風に音色は運ばれるように
船に揺られて島から島へ
かもめの風見鶏が、ゆらりと風にはためいては
音色を立てる。懐かしい光景がふとよみがえる。
降ろされたマストの帆が、風になびく様子を思う。
女木島に流れる静かな時間と揺れる記憶の中へ。

船がゆっくりと遠ざかる

キイキイと揺れては音を立てる

かもめの群れに出迎えられて

いつか見た光景をたどるように

港に置かれたピアノの前に立ち

ひそやかにそっと流れるような

音のある風景を思い浮かべる

帆は静かに閉じられて

ピアノは静かに時を刻む

流れる時を留めるように

船は錨を地に降ろす
風景はずしりと繋がれて

また軽やかに空へと放たれる
視点を形に沿わせながら

止まった音に耳をすます

点々と並ぶかもめと

落ちては伸びるマストの影と

風景に描かれた線をたどり

ほのかに揺れる遠い記憶を

防波堤の上のかもめに重ねる

かもめはくるりとひるがえり

連なりはためいては

マストの帆はさわさわと

いつかの旅の風景の音色を

風が運んでくるように
どっしりとしたピアノの船が、港の景色に浮かぶ。
いつかの揺れるマストの帆。風に運ばれる音色を
頼りに、遠い旅へと遡り、並ぶゆらめくかもめに、
また出迎えられて、女木島の風景の中へと進む。
