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訳あり旅行会社 第1話

<あらすじ>
幼いころに母親の浮気がキッカケで両親が離婚した松本大和(18)。父親と2人で暮らしているが、会う事がなく、食事代だけ渡される生活をしていた。
大和は就職先が内定した日、父親が殺人事件を起こしてしまう。
それで大和の内定が取り消されてしまう。父に腹を立てるが父親は自殺してしまう。
1人取り残された大和への世間の目が冷たく、大和は生きているのが嫌になる。が自殺が出来ずにいると「訳あり旅行会社」という店を見つける。
そこで店員の鳳メグと出会う。そこは訳ありの旅行のみを取り扱っている旅行会社。大和はそこで自殺ツアーを組んでほしいと頼んだ。


古い木造2階建てのアパート。そこの201号が僕の家だ。
部屋の鍵を開けて中に入る。1Kの薄暗い室内。電気をつけると散らかり放題の部屋に明るさが灯った。
机の上に千円札が置いている。僕はしばらく見つめ千円札を無造作にポケットに入れた。

「今日も食事は千円札か。でも、こんな暮らしにはもう慣れていた」

食事はいつものコンビニ弁当。どれも食べたことのあるものばかりでもう飽き飽きしている。だからといって自炊するほど器用でもない。

「小学生の頃、母さんの浮気が原因で両親が離婚。俺は父さんと一緒に暮らす事になった。でも……」

僕は幕の内弁当を手に取りレジに行く。店員は作業するかのように無表情で接客していた。

「父さんと会う事もほとんどなかった。いつも千円渡され好きなものを食べる。ずっとそんな生活だった」

家に戻ってきて、電子レンジで弁当を温める。
なんとなくテレビをつける。画面では女性タレントとお笑い芸人が旅行に行ってレポートをしている。
これはいつものルーティンだった。だからと言って、テレビを見ているわけでもない。だから番組はなんでもいい。

「一緒に住んでいるはずなのに……会う事がない。それは普通になった」

僕はかれこれ一か月は父さんと会っていない。
たまに会う、と言っても家の中ですれ違うだけだ。だから父さんがなんの仕事をしているのか、普段どこで過ごしているのか、を知らなかった。
そして僕自身も、あまり気にしていなかった。

「母さんに裏切られたのがショックなのか、それとも自分の為に時間を使いたいだけなのか……どちらにしろ、僕も気にはしなくなった。親子という感覚はまったくなかった」

大きな会社にきた。今、僕は就職活動をしている。それは

「えー松本大和君だね?どうしてわが社を?」

僕は、早く自立して、家を出たかった。父さんから愛情を受けた記憶もない。だから、父さんとの関わりをなくしたかった。
それが理由なのか、家から遠い就職先を探していた。
そして、そんな僕の願いが叶うことになった。
スマートフォンが鳴っている。僕は画面を見て慌てて電話に出た。
「はい……はい!ありがとうございます!よろしくお願いします!」
僕は思わず笑顔になった。
「やったー!」
両手を広げながら横になる。天井を見ながら
「これでこの家ともおさらばだ」

僕は内定をもらった。あまり興味のない旅行代理店の仕事だ。でも関係なかった。これでこんな家ともおさらばだ。そう思った時……

「ポロロンポロロン」

またスマートフォンが鳴った。画面には登録していない番号。
毎回思うのだが、知らない番号からかかってきた時のスマートフォンの着信の音、いつも少し怖く感じてしまう。特にこんなときはすごく思う。
少し考えつつも電話に出ることにした。

「もしもし」
「もしもし、松本大和君の携帯でよろしいですか?」
「はい、そうですが」
「私、板橋警察署の者ですが」
「警察署?」
「松本義男さんってご存知ですよね」
「……はい、父ですが」

「今日、殺人事件を起こしました」
「……え!?」

父さんが殺人事件?どういうことだ?
僕は慌てて警察署に向かった。
「あの、松本義男の息子のものですが」
ゆっくりうなづく警官。
「町で喧嘩になってさ。相手が倒れて。打ちどころが悪かったみたいなんだ」
「……そうですか」
「案内するよ」
「……いえ、いいです」
「え?なんで?」
「……別に話すことなんてないから」
「でも……」
「失礼します」

正直、父さんが捕まっても僕には関係ない。何一つ日常は変わらない。そう思いたかった。しかし世間はそうはいかないものだったことを思い知る。

「ポロロンポロロン」

スマートフォンが鳴った。やっぱりこの音は怖い。
画面を見てハッとなる大和。
「もしもし」
「松本大和君だね?私、旅行企画のものですが」
「あ、お疲れさまです」
そう返事をすると、少し無言の時間になる。
すると相手は言いづらそうに話してきた。

「あの、言いにくい事なんだが、内定を取り消す事になって」

「え……」
僕は茫然としてしまった。
「その、君のお父さんの事を聞いてね。それでちょっと会議にかかって」
「いや、父さんは俺には関係ない……」
「すまない。それとうちに内定もらっていたことは内緒で頼むよ。それじゃあ」

ツーツーツー

こちらの話を聞くまでもなく突然電話が切れた。スマートフォンを握る手が強くなり唇が震える。
なんだよそれ。僕は居ても立っても居られなくなった。

僕は気が付けば警察署に来ていた。
「松本義男に会わせてください」
「あの、どういったご関係かな?」
「あいつの息子です」
「そうですか。今、丁度電話しようといてたところで」
「電話?」

「実はさっき……自殺、しました」
「え?」

警察の人に案内された。ドアを開ける。薄暗い部屋。
そこにはベッドで横になっている父さんがいた。
顔には白いハンカチがのっている。こんなのドラマでしか見たことがない。見ることなんてないと思っていた。
ゆっくり父さんに近づいた。自分でも体が震えたのがわかった。
悲しいよりも、別の感情が湧き上がってくる。
「……なんだよ。なんだよそれ。勝手に死んでんじゃねーよ!」
僕は気が付けば大声になっていた。声に反応して警察官や医師が入ってくる。
「おい!なんとか言えよ!残された身にもなれよ!お前のせいでな!こっちは散々なんだよ!」
父さんの身体を揺するが当然なにもない。その様子を見て警察官や医師が止めにきた。
「おい、何してるんだ」
「なんで…なんでお前が俺の父親なんだよ!なんで……なんで……」
僕はその場で泣き崩れてしまった。

次の日、学校に行くと、生徒全員が僕の方を見てきた。どこで知ったのか?それとも周りをそう見えているだけなのか。その目線はどこか冷たくも感じた。そこへ担任が声をかけてきた。
「松本、ちょっといいか?」
僕は職員室へ連れていかれた。
「……その、お父さんの事、聞いたよ」
「……そうですか」
「なんていうか、辛いだろ?」
「……別に、俺には関係ないから」
すると担任はどこか言いづらそうに話してくる。
「そか……それでだな。もう3学期も終わりだろ?もし、あれだったら。もう学校来なくてもいいから。卒業式にちょっと顔出してくれれば」
その言葉は冷たいものだった。来なくていい?
「……なんだよそれ、俺は邪魔者って事か!殺人者の息子はこの学校に来ちゃいけねえのかよ!」
「おい!声がでかい」
周りを見回す担任。全員こっちを見ている。
「なんだよ。どいつもこいつもそんな目で見やがって。こんな学校2度と来るかよ!」
担任というのは適当なものだ。いや社会がそうなのかもしれない。
僕は職員室を出て、下駄箱に向かう。その間、他の生徒もこっちを見ている。その目線に僕は耐えられなくなった。

僕は力なく歩いていた。ふと目線を上げると親子連れが歩いている。
こっちの視線に気づくと母親がハッとして子供を自分の後ろに隠した。
周りを見回す。若者、老人、主婦、全員が自分の事を見てこそこそ話している。
「……なんだよ……何見てんだよ!」
僕は走ってその場から逃げた。
みんなそうだ。僕が何をしたっていうんだよ。足早に家に帰ってきた。
「くそ!」
部屋につくと、僕は思わずカバンを地面にたたきつけた。
「もう、嫌だ。なんで俺ばっかり。もう……嫌だ」
気が付くと台所から包丁を取り出し自分の手首に当てていた。
息遣いが荒くなる。目を瞑る。
「う、う……う~」
手がダラリと下に垂れた。
「……くそ、くそ」
死にたくても死ねない。僕はどうしたらいいんだろう。

深夜駅前を力なく歩いていた。
楽しそうに歩いているカップルが横を通った。手には旅行のパンフレットを持っているのが見えた。本当は僕は旅行会社で働くことが決まっていたのに。僕があんなカップルとかに旅行を紹介する、そんなことをしていたのかもしれない。

裏路地の道をトボトボ歩いていた。ふと目線が止まった。
古い看板があった。そこには

「訳あり旅行会社」


と書かれている。
僕は吸い込まれるように中に入っていった。

入口の自動ドアが開き中に入った。
そこはあまり広いとも言えない室内。テーブルが3つくらいあり、客と向かい合うように店員らしき人が座っている。
旅行会社と書かれていたはずだが、パンフレットらしきものがどこにもなかった。僕も旅行会社に就職する予定だったから、それくらいの違和感はわかる。

「いらっしゃい。どうぞ」

1人の女性に声をかけられた。僕は椅子を勧められ、素直に従った。
彼女は整った顔立ちの綺麗な女性。スーツを着ていて髪型はショートヘア。
「私、この会社の鳳メグと言います」
名刺を差し出してきた。名刺には「訳あり旅行会社 代表 鳳メグ」と書いてある。
「ど、どうも」
「今日はどういったご用件で?」
特に要件なんてない。ただ単に吸い込まれるように入っただけだ。でも、僕は自然と口に出していた。
「……あの、訳あり旅行会社って?」
「ここは普通の旅行会社で違って、訳ありの旅行のみ取り扱っている会社です」
「……はぁ」
訳あり旅行?この人は何を言っているのだろう?そう思っていると彼女は続けて案内をしてくる。
「例えば、妻には絶対にバレない不倫ツアーとか、恋人と別れる為にいく失恋ツアー、離婚前の夫婦が最後の旅行に行く離婚ツアーとか」

なんか、どれも楽しそうじゃないな。そう思ったのが伝わったのか

「楽しい旅行に行きたかったらその辺の会社に行ったらいいわ。当店はすべてオリジナルの他にはないプランをご提供するから」

オリジナルの旅行プランか。そんなことを思っていた。しかしその後に彼女が話した内容に僕が少し気になった。

「お客様のご要望があれば、どんなツアーでもご提供するわよ」

この言葉が気になる。どんなツアーでも…
「……どんなツアーでも?」
「ええ」
僕は少し考えた。普通に考えたらありえない、そんなことをふと頭に浮かんだ。

「あの……自殺ツアーとかって出来ますか?」

僕は何を言ってるんだろう?自分でもおかしなことを言っているのはわかっている。
「自殺ツアー?」
「自殺する為のツアー……って無理ですよね?」
「いいわよ」
「え?」
「じゃあいろいろ聞くけど」
「ちょっと待ってください」
「何?」
彼女は普通に事のように会話を進める。僕はその光景に驚きを隠せなかった。あまりにも展開が早すぎる。
「……止めないんですか?」
「止めてほしいの?」
「……いや。別に」
「じゃあプランを組む為にいくつか質問するわね」
紙とペンを取り出しメモしようとしている。正気か?目の前の高校生が自殺しようとしてるんだぞ。なんでそんなに淡々と進めるのだろう?しかし、彼女はいたって冷静だった。
「なんでそんなツアー組んでほしいの?」
「……自殺したくて。でもやり方がわからなくて」
「なんで、自殺したいの?」
「え?……それは」
「それは?」
僕を見つめながら言う。ふと目線があった。無表情な目でこちらを見ている。この人には感情がないのか?それとも、僕の父さんが人殺しだってことをニュースとかで見て知っていて、それでこちらを見ているのか?
「……借金だよ」
「借金?」
「そうだよ。この歳で借金がいっぱいあって……それで」
「なら旅費のお支払い出来ないじゃない」
「それは……それは大丈夫だよ」
「嘘ね」
「え?本当だよ」
「本当の理由を言って頂かないと、プランは組めません」
「……なんだよそれ!もういい!」
僕は立ち上がり店を出た。店内を出るまで彼女はその様子を見ていた。

家の布団の中で、なぜ僕は本当のことを言わなかったのか。そう思った。
父さんが殺人事件を起こして…それで嫌になって…どうしたらいいのかわからなくて…学校で先生に邪魔者扱いされて…
そんなこと言えるわけがない。言うとまた変な目で見られる。
僕はなかなか寝付けずにいた。

時計は12時。目が覚め起き上がった。知らない間に寝ていたようだ。
アクビをしながらテーブルの上のリモコンでテレビを付けようとする。
テーブルにあの名刺が置いてあることに気づいた。

あれは夢じゃなかったんだ。

あんな変な旅行会社。
僕は名刺を手に取りしばらく見ていた。
「訳あり旅行会社」
どう考えてもおかしいところだ。
僕はスマートフォンを手に取って「自殺」と検索をした。
いろいろなサイトが出てくる。ふと1つの動画を見つけた。
そこではレポーターが街行く人にインタビューをしている。
「死ぬ前に食べたいものってなんですか?」
  
僕は繁華街に来ていた。今どきの高校生はこんなところに来るのは別におかしなことではない。ただ、僕はこういうところはちょっと懸念していた。
「どうせ死ぬんだ。最後にやりたい事をやろう」
やりたいこと、別にこれってことがあるわけでもない。
ふと中華料理屋の方を見た。「高級フカヒレの姿煮1万円」と書いてあった。

席に座って待っていると店員が料理を持ってきた。
「お待たせしました。フカヒレの姿煮です」
店員は料理を大和の前に置いた。テレビでしか見たことのないような美味しそうな料理。
店員を見ると少し不思議そうな目で見ている。それもそうだ。高校生が1万円の料理を1人で注文しているのだ。しかし、僕はそんなこと気にしなかった。
興味深く料理を見た後、レンゲで1口食べた。

・・・・・・

しかし、なんだろう?味があまり感じられない。
僕はレンゲを置きため息を吐いていた。
結局1口2口くらいしか食べずに出てきてしまった。死ぬ前に食べたいものって結局なんなんだろう?こういうことじゃないような気もする。
本当は美味しいはずなのに、今の僕にはそれが感じられなかったんだ。

特にあてもなく歩いていると、ふと裏道に入っていた。
そこで帽子を深くかぶった男が声をかけてきた。
「兄ちゃん。ええもんやろか?」
「いいモノ?」
というとその男は辺りを気にしながら、内ポケットから白い粉を出した。「どうや?ドラッグとか興味ないか?」
「え!?ドラッグ……やったことないな」
ドラッグという言葉に驚きは隠せなかったが、上手く誤魔化せたみたいだ。
「気持ちええぞ。死ぬほど気持ちええぞ」
「死ぬほどか」
僕は白い粉を受け取っていた。
「普段ここによくおるからほしかったら声かえてくれや。なぁに、安くしてやるから」
「……あぁ」
「それはサービスや」
というと男はどこかに行ってしまった。
僕の手には白い粉の袋があった。これがドラッグ。そう思うと少し震えてきたが、それはすぐにおさまった。

気持ちええぞ、死ぬほど気持ちええぞ

あの男は死んだことあるのか?
まぁいい、どうせ僕の人生はもう終わってるんだ。そんなことどうなんてもいい。
僕はドラッグをポケットに入れた。

再び歩き出すとふと目線が止まった。風俗の看板。近くに行き看板を見る。
そういや、女の子とはまったく縁がなかった。だから、経験ももちろんなかった。高校生ってこんな店にいけるのか?そんなことも考えていた。

でも…

ふと目線を上げるとそこに、女の人がいた。
あ!この人は…
そこにいたのは訳あり旅行会社で名刺をくれた女性だった。
「何してるの?」
思わず僕は驚いてしまった。
「べ、別に何もしてねえよ」
「ふ~ん」
そういうと彼女は風俗の看板を見て少し笑ったように見えた。
「そ、そんなんじゃ」
ねえよ!と言おうとしたらそれを遮るように彼女は言ってきた。

「なんか違う……でしょ?」

彼女の言葉が、僕の心を見透かされているように思えた。
「え?」
「死ぬ前に何していいか、わからないでしょ?」
「……それは」
「ま、普通わからないわよね」
僕は何も言えなかった。その通りだ。
「よく死ぬ前に何が食べたい?とか何がしたい?とか話する時あるけど、実際なったら、まぁわからないわよね」
なんだ?この人は、僕が思ったこと全部当ててるじゃないか。
「じゃああんたはわかんのかよ?」
心を見透かされて、ちょっとイライラしているのか?僕は言葉使いが少し荒くなっている。
「俺が今、何をしたらいいのか、あんたにわかんのかよ」
そういうと睨むように彼女を見ていた。無表情で彼女は言ってくる。
「……えぇ」
「え?」
わかる?死ぬ前にすることが?
「ま、知りたかったら、本当の事を言ってもらわないとね」
「それは……」
そういうと彼女は僕をじっと見てきた。
「んだよ!」
僕は目線を外してしまった。
彼女はタバコを取り出し火をつけた。タバコを吸っている。
そして僕を見てタバコを勧めてきた。
「は?俺まだ未成年だぞ?」
「そっか、子供にはまだ早いか」
「……うるせえ!」
僕も意地になったのか、吸ったことのないタバコを吸おうとしていた。
ポケットに入れていた手を出す。が、その時ポケットから白い粉が落ちた。
僕は慌てて拾ってポケットにしまおうとした。
「あなた……何それ?」
「え?さっきそこでもらったんだよ」
「それ、何かわかってんの?」
「え?あぁ、まぁ」
正直、僕はドラッグだということはわかっていた。が、それ以上のことは何も知らない。
「知ってる?死ぬほど気持ちいいってさ」
「……」
「興味があった訳じゃないけど、1回はやってみたいって……」
別にそんなこと思ってたわけじゃない。でもついついそんなことを口走っていた。その時だった。

パン!

彼女は僕をビンタしてきた。
「何すんだよ!」
彼女は僕を睨むように見ている。さっきまでの彼女ではない。
「そんなのやっていいわけないじゃない」
「あんたに関係ないだろ」
「そんなのやったら、死ぬほど後悔するわよ」
ずっと冷静だった彼女が急に大声を出して怒っている。
「どうぜ死ぬんだからいいんだよ」
「そういう問題じゃないわ」
「じゃあどういう問題だよ」
「それをやったらどうなるかわかってんの?」
僕はドラッグを投げつけた。
「だからあんたには関係ないって言ってんだろ」
「……」
「俺はもうすぐ死ぬんだ」
全身の力が抜けていく。
「俺は、俺は、死ぬ前に何したらいいんだよ!」
僕はすがるような目で彼女を見ていた。
「なぁ、教えてくれよ」
「……好きにしなさい」

僕はどうしたらいいのかわからずにいた。死にたいけど死ねない。死ぬ勇気がない。死に方がわからない。今の自分は惨めだろう。
彼女は、「死ぬ前に何していいか、わからない」その答えを知っていると言っていた。そんなことあるのか?

こんな僕をみて、彼女はどこかへ歩いて行った。

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