選挙はエンタメ、そして人生。台湾ドラマ『WAVE MAKERS〜選挙の人々』(人選之人〜造浪者)
こちらのnoteで紹介されているのが気になって、ずっと見たいと思いつつ、気がつけば2年以上たってしまいました。ようやく見ることができました。感無量……
台湾の選挙はすごく興味があります。なんせ、一番最初(史上初)の総統選挙のときに、ちょうど台北で生活してたので。あのときの熱気は本当にすごかったし、中国がミサイルとばすし。日々選挙に揺れて、街中がお祭り騒ぎでしたっけ。
でも、Netflixのドラマになるってことは、かなりドロドロした政治的な部分があるんだろうからと、ちょっと身構えていたのですが、コメディ寄りで驚きました。もっと早く見ればよかった。しかも、少しミステリー要素もあって、エンタメでした。
主人公を演じる役者さんはシェ・インシュエン(謝盈萱)。地方議員の父を継ぐはずだった兄が亡くなり、公正党の候補として地方選挙に出て落選。野党「公正党」の広報部で働いています。

私は多分、彼女のドラマを初めて見たと思います。すっごくはまり役でした。ちょっと神経質そうで、融通がきかなくて、でも1本筋が通っている役がぴったり。個性的な感じが好感度高いです。
そして、彼女の上司、公正党広報部長役はファン・ジェンウェイ(黃健瑋)。彼は小説『台北裁判』のドラマ版『八尺門の弁護人』で、すっごく脂ぎった与党の政治家役がハマってたので、その落差にびっくり。
今回は、家庭と仕事の両立に悩む若干影の薄いパパ(しかも妻に棄てられかける)ってことで、正反対の役柄がやっぱりすごく似合ってました。演技の幅がすごいんですね。

そして、与党の総統候補役のレオン・ダイ(戴立忍)。若い頃、政治家を志した頃の魅力ある感じ、ワン・ジン(王淨)がうっかり恋におちちゃうのも納得の色気。
かと思うと、不倫していないと娘に嘘をつきとおそうとするときの、大人のズルさ、男のいやらしさったら! 20歳そこそこの賢い娘が、思わず父親に嫌悪感を覚えるシーンは最高でした。いやー、すごかった。見応えありました。

娘役のチェン・イェンフェイ(陳妍霏)は、つい最近見た台湾映画『ひとつの机、ふたつの制服』で主演でした。映画は劣等生役でしたが、ドラマでは英語ペラペラの賢い優等生役。どちらもすごく似合ってました。
ドラマは、父親のやった不誠実を暴露する形になりますが、彼女もまた政治の道に行くんだろうなあというラストシーンが印象的でした。


ドラマは、個人の心情と組織の論理がぶつかるスタートで、「あーどの国でもニンゲンは同じなんだなあ」と思わせられるエピソードから始まります。でも、その後セクハラとか、地方議員や支持者との関係とか。台湾選挙の舞台裏がとっても興味深いです。
政治家個人の信条も、有権者に支持されなければ実現できないところも辛い。難しいです。死刑制度については『八尺門的弁護人』でも出てきましたので余裕済み。ドラマや小説をいくつも見てくると、キーワードがつながります。
台湾らしいエピソードは、SNSやFacebook、youtubeなんかの使い方でしょうか。多分、日本の状況とは全然違気がします。あと、野党「公正党」メンバーの若さとか。台湾でも与党とは年齢差がかなりありそう。
公正党のセクハラ問題は、やがて与党の総統(大統領)候補を揺るがす事態につながっていきます。そのあたりのつなげ方も上手いですし、同性愛とかセクハラとか、家庭内の夫婦関係とか、親子の確執とか。いろんな問題をさりげなく提起している脚本のうまさを感じます。
主人公と彼女をとりまく女性たちの、それぞれの強さとか、シスターフッドも見どころ。ラストはちょっと怒涛の展開で、ソフトランディングすぎるかなあとも思いますが(今の台湾政治の状況を見るとよけいに…)、でも、ドラマくらい楽しく見たいし。
あとは、ドラマで使われる客家語もすごく印象的でした。『茶金~ゴールドリーフ』でも客家語がかなりの割合を占めていた記憶があります。完全に想像ですけど、女性が社会的に活躍するトラマは、客家のほうが自然なのかなあと。
ともあれ、「あ~おもしろかった」と気軽に見れて、しかも、「自分もがんばろう!」って勇気も出てくるドラマは貴重です。しかも、8話で終わるコンパクトさがうれしい。興味のある方にも、ない方にもおすすめです。
題名:選挙の人々(原題:人選之人―造浪者)
監督: 林君陽
主演:謝盈萱、黃健瑋、王淨、戴立忍、陳姸霏ほか
制作:台湾(2023年)8話
