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「副業なんて興味ない」と思っていた人事が、気づけば全国の経営者の壁打ち相手になっていた話

「副業? そんなの小銭稼ぎだし、時間も無いし、方法も分からない。そもそも本業からの逃げでしょ。」

正直に言うと、これが数年前の私の思いでした。副業にはまったく興味がありませんでした。外資系企業でキャリアアップを目指していければ、ペイも上がるし、それでいいと思っていました。

このnoteでは、 そう思っていたが、気づけば全国の経営者の壁打ち相手になっていた経緯と、本業と副業がお互いを強くしていく感覚について書いています。

「副業を始めてみたいけど、一歩を踏み出せない」
「本業と副業、両立できるものなのか」
そう感じている方は、多いのではないでしょうか。今日の話が、そんな方のヒントになれば嬉しいです。


1. 「副業なんて興味ない」と思っていた自分が抱えた矛盾

外資系企業でキャリアアップを目指していければ、それでいいと思っていました。目の前の仕事で結果を出し、任される範囲を広げていく。そのことだけで、十分にやりがいを感じられていましたし、給与も悪くない。それ以上のことを考える余裕もありませんでした。

きっかけは、ちょっと皮肉なものでした。ある時、社内で、社員の「キャリア自律 (会社に委ねきりにせず、自分の意思でキャリアを選び取っていくこと)」を後押しする立場として、副業・兼業規程をゼロからつくることになりました。会社として副業を後押しする制度を整え、対象者への説明もしました。

制度としては、悪くないものができたと思います。承認プロセス、対象条件、禁止事項……。労務リスクをきちんと踏まえた、実務的に機能する規程です。でも、つくりながら、ずっと引っかかっていたことがあります。自分自身は、副業をしたことがない。

「キャリア自律のために、外の世界を見てみましょう」

そう社員に呼びかけている人間が、自分では一歩も外に出たことがない。これでは、説得力なんてあるはずがありません。制度をつくればつくるほど、その違和感は大きくなっていきました。

2. コワーキングスペースの縁から生まれた「サンカク」

そんなとき出会ったのが、大阪市福島区にあるコワーキングスペース(異なる仕事を持つ人同士が、一つの空間を共有しながら働く場所)「グランドスラム」でした(私は関西拠点の人間なので)。

イベントやスポット利用で顔を出すようになり、そこでできた縁の一つが、人事コンサルを展開している仲間でした。その方から教えてもらったのが、地方企業と都市圏の大企業で働く人をつなぐプラットフォーム「サンカク」です。

サラリーマンだけをやっていると、出会う人もサラリーマンばかりになりがちです。個人で何かを始めたいなら、すでに個人で事業をしている人たちと出会うほうが、圧倒的に近道になります。コワーキングスペースやイベントに顔を出すことは、かなりおすすめです。

軽い気持ちでサンカクに登録しました。人事関連のプロジェクトに、外部コンサルタントとして関わる話でした。もともとは、期間限定の支援で終わるはずのものでした。

3. 気づけば全国の経営者の壁打ち相手に

ところが、蓋を開けてみると、想像していたのとはまったく違う展開になりました。

いつの間にか、経営層の壁打ち相手として、年単位で組織開発・組織変革を支援するようになっていました。最初は一社だけだったのが、東海、関東、東北と、支援するエリアは気づけば全国に広がっていました。期間限定で関わった会社様の"全て"において、そのような位置づけにしていただいたのです。

そして、本気でコミットして向き合っていると、思いがけない反応をいただくこともあります。あるクライアント企業からは、「これだけ真剣に向き合ってもらっているのだから」と、こちらから言い出す前に、顧問料を一気に倍の価格に上げさせてほしいという申し出をいただいたこともありました。

4. 本業と副業、なぜ両立できるのか

「大企業のHRBP (HR Business Partner、経営に近い立場で人事を担うポジション) と中小企業の顧問、両方やって大変じゃないですか?」とよく聞かれます。

正直に言うと、そこまで大変だと感じていません。理由ははっきりしています。本業でやっている「戦略人事」と、副業でやっていることが、本質的に同じだからです。使っている頭がほとんど同じなんです。

もちろん、外資と日系という違い、オーナー企業(社長がオーナー=株主を兼ねているかどうか)であるかどうかという違いはあります。でも、根っこにあるのは同じ問いです。中小企業ならではの採用の苦しさ、限られたリソースの中でのブランディング、少人数だからこそ難しい組織改編、ローパフォーマー対応……。共通しているテーマは山ほどあります。何より共通しているのは、

「事業を強くするために、人と組織をどう動かすか」

ということ。大企業で培った視点を、中小企業の現場で試す。そして、成功するまで伴走する。そして、中小企業の現場で得た知見を、大企業の制度設計や経営層とのやり取りに活かす。その往復運動が、思っていた以上に自分を鍛えてくれています。

5. 副業で得たものが、本業に還ってくる

副業を始めて、変わったことがいくつかあります。クライアント企業から声がかかって、講演や研修をする機会が増えました。人前で話す経験が積み上がるほど、本業での役員説明や全社向けの発信も、以前より格段にやりやすくなりました。

それから、経営のことを考えながらクライアントを支援する時間が増えたことで、「戦略人事」としての解像度も上がった実感があります。人事の制度や施策を単体で見るのではなく、経営全体の文脈の中で考える。その視点は、副業で鍛えられた部分が大きいです。

6. この先の一手として選んだ、資格と学び直し

もっと経営に近い戦略人事としての幅を広げたいと思い、社会保険労務士の資格を取りました。手続き人事、労務管理という入口から、経営支援まで踏み込んでいけるクライアントとの接点を、これから増やしていきたいと思っています。

あわせて、あえて国内のMBA課程にも入学することにしました。理由は一つではありません。根っこにあるのは、「人事のプロ」であることに留まらず、人事という入口から入って「経営のプロ」を目指したい、経営全体をもっと体系的に学びたいという思いです。

そのうえで、実利的な狙いも二つあります。一つは、本業でのキャリアの広がりのために、国内大手企業の将来のエグゼクティブ層とのつながりを強くしたいから。もう一つは、副業での人脈開拓のために、国内中小企業の後継者世代とつながりたいからです。本業のための学びと、副業のための学びが、同じ教室の中で重なっていく。この重なりは、正直、想像していませんでした。

7. 複業の収益が、次の挑戦への「元手」になる

副業の収入は、本業と比べればまだ小さなものです。それでも、少しずつ着実に大きくなってきています。

何より嬉しいのは、その収入を元手に、いろいろなことに挑戦できるようになったことです。コーチングのプロ養成スクール (150万円程度)、国内MBAの学費(数百万円)、社会保険労務士の受験〜登録関連費用(数十万円)、講演家になるためのスクール費用(数十万円)……。いまはこれらを、副業の収入で全てまかなえるようになっています。

あえて「副業」からスタートしたことには、意味があったと思っています。生活に影響のないお金、という位置づけにできたからです。そこから得たリターンを、また次の挑戦への投資に回す。得たリターンを使って、より高いリターンを狙いに行く。この感覚は、副業を通じて鍛えられたものだと感じています。ある意味、経営的な視点です。

8. もはや「副業」ではなく「複業」へ

いま振り返って思うのは、これはもう「副業」ではないな、ということです。本業の合間に、余力でやっている仕事ではありません。どちらも本気でやっていて、どちらもお互いを強くしています。

この流れは、私だけの特殊な話ではなさそうです。パーソル総合研究所の調査によれば、企業の副業容認率は2025年時点で64.3%にのぼり、2018年の50.9%から一貫して上昇を続けています。副業人材を外部から受け入れる企業の割合(副業受入率)も29.1%まで伸びており、「副業を認めるかどうか」の議論から、「複業人材をどう活かすか」の段階に、社会全体が移りつつあると感じています。

これから先、この形はもっと大きくできると思っています。「副業」ではなく「複業」として。「キャリア自律を」と社員に伝え続けてきた自分が、一番遠回りしてそれを実践することになりました。でも、遠回りしたからこそ、いま自信を持って言えるのだと思います。

9. まとめ:一つの収入源、一つの肩書きだけで生きる時代の終わり

今回のポイントを整理すると、

  • 「キャリア自律」を社員に説きながら自分は一歩も外に出ていない、という矛盾がきっかけだった

  • コワーキングスペースでの縁から、地方企業と都市圏人材をつなぐ「サンカク」に登録したことが転機に

  • 期間限定のはずの支援が、いつの間にか年単位で経営層の壁打ち相手をする関係に発展

  • 本業(戦略人事)と副業(中小企業顧問)は、根っこにある問いが同じだからこそ両立できる

  • 副業で得た収入を、資格取得やMBA、講演スクールなど次の挑戦への「元手」にしている

  • 企業の副業容認率は64.3%(2025年)まで上昇しており、「複業」が当たり前になる流れは社会全体で加速している

一つの収入源、一つの肩書きだけで生きる時代は、もう終わっています。得たものを、また次の挑戦に再投資していく。それが今のところ、自分にとって一番地に足のついた生き方だと思っています。

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