昨日の、そしていつかの空を思い出す
そこは森の芸術祭の会場となり
昨日の空を思い出す。という作品が展示されていた。
それはAKI INOMATAさんによる、グラスに注がれた
水の中に出現する、昨日の空に浮かんでいた雲の形。
留まることのないものを、手のひらに納まるグラスの
中に一時的に定着させ、一瞬を、今ここに形として。

美術館のショーケースは、内部の空間をうつろわせるように

そこに展示される作品の、昨日の空を思い出す

壁に掲げられた作品は、昨日の、そしていつかの空

それは、グラスの中に空を表現するように

満たされた水の中に浮かぶ雲

大きな空が、小さな透明感のあるグラスの中に落とし込まれ

周囲の環境と共鳴し、その存在はよりうつろいのあるものに

昨日の空は、昨日にしかなく、その瞬間を定着させる作品は

日々のうつろいの不確かさを、一時的にも確かなものに

3Dプリンターにより、液体の中に留まる液体で表現される雲

グラスは色づく空をも取り込んで

そしてその作品は飲むことで、五感で感じられるものでもある
AKI INOMATAさんの、昨日の空を思い出すという

作品に、昨日の津山の空を思い出してみる

津山城跡の風景は、移りゆく空を切り取り

眼下の街に、大きく広がる空は風景を包み込み

また背景として、旅の感情をなぞらせるように

空の様子は、刻々と姿を変えながら、気持ちを浮き立たせ

風景を浮き上がらせるように、また主体ともなり

ガラスに映り込む建物と一体にもなるように
そして昨日の空は、いつかの空につながって

旅をするほどに、日常を過ごすほどに、空は様々な形で
現れる。二年半の日々を過ごした九州でも

様々な空を見上げ、その場の空気を肌で感じてきた
空は限りなく広く、つかみ切れないけど、

写真はその形を切り取り、確かさをつないでいく
いつかの空に思いをはせながら、その日の空の下を

進み、それはまた、いつかの空へとつながっていく
空はうつろいを表す印象的な最たるものでもあり

その形は気分を反映し、気持ちをふるわせていく
空を見上げるほどに、空の形はうつろい不確かで

でも、心に与える印象は確かなものとなり
昨日の、そしていつかの空につながっていく
AKI INOMATA -「昨日の空を思い出す 」
この作品には、作者による「昨日と同じ今日は来ない」
との思いがこめられているという。似ているようで、
一度として全く同じ様相を示すことのない日常の姿。
グラスに表現された雲や、空の様子は、いつかは液体
と混ざり合って消えてしまうはかないもの。作者は
作品に、日常的な反復の中に差異を見いだすことで、
ずっと先の未来の前にある今に、思いを込めたという。
昨日と同じ空がないように、昨日と同じ日はこない。
旅を続けるほどに、日常を過ごすほどに、空は重り、
同じように見えていても、決して同じ姿になること
はない。それは日常に起こりうる、あらゆることにも
通ずることで、歩く日々の街並み、すれ違う人々、
生き生きと伸びる緑、太陽の光が落とす木の影の形、
小鳥のさえずりの連なりも、同じようで同じではない。
小さな差異の向こうの、移ろう日々を感じていきたい。
