンで進めることにしました。
これまで多くの入居希望者を見てきた中で、「対面キッチンを望む人の方が多い」という実感があったからです。

こうして、賃貸営業マンとしての経験のすべてを詰め込んだ要望をアパートメーカーに伝えたのですが……。

こだわったつもりの間取りが、うまく伝わっていなかった

購入を決めた土地は、旗竿地。
そもそも希望する建物が入るかどうかも最初ははっきりしていませんでした。

旗竿地のイメージ

アパートメーカーに確認してもらったところ、「間口が狭く、難しいかもしれない」とのこと。
一時は不安もありましたが、最終的には無事に建築可能と判断され、ようやく間取りの詳細を詰められる段階に入りました。

夫がアパートメーカーに伝えていた要望はシンプル。

  • 駐車場が1台しか確保できないなら単身向けの1K

  • 2台確保できるならカップル向けの1LDK

  • どちらにしても、サンルームをつけてほしい

というものでした。

ところが、約1か月後に提案された間取りは、駐車場が1台しか確保できないカップル向けの1LDK。しかもサンルームはついていません。

伝えた要望が、まったく反映されていなかったのです。

土地の広さを考えれば、大きい間取りを提案したくなる担当者の気持ちも分からなくはありません。
ただ、夫はこのエリアで賃貸営業をしてきた経験から、駐車場が1台しかない築浅のカップル向け1LDKは客付けに苦戦しやすいことを知っていました。

口頭で伝えたのが良くなかったのかもしれない。
今度は「サンルーム付き1K」と紙に書いて改めて要望を伝え直しました。

しかし、さらに1か月後に出てきた間取りは、まさかのサンルームなし1LDK。
今度は要望が1つしかなかったにもかかわらず、その1つすら反映されていませんでした。

さすがに理由を確認してもらったところ、営業担当者はきちんと要望を設計担当者に伝えていたものの、設計担当者が「この間取りの方が絶対にいい」と判断して独自の提案をしていたことが分かりました。

実際、出来上がった間取りそのものは、夫から見ても納得できる部分がありました。
希望とは違うものの、土地の形や建物の収まりを考えると悪い内容ではなかったそうです。

ただ、事前にその経緯を教えてもらえていれば、もう少し受け止め方は違ったかもしれません。

最終的に、間取りはおおむねこのまま進めることにしました。

ただし、サンルームだけは譲れませんでした。

冬は雪が多く、外に洗濯物を干せない日も多い地域です。
全部屋には入れられなくても、できる限り多くの部屋にサンルームを設けてほしいという要望だけは改めて伝えました。

ブルーオーシャンのはずが、着工後に競合が急増

間取りも固まり、あとは完成を待つばかり。
そう思っていた矢先、夫のもとに1本の連絡が入りました。

夫の勤める会社と付き合いのある不動産会社の担当者からで、「うちの管理物件が新築されるので、ぜひご紹介お願いします」という内容でした。
夫が建てる新築アパートと、同じエリアです。

何部屋くらいの物件なのか尋ねると、返ってきた答えは想像以上でした。

「何棟かあって、総数でいえば60世帯くらいです」

夫が新築を計画していたエリアは、賃貸営業としての経験から、単身向けの築浅物件が少ないと見込んでいた場所でした。
特に、エントランスオートロック付きの物件はほとんど出回っていません。

土地値の割に家賃が取れる。
夫にとっては、ブルーオーシャンのはずでした。

ところが、話はそれだけでは終わりません。

この不動産会社は数か月前にも同じエリアで新築物件を約40世帯供給していたことが分かりました。
合わせると半年ほどで同じエリアに100世帯以上が新たに供給される計算になります。

しかも、入居者層が夫の物件と重なりやすい1LDK。
夫が見込んでいた市場は一瞬でレッドオーシャンに変わってしまいました。

過去の建築実績や供給数を調べ、入念に市場分析をしたつもりだった夫。
「自分が良いと思うエリアは、他の人も同じように良いと思う」という視点が抜け落ちていたといいます。

ウッドショックによる建築費高騰で家賃が上げにくい状況の中、土地の安いエリアに他社の目も一斉に向いていたのかもしれません。

夫がこのエリアで新築を計画し始めたのは、当時からさらに2年ほど前のことでした。
その時点では、確かに供給の少ないエリアでした。

ただ、思い立ってから実現までに時間がかかった分、周辺の状況も変わってしまったのです。

しかも、競合の急増を知ったのはすでに建築確認申請も終えたあと。
間取りや規模といった大きな部分を変更する余地は残されていませんでした。

変えられるとすれば、設備くらい。
そこで夫は、ライバル物件にはない差別化ポイントとして、エントランスオートロックの導入をあらためて重視することにしました。

このエリアでは、大手アパートメーカーが手がける物件でもオートロックを備えたものは少ない。
同じ賃料で戦うならここで差をつけるしかないと考えたのです。

思い描いていた「勝てるエリア」ではなくなってしまったものの、もう計画を大きく変えることはできません。
できる範囲で対策をしながら、完成に向けて進んでいくことになりました。

完成直前まで、予定通りにはいかなかった

内装の打ち合わせも終わり、あとはスケジュール通りに工事が進むはず。
そう思っていた矢先、着工後に新たな問題が起こりました

「もともと予定していたキッチンが入らないので、小さいキッチンに変更します」
と、施工会社の営業担当者から連絡が入ったのです。

当初1800mmで計画していたキッチンが8部屋中4部屋で収まらず、1650mmに変更するというのです。

その場では「仕方ないですよね」と、しぶしぶ受け入れたそうです。
けれど、家に帰ってからも引っかかっていました。

実は、以前新築した自宅の賃貸併用住宅でも当初の仕様と違うものにされかけたことがあり、「またか」という思いがあったからです。

やはり納得できなかった夫は、改めて施工会社に交渉することにしました。
壁の厚みを調整するなど、何か他に方法はないか検討してほしいと伝えたのです。

後日、施工会社から回答がありました。
「壁の厚さを調整して、2部屋は予定通りのキッチンが入ることになりました。残り2部屋は、構造上どうしても難しいです」

4部屋すべてが小さいキッチンになる予定だったところから、2部屋は当初の計画通りになりました。

それでも、完全に納得できたわけではありません。

とはいえ、営業担当者とは普段から良い関係を築いていました。
強く言いすぎれば、今後の関係に影響するかもしれない。

けれど、5,700万円という借入をして建てる以上、簡単に「それでいいです」とも言えない。

そこで、「小さいキッチンになる2部屋は、代わりにキッチンを広く使える工夫はできないか」と交渉を続けました。

最終的に、キッチンのサイズはそれ以上変更できないものの、代わりに玄関収納を少し広いものに変更してもらうことで折り合いがつきました。

施工会社にとっては、1800mmが1650mmになる程度の違いは大した話ではなかったのかもしれません。
しかし、大きな借金をしてアパートを建てる側からすれば、できる限り思い描いた通りに仕上げたいと思うものです。

予定通りにはいかなかったものの、交渉したことで最終的には納得できる形に近づけることができました。
間に入って妥協点を探ってくれた営業担当者には、感謝の気持ちも残ったそうです。

完成後も一筋縄ではいかなかった入居者募集

アパートが完成しても、入居者が決まらなければ意味がありません。
夫は、賃料設定から慎重に考えていました。

このエリアの賃料相場は、家賃52,000円~55,000円、共益費3,000円~4,000円、駐車場3,000円~4,000円ほど。
合計すると58,000円~63,000円くらいの水準でした。

中でも重視したのは「賃料」です。
賃貸情報サイトでは、5,000円単位で家賃を絞り込む人が多い。
そのため、54,000円ではなく55,000円に設定した方が、より幅広い層の検索結果に表示されやすいと考えました。

この考え方をもとに、賃料は55,000円に決めました。

初期費用については、敷金0か月、礼金2か月に設定。
敷金を0にしたのは、管理会社が指定する保証会社で退去時のクリーニング費用まで補償される仕組みがあったためです。

礼金はオーナーの収入になる部分なので、本音を言えばできるだけ多く取りたいところ。
法人契約の需要も見込めるエリアだったことから、強気の設定にしました。

ただし、仲介スタッフには「礼金1か月分は交渉材料として使っていい」とあらかじめ伝えていたそうです。

繁忙期に間に合わせるため、建物は2月末に完成。
完成前の1月下旬にはすでに2部屋の申し込みが入っていたこともあり、内見が始まればすぐに決まっていくだろうと考えていました。

ところが、完成から1週間経っても、申し込みの連絡は入りませんでした。

2月から3月という繁忙期を逃すと、今の家賃帯で探す人自体が減ってしまう可能性があります。
そうなれば、家賃を下げざるを得ないかもしれません。

焦った夫は、仲介を依頼していた店舗の店長に「賃料を1,000円下げよう、礼金も1か月にしよう」と提案しました。

ところが、この提案をした直後、賃料も礼金もまだ変更していない条件のまま、申し込みが入ったのです。
動きがなかったのは、単に夫が焦りすぎていただけでした。

慌てて「やはり元の条件に戻してください。交渉幅としては使っていいので」と伝え直したといいます。

賃貸営業として、繁忙期の動きは分かっていたはずです。
それでも、自分がオーナーとして空室を抱える立場になると、たった1週間の空白でも落ち着いてはいられなかったのだと思います。

土地探しから間取り、着工後の仕様変更、そして完成後の入居者募集まで。
初めての新築アパートは、最後まで思い通りに進むことばかりではありませんでした。

それでも、その都度考え、交渉し、時には妥協しながら、無事に満室までたどり着くことができました。


最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。

今後もnoteマガジン「地方で賃貸営業と大家さんをする夫の話」で、北陸地方で賃貸営業をしながら不動産投資をする夫の話を更新していきます。

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