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建物の記憶は時を超えて

素材がつなぐ風景もあれば、形がつなぐ風景も



空の境界を分かつ直線と、緩やかに伸びる曲線に
誘われるように旅路をたどる。フェリーを降りて、
高松東港からこの道を進んできたのは、公共建築
100選に選出されたこの建物に会うためでもある。


開かれたアプローチを進むと



緩やかなシルエットを持つ建物



優しいな淡い色のタイルの先の



風景へと足を進める



建物と一体となるようなシンプルな車寄せをくぐり



強調された水平ラインは、奥の建物と続いていく



休館のようで、静けさをまとう建物に沿って



建物をめぐるデザインに誘われるように



敷地の奥に続く駐車場へと進みながら



建物にちりばめられた形をたどる



早朝に始めた旅も、やがて光は空に広がり



空との境界は、建物の形を浮き立たせる



繊細な屋根の連なりに目を向けつつ



象徴的な曲面の形の



スロープが続く内部空間を見上げる



続く直線の中の象徴的な円の形



曲線とガラスと空と



形をたどるようにして



空へと続くような階段と



やわらかな納まりの手すり



水平ラインを帯びる建物に



そびえる堂々としたフェニックス



連続と変化が入り混じる建物は1962年に


建てられた旧高松逓信病院。手掛けた山田守は


斬新な建築を生み出し続けた分離派の一人で


長沢浄水場のイメージが鮮烈でもある


建て替えられた建物にも、かつてあった独創的な形


跡形はなくとも、街の空気を感じるように



また残された建物の形が
 

息づく門司の街へも旅をした



そして山田守が残した京都にそびえるタワーは


賛否を越えて愛される

手がけられた日本武道館や


公開されている自邸にもまたいつか


そして今はもうなくなってしまったが、以前の



住まいの側には山田守が手がけた大阪厚生年金病院が



建っていた。それはもう20年近く前のこと



そこで生まれた長男は今年で18にもなる



建物の形は記憶とともに


時代を超える建築の力を感じる。どれほどの思い
を重ねれば、この建物が出来上がるのだろうか。
時代の波を乗り越えて、残される建物もあれば、
飲み込まれ、失われるものもある。一つ一つの線
に込められた思い。形に宿る記憶。曲面の空間の
象徴性。空を映すガラス。朽ちゆく壁が語る過ぎ
去った時間の重み。そして考え抜かれた建物は、
古くて新しい。当時出来上がったときの感動が
いかほどであったかを思うと心が震える。そして
残された建物は時に無言に、時に饒舌に。その声
なき声に聞き入るように、私の旅は続いていく。



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