互いの思いは混じり合って溶け合って
彫刻の緩やかなシルエットが、直線に浮かぶ
縦横に重なる線が奥行きを生む。リズミカルに続く
縦の線。それを隔てる横の線が、角を作り、立体と
なって、空間の一部を構成する。均質な線の積み
重ねが、静かで動的な空間を紡ぎ出して、伸び縮み
を重ねながら、訪れた人の体と心を拡張していく。

縦横の線が続く階段の先に

切り取られた街の風景

建物は街とつながり
その場に記憶を定着させる

過去から現代へ、時はだんだんと積み重なり

建築の表現は多様化し、移り変わる

石垣、板塀、しっくいから、打ち放しコンクリート

床の石貼りは、ゲートの上面とも一体となる

通路は宙に浮かび

内外はシームレスに接続される

作品が嵌め込まれた美術館の正面の壁で

芸術家と建築家はひかれ合い
建物はアートの背景に、アートは建物を浮遊させる

すっと内部に引き込まれる。低く抑えられた天井

空間は緩やかに高さを変えつつ

一気に上昇し開放される

しんとした空間との距離を縮める椅子とラグは
建物の一部となり、訪れる人を出迎える

上部へと空間をつなぐ階段が

円柱のアクリルに映り込む

そこに浮かぶ黄色のオブジェは

猪熊弦一郎の作品で、遠い過去の思い出を

ゆらりとそっと閉じ込めたもの

階段は作品に映り込んでは、取り込まれる

芸術家の思い出が空間に溶け出して

均一であるものが、不均一となる瞬間に

アートと空間の幸福な関係に
包まれては思いを寄せて
猪熊弦一郎と谷口吉生。二人の個性がぶつかっては
混じり合い、溶け合うように訪れる人を出迎える。
街と接続する美術館。人と人をつなげる芸術家の
思い。端正な線で築かれた建築家の空間への目線。
それらは、訪れる人の視点を多様にさせる。ここは、
美術館という建物が持つあらゆる力を携えている。
