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彫刻と建物の間を縫って

街の記憶にふれるように

朝の静かな街を歩く。車がだんだんと数を増やす。
街が動き出す。道の先には駅が見える。丸亀の街
をめぐり、また元来た位置に戻ってくる。風景を
繰り返すほど、物の見え方は少しずつずれていく。



街を歩く。時が刻まれる



建物を手に取るようにして



アートのやわらかな奥行きが


重なり合う美術館へと戻ってきた



この街には芸術家の残した言葉が



形となって配置されている



開館までの少しの間を



期待に心弾ませて



ゲートが下がるのと同時に



大きな階段を上る



建築家によって構成された空間で



彫刻は通り抜ける風になびくようにして



空間は柔らかな光の方へと続いていく



身体に刻まれた歩調で階段を上り



光と風に導かれ、屋上の静かな空間に至る



空へと伸びる彫刻の



線を目で追いかけては



ふわりと動き出しそうな、その形を捕まえるように



自らの位置と視点を転じていく



サラサラと流れる滝の水に



壁面の模様も呼応する



語り合うように置かれた石は



イサム・ノグチによるもので


この地の素材の力を放っている


日々の造形が拡大された彫刻と



石が放つ存在感を



建物ごしに引いて見る



光が柔らかく拡散する空間で



形が画面に陽気に踊る



キャンバスの片隅に添えられたサインは



猪熊源一郎のもの



作品と空間は対話して


並べられた椅子も空間と共鳴する



光は透過し拡散し



空間に陰影を生じさせる



作品と建物の間に沿って



芸術家と建築家の仕掛けに



空間にそよぐ風は姿を現すように



心はざわざわと揺さぶられるように


ぐるぐると建物をまためぐる

彫刻と建物が語り合う。建築家と芸術家の互いの
基準は時間を帯びて響きあう。なくてもよいもの。
なければならないもの。ないと不足と感じるもの。
あれば余剰と感じるもの。水のざわめき。光の濃淡。
強い形と風を帯びる形。形は時を超え混ざり合い、
この先もひそかにそっと、訪れる人に語りかける。


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