その素材は空間を動かし、風景をつむぐ
直島では、風景はアートと関係を持ち
建物はアートの背景となり、島の風景を紡ぐ一部と
なる。1989年に直島に建てられた国際キャンプ場。
その年から数えて36年目の2025年に、安藤忠雄氏
による10番目の建物が建てられた。直島の風景を
遡るように、過去から現在への時の流れを体全体
で感じながら、ようやくその建物へたどり着いた。

緑の隙間から島の風景が広がる坂道を上り

直島で新たな物語を紡ぐ

美術館へとたどりついた

打ち放しコンクリートは素材を超えて

風景をつなぐ象徴となる

壁を埋め尽くす丸石は、建物に新たな質感を与え

土地とのつながりを感じさせる

小高い丘の上の入り口へと

建物がまとう空気を感じ、上っていく

重ねられる打ち放しコンクリートは

直島の海と緑を際立たせる

坂を上り、地面と一体となるような建物へ

壁の質感にふれるように

内部空間へと身を沿わせる

切り取られた天井。落ちる光は

踊るように吹き抜け空間に広がる

互い違いの三角形の天窓は

静謐な空間を動的にし

単純化された空間は

光と影を浮き立たせている

建物の中央に設けられた、吹き抜けの階段室は

展示室を緩やかにつなぎ

空間全体にアートの気配が流れ

空間を構成する素材は、記憶をも紡いでいる

島の西側の宮浦港に降り立ち、ぐるりと島をめぐり

大阪での展覧会で目にした
島の風景を紡ぐ建物に会いに来た
それは2025年に建てられた安藤忠雄による美術館
ANDO建築への旅はこれからも続いていく
建築に、風景に、思いを馳せる建築家の心を胸に
小高い丘の上、地面との関係性を強く持つ建物へと
至る。坂道を上る。頭上に広がる青い空。光は建物に
降り注ぎ、壁面を包む丸石、打ち放しコンクリート、
黒い壁の塗装、建物がまとう素材に質感を与える。
建物の構成は複雑さと明快さが入り混じる。動線は
角度を持ち、角を曲がれば空間が広がる。デザイン
される人の動き。三角形のトップライトに、光と影
が踊る吹き抜けに、緊張感とアートの気配が漂う。
日常生活から遠く離れた島。ここでは、美術館とは
建築と環境とアートが、考え抜かれた場所と定義
されている。島の時間、日常からの距離、海が帯びる
光、風景に浮かぶアート。建物は自然を包み、また
包み込まれる。ここに刻まれた30余年の長い月日
を、打ち放しコンクリートの壁に重ねるように。
