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疾走感は日本の映画由来!?『長安のライチ』馬伯庸(池田智慧訳)

とっても面白かった、映画『長安のライチ』。その原作がようやく入手できたので、わくわくしながら読みました。いつもの馬伯庸小説に比べて、文体が読みやすい(!?)日本語になっているのが不思議でしたが、あとがきを読んで納得。なんと11日間で一気に書き上げた小説だとか。

原作を読む楽しみは、映画を見たあとに物語の解像度を高められること。映画の中の杜甫は、根暗で文学の虫で世渡り下手(by高島先生)じゃなくて、官僚社会の世知辛さを主人公にちゃんとアドバイスできることに違和感感じていたのですが、原作を読んで納得。原作は杜甫の他に、もう一人しっかり者の友人がいて、そっちの方が世渡りアドバイスしてたんですね。映画は、ストーリーをシンプルにすべく、杜甫と別の友人を一人にまとめたと。

ほかで原作と違うのは、白客の演じたイスラム商人が若者じゃなくて、おじいさんだったところ。それから、朝廷ではアンディ・ラウ演じた趙国忠と、宦官の魚朝恩の対立だけになっていたけど、原作ではこれに加えて高力士が出てきて、主人公が見逃される(追放で済む)ことの自然な感じが納得できました。でもまあ、これはほとんど誤差みたいなもの。今回の映画は、原作の再現度が高いんだなあと、改めて驚きました。

ところで、あとがきを読んで驚いたのですが、なんと日本の映画がかなり作者の創作イメージの下書きになっていたとのこと。日本映画の『決算!忠臣蔵』や『引っ越し大名!』、『殿、利息でござる!』とか、『超高速!参勤交代』を見て、中国にも、こういう歴史的な逸話があるはずだと思っていたところに、本書の元ネタを見つけたとか。すごい。

名もない庶民が、金銭的なやりくりに奔走したり、官僚社会や身分社会の狭間で右往左往する日中の物語の共通性(もちろん、フィクションですが、実話ベースでもある)。楽しいですね。大好きな中国の作家さんが、国境を超えて日本の映画にインスパイアされてくれるのもうれしい。私は、時代劇は全然興味ないですが、こんな風に紹介されるとすごく気になってきます。

少し前から、SFなんかで日本と中国の作家さんたちが、翻訳しあったり、一緒にアンソロジー本を出したりしていますが、歴史の物語もそんな交流があったりするとすごくうれしいです。国際政治がともかくひどい状況ですが、せめて文化は国境を超えて、どの国であれ、いい影響を与え合ってくれるといいですね。

というわけで、『長安のライチ』は映画も原作もおすすめです。未読の方はぜひ! 中国のお役所的な面倒くささについての、おもしろい小説はこちら。

中国では、ドラマにもなっているんですね。原作から換算すれば、映画の長さが個人的にはちょうどいい気がしますが……



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