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私は新疆ウイグル自治区カシュガルで“漢族”になった

はじめに

「新疆ウイグル自治区がきな臭い」

2018年当時、以前より噂されていた強制収容所の存在や同化政策などが、海外メディアでリークされ出した。

そのとき武漢大学に留学していた私はそれらの報道をみて、すぐに航空券を取った。
どんな状況なのか、どんな場所なのか、自分の目で見たかった。
でも、実のところ、そんなジャーナリストぶった正義感が理由で行くわけではない。そもそも歴史としてのシルクロードにロマンを感じていたし、中華料理とは異なる、中央アジアの多様な食べ物も現地で食べたい!

2019年1月、私は一人で新疆ウイグル自治区、カシュガルに向かった。実際に目にしたものは、具合が悪くなるほどに息苦しい『監視社会のテーマパーク化』だった。

感じるシルクロード、中央アジア!

ブルーに塗った部分がウイグル自治区。赤丸がカシュガル。

内陸の都市・武漢からウイグル自治区の省都・ウルムチへは飛行機で約6時間。そこからカシュガルへは、飛行機でさらに2時間。中国、改めて広すぎる……。
ブルーの部分がまるまる新疆ウイグル自治区と呼ばれる地域だ。「ウイグル」の広大さ、そしてカシュガルの位置関係をお分かりいただけただろうか。

到着時の宿周辺

これ、実は朝の10時ごろ。こんな東西に広大な国なのに、公式には北京時間で統一されているので、朝の10時になってもまだまだ暗い。そのため「新疆時間」なるものが現地では使われており、北京より2時間遅い。
ん? それでも暗いな……。

この丸いのはナン。

昼過ぎから宿周辺を歩いてみる。
ナン」屋さんがあった。
「ナンってカレーの……?」
と思うかもしれないが、実はナンというのはインドに限らず、ユーラシア大陸に広く広がっているパンだ。

中央アジアではナンといえばこの形が多い。
これもナン。

ナンの形状はたくさんある。これは小さくて、真ん中が窪んでいるナン。

食べてみる。

羊の串焼き(シャシリク)と一緒に、下手くそなウイグル語で注文してみた。
「プニ アリメン(これをください)」
実はカシュガル旅行に備えて、簡単な会話を勉強してきた。

中央アジアのナンは、とても硬い。スープに漬けながら食べることも多いそうだ。それにしても、羊肉が美味しい。こんな美味しい串焼きは食べたことない。
「オフシャプトゥー!(おいしい)」
ナン屋のおじさんは、パァーッと笑顔になった。

毛皮屋さん?

ここらへんは職人街。中国の他の地域ではみたことがない、様々な種類の店が並ぶ。

宿周辺
街並みは美しい

カシュガルはシルクロードの貿易地として古くから栄えてきた街だ。市場(バザール)に行ってみよう。

ザクロジュース
いっぱい70円くらい

甘酸っぱくて目が覚める味!

これはすごくシルクロード!
真っ赤なインナーが人気?

大バザールの活気はすごくて、ありとあらゆる物が売られている。観光客向けのイメージがあったけど、買い物客はほぼウイグル人だ。

私は「漢族」?!

建物の入り口で安全検査

ウイグルが監視社会というのは本当だろうか。確かに、異様な街である。本当に至る所に防犯カメラがある。それだけなら、他の中国の地域でもそうといえばそうだ。
しかし、例えばバザールやホテルなど、建物という建物に入るためには、必ず空港のような荷物検査と、身分証の確認がある
さらに不思議なことに、ウイグル人が、自分たちの居住区に入るのにも、同様の検査が行われている。

中で荷物検査がある。
ここでは身分証チェック。

このような検査をする軍警の多くは、現地採用のウイグル人だ。
彼らは私の顔を一目見ると、「あなた、漢族は大丈夫ですよ」と、しばしば安全検査を免除してくれた。
私ってそんなに漢族顔なのか……。本来こんなところをウロチョロしてる外国人の私のほうが、よっぽど怪しいのに。
それもそうだ、この厳重な検査は、ウイグル人の彼らが対象なんだから。

中国人青年の傲慢さと「インスタ映え」

私が泊まっていたのは若者が集うゲストハウスで、そこで出会った中国人の青年二人組、女性一人と一緒に散策していた。

百年老茶館

有名な茶館に来た。観光地として人気の場所だが、現地の男性たちの憩いの場としてもまだ機能しているようだ。

おじいさんと、中国人女性と
ダンスタイム

定期的に演奏タイムがあるようで、そのときは無茶振りで踊らされます……😂

ウイグル人の女子中学生を撮る

私が気になったのが、中国人青年二人組の振る舞いだ。彼らは高校卒業したての若い兄ちゃんたちで、基本的には優しくノリのいい若者。写真が趣味だという。
そして、彼らはウイグル人の子供に声をかけては、お菓子やバルーンを渡し、ポーズを取るように指定する。

バルーンをあげるところ
小学生くらいの子たち

彼らは旅行者として、ウイグル人が身分証がないと歩けない街を自由に闊歩し、ウイグル人の子供を被写体にして、「良い写真が撮れた」と喜ぶ。
この悪意なき行動に、なんとも消化できないモヤモヤが溜まった。

ウイグルは弾圧されているか?

エイティガールモスク

中国最大のモスク、エイティガールモスク。2019年のこのときはまだモスクとして機能しており、男性たちが続々と入っていた。
そこを振り返ると……

習近平の巨大スクリーン
巨大スローガン

訳すと「習近平同志らのお心遣いに感謝いたします」だろうか。
ここまで“圧”を感じる都市は、なかなか無い。
実はこの時すでに、ウイグル各地のモスクは閉鎖され始めていた。

美しいタイル貼り

こちらはカシュガル中心部から数キロ離れた場所の、アパクホージャ墓。この隣にあったモスクは、このとき立ち入り禁止にされていた。

またスローガン
習近平の写真

入れないモスクを外から覗くと、「中華民族は一つの家族、共に中国の夢を築こう」の文句とともに、習近平の写真がかかげられている。
さすがに悪趣味すぎて、「あえて悪役を買ってでているのか」と思うほど。
中国政府は、ウイグル文化を根絶やしにしたいのか?

これは完全に私の解釈にすぎないのだが、中国政府は、ウイグルの文化を完全に消し去るつもりはないだろう。
むしろ、「多民族国家中国の、特色文化を持つ少数民族の一つ」にするために、お金をかけて観光地化に邁進している。

そもそも、これはウイグルだけの話ではない。中国のどこの都市でも防犯カメラの数はえげつないし、博物館美術館や地下鉄に入る度に安全検査はあるし、辺境(国境)に近づくごとに、職質や身分証チェックは厳しくなる。

古い街並みを整備している途中。
テーマパークのような入り口を建設

少数民族の文化は、「文化保存」の名の下に、「整備」されて、漢族向けのテーマパークと化す。「貧困改善」のために中国語教育を徹底する。
このような行いは、歴史上、あらゆる国や地域で起こってきた。日本だってそうだ。
ただ、ウイグルの場合、それが現在進行形で行われている為、数割増しで厳しく、現代日本人の目からすると異様に映る。(強制収容施設の存在は言わずもがな)

ウイグルで知恵熱

カシュガル駅

カシュガルの情報量の多さに疲れきってしまった私は、逃げるようにトルファン、そしてウルムチに向かった。トルファン旅行記についてはまた記事にしたいが、そこから謎の発熱。
最後三日間滞在したウルムチでは、観光予定を放棄して引きこもり、宿で「斉木楠雄のΨ難」全話を見続けることになった……。

さいごに

カシュガルは、素晴らしい都市である。
ご飯は特に「ラグマン」がおいしい。

羊肉のトマト煮込みラグマン
これを手打ち麺にかける。

さすがは交易都市、人の温かさ、熱気も素晴らしい。見どころもたくさんある。また行きたいかと問われたら、行きたいと思う。

ただ、私が見たこのときのカシュガルは、もうすでに変容してしまっているだろう。これは2019年1月に行った私ですらそう思うのだから、2000年代以前に訪れた人にとってはなおさらだ。
もう存在しない街に、私は行ったのかもしれない。

(終わり)

今後も詳しい中国やウイグル、中央アジアの旅行記を投稿予定です。
以下のような記事を書いてます👇

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タカイワ マサ | ライター・イラストレーター 面白いと思ったら応援のほどよろしくおねがいいたします! いただいたチップは執筆活動に使わせていただきます。

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