非鉄オタが挑む中国最凶42時間鉄道旅:成昆線の絶景とカオス
はじめに
旅というのは、鉄道抜きでは始まらないとすら思う。飛行機が嫌いな分、そう思うのかもしれない。
見知らぬ地で、見知らぬ景色を眺めながら時間を潰しているひとときこそが旅愁だ。
とはいえ、私は鉄道移動が好きな方であるものの(ウズベキスタンの寝台や中国〜カザフ国際列車にも乗った)、これといって鉄オタというわけではない。
中国の雲南省昆明から四川省成都へと続く山岳地帯を入るいわゆる成昆線は、新線化などの影響で、姿を変えつつある“絶景鉄道”だという。
“旅の目的地”として鉄道を選ぶことはこれまでなかったが、成昆線の車窓が素晴らしいと聞き、2018年秋、非鉄オタの私も「乗るために旅する」決意をした。
成昆線とは?
・成都と昆明を結ぶ全長約1100kmの山岳鉄道
・険しい渓谷と山地の間を駆け抜ける絶景
・全線のうちなんと41%がトンネルと橋梁
・非空調硬座が健在
・少数民族彝(イ)族の自治州を走り抜けるため、彼らの重要な生活路線
計画:鉄道乗車42時間の大移動

考えたルートがこちら。
2018年当時武漢に留学していた私は、武漢から昆明までは飛行機で移動。
その後昆明 → 攀枝花 → 西昌 → 成都と途中下車をしながら成昆線で北上し、成都から再び鉄道で武漢へ戻る。
鉄道合計乗車時間:約42時間
鉄道総移動距離:約3500km
という壮大な計画である。
この狂った旅程に着いてきてくれたのは、船で二泊三日大阪〜上海に向かう旅(記事はこちら)や、氷点下-27度のアムール川を見る旅(記事はこちら)にも同行してくれた、女子校時代の同級生A氏。
今回も、「山岳鉄道乗ってみない?」とLINEしたら、やはり即OKだった。なかなか特殊な人間なのだ。
昆明到着、まさかの実家飯から始まる
昆明に着いた私たちが最初にしたのは……。

中国人の実家で飯を食べることだった。
実は、以前シーサンパンナの民宿で知り合った昆明出身の中国人(といっても高校卒業したて)に「今度昆明行くよ!」と連絡したところ、「せっかくだし飯でも食べようよ」と言われていたのだ。
てっきり美味しい飯屋でも紹介してくれるのかと思っていた私たちは、到着そうそう面食らった。
「僕の家でご飯食べよう」と実家に呼ばれたのだ。
彼の実家は、市街から少し離れた、エレベーターの無い古いたたずまいの、団地の一部屋だった。
彼のお母さんが作ってくれた雲南名物の汽鶏鍋(鶏スープ)を食べてみると、鶏の旨みが詰まっていて本当においしい。
私たちが
「おいしいです!ありがとう!」
などと味の感想を言っていると、両親は「米ももっと食え!」「喋ってないでどんどん食え!」と無限に勧めてくる。
静かな団地のリビングで、気まずく笑いながら白米をかき込んだ。

帰り際にはミカンを大量に持たされ、「うちに泊まらなくていいの?」と言ってくれ、しまいにはホテルまでのタクシー代まで払ってくれた。中国人のおもてなし力、強すぎる。
ちなみに、申し訳なさから、お返しとして友人が日本から持ってきたカップヌードルを血迷って渡したが、カップヌードルなんて中国にも普通に売ってるわけで……。
あまりにも申し訳なくて、私たちは困惑して
「ありがとうございます。ごめんなさい」
と、繰り返すことしかできない。
青年は笑顔で言った。
「じゃあさ、僕たちがもし日本に旅行したら、今度は同じようにもてなしてよ。それでおあいこでしょ?」
そんなときが来たらいいな。本当にそう思って、私は力強く頷いた。

私の高校の同級生A氏という不思議な写真
成昆鉄道いざ出発

昆明駅のホームに立つと、これから始まる“修行”に胸が高鳴る。とはいえ、いま乗る昆明→攀枝花は、約4時間ほど。まあその程度なら、そんなに大変なこともないだろうと思っていた。
昆明→攀枝花:硬座の夜は地獄

列車に乗り込むと、想像以上に座席が硬い。硬座は座席が垂直なので、腰痛持ちにはダイレクトにくる。ただ、時間帯的に混雑しておらず、無理やり座ろうとしてくる無座(座席なし券)のおばさんなどがいないことは救いだ。
外は暗く景色は全く見えないため、大変つまらない。
そしてなにより困ったことに、向かいの席のおじさんの足が猛烈に臭う。臭うのに、靴を脱いで足を座席に上げてくる。辛い。

ここで、先程貰ったミカンがまさかの大活躍。友人がミカンの皮を鼻に近づけて、激臭を必死に凌いでいた。ありがとうミカン。
深夜の攀枝花駅、ホテル地獄

深夜0時ごろ、攀枝花駅着。攀枝花駅は街のはずれにあるので、ホテルのある中心街までタクシーで30分かかる。早朝6時発の列車に乗る予定なので、ほぼ仮眠するだけみたいな状態でへとへと。
にもかかわらず、攀枝花のホテルのチェックイン時、受付のお姉さんたちは「日本人だって〜!! 初めてみたよ! 何しに来たのー?!」と仲間を裏から呼んで、はしゃいで絡んでくるので余計に辛い。
早朝発、攀枝花→西昌:絶景と朝焼け
翌朝(?)5時前に起きて、再び駅に戻ってきた。ここから、西昌まで約7時間の硬座旅が始まる。



乗車すると、女性の車掌さんがなぜか私たちの席にきて、「パスポートを見せろ」と怖い形相で言う。
恐る恐る見せると、
「うわー、本当に日本人だ! マジかよ! 降車地に着いたら、私が絶対教えてあげるから安心して!!!」
と、中国語がわからなかったら、絶対怒ってると思うような怒涛の口調で言われた。
やさしい。

最初は薄暗かった車窓からの景色も、だんだんとピンク色に染まっていく。


山と河のコントラストが美しい。

途中止まる駅が、まるで日本の私鉄のホームのように狭くて面白い。

早朝なのもあり、私たちの席周辺はガラガラ。というか、「日本人」だけこの車両に隔離されている気がするのは気のせいだろうか。ホームをみていると、アヒルを持ち込むお婆さんなども散見されるが、私たちの車両にはひとっこひとり来ない。









夜が明けていく山間部。徐々に白んでいく車窓、昇る朝日、霧がかかる川と山が美しい。
途中で風車が林立する景色が現れ、まさに“山岳鉄道の旅”。

車窓を独占しながら「これが成昆線か…!」と感動していた私を横目に、A氏は爆睡していた。付き合わせてごめんな。
ついに西昌到着

7時間の硬座移動も、景色を眺めているとあっという間。
列車から降り立つと、空気が澄み切っていて心地いい。

中国の都市でも、私がトップクラスに好きになった街、西昌へ到着した。そのことはまた追って記事にしたい。
成昆線は“旅の目的地”にする価値がある
成昆線は単なる移動手段ではなく、“乗ること自体が旅”になる鉄道だ。
絶景の山岳路線、日常感、旅情とちょっとしたハードさ……
これらが揃った路線は、もうすぐ姿を変えてしまうかもしれない。
“非鉄オタ”の私でさえ強烈に記憶に残ったこの路線を、鉄道ファンならもっと深く楽しめるはずだ。
(終わり)
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