書評|『自分で選んでいるつもり 行動科学に学ぶ驚異の心理バイアス』
行動経済学の本を読むと「なるほど!」と唸らされる瞬間が多いですが、久しぶりに「これは紹介したい」と思える一冊に出会いました。
リチャード・ショットン著『自分で選んでいるつもり 行動科学に学ぶ驚異の心理バイアス』です。
推し活で体験した「反発の心理」
私には長らく「推し」がいました。ところが最近、その気持ちが急速に冷めてきてしまったのです。
なんなら、うっすら嫌いにさえ感じてしまうほどに。
それはなぜなのか、本書の一節に答えを見つけました。
人は「命令される」と反発したくなる。
とくに関係性が強ければ強いほど、「あなたはこうすべき」という強いメッセージを受け取ると、自由を奪われたように感じ、かえって反発してしまうのだそうです。
思い返せば、SNSでよく目にしたのはこんな投稿でした。
「ファンならグッズは買うよね」
「推しが出るまでランダムを引くよね」
「映画公開中はリピートするよね」
「推しが多少不祥事を起こしてもファンなら応援するよね」
やがて推しを神のように崇め奉り、不満を口にすることを許さない雰囲気が広がっていきました。
気づけば、心ある人たちは推しの話を投稿しなくなっていたのです。
そんな状況を目にするうちに、私自身もどんどん気持ちが離れていきました。
「推しは推せるうちに推せ」とはよく言われますが、まさか自分がこんな形で距離を取ることになるとは思いもしませんでした。
小さな言葉の違いが大きな差を生む
本書には、日常生活でも使える心理バイアスの事例が数多く紹介されています。
たとえばオンラインショップで「売り切れ」を表示する際、
「在庫なし」
「取扱不可」
「完売」
この3つの表現を比べると、最もネガティブな反応が少なかったのは「完売」でした。
「人気だから売り切れている」と前向きに受け止められるからです。
言葉を少し変えるだけで、人の心の動きは大きく変わる。これは私自身、実体験としても納得感があります。
もっと活かせるはず
著者ショットンは行動科学を活用するコンサルティング会社を設立し、グーグルやメタなどのマーケティング部門をサポートしているそうです。
すでに海外企業では、こうした知見がビジネスに取り入れられています。
けれど行動経済学の魅力は、ビジネスの世界だけに限りません。
「反発してしまう心理」を理解して人間関係に役立てたり、ちょっとした言葉選びを工夫して日常を心地よくしたり。
この本は、そんなふうに私たち一人ひとりが使えるヒントを与えてくれる一冊でした。
👉 行動経済学に興味のある方はもちろん、「人間の心の不思議をもっと知りたい」という方にもおすすめです。
シリーズで読む
この書評は「読んでよかった本」シリーズのひとつです。
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