積層する時間と記憶と風景へ
旅の予定変更は、あらたな出会いの前触れでもあり
宮浦港から直島をぐるりと歩き、たどり着いた本村
にある直島港。いざ豊島へと思いきや、フェリーは
運休日。肩を落としながらも、せっかくなので島の
大きさを体感するべく、宮浦港まで歩いて向かう。
その道中に建つ圧倒的な作品にも立ち寄りながら。

直島に散りばめられたアートは数多く

すべてを訪ねることはかなわないので、またいつかと

考えていたけれど、あらためてその存在感に圧倒される

家プロジェクトのひとつ、はいしゃは外観そのものが

作品となり、時を重ねた素材が散りばめられる
作者は大竹伸朗氏。直島の旅の始めにもその作品に

内部空間は、床から壁、天井へと、建物が持つ記憶と

混在するように作家の思考がからまりあう

通路の先に見える巨大な彫刻は

かつての浴室の床を抜いて二層吹き抜けとなった空間に

様々な場所を旅をし、この地へとたどりついた

自由の女神像。空から舞い降りるようにして

この場所に納まっている。そしてこの建物の住人として

旅人を出迎え、驚かせる

建物は当時の生活感をまといながら

空間の記憶と作者の記憶が入り混じり

新たな創造の場として生まれ変わる

青く塗り重ねられた壁の色は

島の周囲を満たす海の深さを想像させ

重ねられる素材が持つ時の流れ

そこには空間と時間と形の混沌さが

意識的に、無意識的に生み出されている

散りばめられた様々なものは、作者の意識を帯びて

さらなる時を獲得することで、風景になじみ

その場所にあらたな形で定着していく

外壁に取り付けられた船形が持つ海の記憶

宇和島を拠点とする作者の目に映る海の風景

積層する時間の流れをまとう建物をふりかえり
作者が展開している作品へと思いいたる
そこでは、意味を外してものを見ることで
見える風景は異なるものとなる
圧倒的な質量。記憶が宿る物質。時間が入り混じる
場所。意識的に、また無意識的に生み出される空間。
そこにはあるのは意味や理由ではなく混沌の連続。
それらを理解するというよりは、流れる複雑な時間
を感じとる。塗り重ねられた記憶が充満している
ここでしか出会うことができない場所を訪れた。
