見出し画像

司法書士のための、今さら聞けないAIの基礎③ ~司法書士のAI活用の“現在地”~

前回(②)では、AIが業務に入ってきた「6つの段階」をお話ししました。

今回はその流れを踏まえて、司法書士のAI活用の“現在地”――いま、私たちの業界で実際に何が起きているのかを見ていきたいと思います。

進む「二極化」

AIの波は、司法書士業界にもかなり押し寄せています。そして今、AIを積極的に使う事務所と、あまり使えていない事務所の二極化が進んでいるように感じています。

「使えていない事務所」にも2つのタイプがある

ひとくちに「使えていない」と言っても、中身は分かれると思います。

ひとつは、AIにあまり関心がない、あるいは「AIはまだ実務では使えない」と思っている事務所です。例えば、「どうせハルシネーション(AIが、事実と異なるもっともらしい内容を、さも本当のように答えてしまう現象)が多いんでしょう」といった見方ですね。

もうひとつは、使いたいけれど守秘義務や個人情報保護の観点から自由に使えず、ハードルを感じている事務所です。

ここで難しいのは、個人情報をまったく気にせずどんどん使う事務所が発展していく一方で、「正しく使おう」と慎重になっている事務所ほど、なかなか踏み出せず差が広がっていく、という構図が生まれかねないことです。

まじめな事務所が取り残されるという、少し皮肉な格差が広がるおそれもあるのではないでしょうか。

士業の中でも、少し遅れ気味

率直な印象を言うと、司法書士業界は、税理士業界や弁護士業界に比べて、AI活用がやや遅れているように感じます。

これは、ハンコ文化や、1か所に集まっての決済、直接面談による本人確認、対面での相談など、旧態依然とした体制がまだまだ残っていることも、一因なのかもしれません。

「引き離されない」程度に、ついていく

「あまり使えていない」「そもそも、使いたいけれど、何から始めればいいかわからない」という先生は、まだまだ多いと思います。そういう方に、私がいつもお伝えしているのはこういうことです。

別に、最先端に追いつかなくてもいいのです。

AIの進化はあまりに速いので、出てくるもの全部についていくのは、正直なかなか難しい。大事なのは、一定の遅れは保ったままでいいから、引き離されないことだと思っています。

そのためには、自分の使える範囲・わかる範囲で、しっかり使っていく。これに尽きます。

学問ではなく、「実装」する

もうひとつ大切なのは、AIを「座学」として勉強しようとしないことです。

本を読んで理解するより、実際に触って、自分の業務に少しずつ組み込んでいく。この姿勢のほうが、結果的にずっと早く身につくと感じています。

では、何から始めるか

最初の一歩としては、ChatGPT・Gemini・Claudeのいずれかを選んで、まずは触ってみるのがよいと思います。

これらは課金しないと十分には使えないことがほとんどなので、自分に合いそうなものを1つ選んで課金するのがおすすめです。

参考までに、私はClaude・Gemini・ChatGPTのすべてに課金しています(これについては以前の記事で書いたとおりです)。


一方で、事務所全体で使う基盤としてはGoogle Workspaceを採用していますが、これはまた別の機会にお話しできればと思います。

一番良くないのは、怖いからという理由で何も使わないという選択です。気をつけながら使う。これが私たち司法書士のあるべき姿なのではないでしょうか。

今回のまとめ

司法書士のAI活用の現在地は、まだまだ使えていない事務所が多い、というのが実情です。

しかしながら、今後は「使っていく」という流れに、確実になってきています。

そのなかで、これから積極的に使っていく事務所と、あまり使えていない事務所の二極化が、さらに進んでいくと思います。いま一歩を踏み出せるかどうかが、これからの差につながっていくのではないでしょうか。

とはいえ、ただ無防備に使えばいいわけではありません。私たち司法書士には、避けては通れない、いくつかの壁があります。具体的には、ハルシネーションのリスク、情報漏洩のリスク、個人情報保護法、そして守秘義務といった壁です。

次回は、こうした壁とどう向き合っていくかを、じっくり掘り下げていきたいと思います。

いいなと思ったら応援しよう!