【あなたはなぜ嫌われる?③】相手の心の傷に触れている
「え、私が何か悪いことしたかな……?」
心当たりがないのに、なぜか特定の人に避けられたり、冷たい態度を取られたり……。
そんな経験、ありませんか? もしかしたら、あなたの何気ない行動が、相手のとてもデリケートな部分に触れてしまっているのかもしれません。
こんにちは。メンタルケアマガジン「それでもきっと、だいじょうぶ」へようこそ。
ここでは、あなたが少しでも心穏やかに過ごせるような、そんなヒントをお届けできたらと思っています。
さて、前回は「あなたに誰かを重ねている」ことで、相手があなたに対して特別な感情を抱いてしまうケースについてお話ししました。心当たりがないのに誰かに嫌われる、というのは、本当に戸惑いますし、悲しい気持ちになりますよね。
今回は、また別の角度から。「あなたの行動が、相手の心の傷に触れている」というケースについて、一緒に考えていきたいと思います。
ちょっとこのマガジンの記事にしては長くなってしまいましたが、大切なお話なので、気になった方はぜひ最後まで読んでみてください。
(無料でも途中まではお読みいただけるので、気になるキーワードがあったら、ご自身で調べてみるなど、ご活用ください)
心の傷と「トラウマ」について
「心の傷」という言葉、よく耳にするかもしれません。
ここで少し触れたいのは、「トラウマ」についてです。
「トラウマ」というと、日常的な言葉として、「過去の嫌な出来事が、今の自分にも影響して、ふとした瞬間に思い出して嫌な気持ちになる」といった意味で使われることも増えてきました。
ですが、精神医学の世界では、本当に命の危険を感じるような体験や、人の尊厳がひどく傷つけられるような体験によって、日常生活を送るのが難しくなるほど、過去の記憶が何度も蘇って苦しんでしまう……そういった深刻な状態を指すことがあります。
以前、このマガジンでも「発達性トラウマ」について少し触れたことがありましたね。これは、主に小さい頃……特に乳幼児期の逆境経験が原因となって作られるトラウマのことです。
このトラウマがもたらす自動的な防衛反応は、ご本人にとってはあまりにも当たり前で、まるで自分の「個性」の一つのように感じられることもあります。
特定の考え方のクセや、つい取ってしまう行動が、実はこのトラウマの影響だったとしても、周りからは「まあ、そういう人なのかな」くらいで、日々の生活が大きく破綻するわけではない場合も少なくありません。だからこそ、ご自身でも「自分が発達性トラウマを抱えている」とは気づきにくいのです。
一方で、さらに深刻な複雑性トラウマを抱えている方は、本当に些細な、日常の何気ない動作であっても、過去のトラウマと結びついてしまい、まるで危険が迫っているかのような強い反応を示してしまうことがあります。
それが、特に悪意も危険もないはずの行動であっても。
ある特定の状況になると、急にパニック状態になってその場から逃げ出してしまったり、あるいは逆に体が凍りついたように動けなくなってしまったり、時には自分が自分でないような感覚に陥って、その間の記憶がすっぽり抜け落ちてしまうことだってあります。
これは、「命が危ない!」と体が(正確には脳が)自動的に判断して起こす反応なので、ご本人にもどうすることもできないのです。
本当に、ご本人にもどうしようもない反応なのです。
何気ない行動が「トリガー」になることも
さて、本題の「あなたの行動が、相手のトラウマに触れている」というケースについて考えてみましょう。
トラウマを抱えている方(発達性トラウマをお持ちの方も含まれます)は、本当に何気ない日常の仕草や言葉、あるいは特定の状況によって、過去のつらい記憶が呼び覚まされ、トラウマ的な反応をしてしまうことがあります。
例えば、
・相手の体に、ポンと軽く触れる
・髪をかき上げる仕草
・少し大きな声や、怒鳴り声に似たトーン
・複数の人に囲まれるような状況
・特定の場所や匂い
など。
トラウマの原因となった出来事によって、本当に人それぞれ、多種多様な「トリガー(引き金)」があります。
見てわかる通り、これらの行動の多くは、普通に考えれば「失礼」でもなければ「攻撃的」でもありませんよね。
でも、トラウマを抱えている方にとっては、そうした私たちの「なんでもない日常の行動」が、まるで「脅威」のように感じられてしまうことがあるのです。
あなたが無意識のうちに、相手にとってのこれらの「トリガー」を引いてしまった場合。
相手は、その「トラウマ的な過剰な反応」から自分を守るために、あなたを避けようとするかもしれません。
あるいは、もっと抑え込まれたトラウマの場合、はっきりとした理由も分からないまま、あなたに対して嫌悪感を抱いたり、攻撃的な態度を取ったり……といった反応に至ることもあります。
どちらが悪い、という話ではなく
これは、どちらかが「悪い」という単純な話ではありません。
もっと言うなら、「相性」が良くなかった、と言えるのかもしれません。
でも、もしあなたが「あれ?」と気付けるなら、相手の反応の「トリガー」になっているかもしれない自分の行動を、注意深く観察することで見つけられることもあります。
例えば、相手が「なんだか急に攻撃的になったな」「急に私を避けるようになった気がする」と感じた時。
その直前の状況や、ご自身の行動を、そっと思い返してみてください。
よくよく考えてみると、何かしらの「兆候」があったことに気づくかもしれません。
「なんだか、急にビクビクし始めたように見えたな」とか。
「さっきまで普通だったのに、急に口調が硬くなったな」とか。
そういった小さな変化が、サインであることも多いのです。
繰り返しますが、「私はただフレンドリーに肩を叩いただけだし、別に悪いことなんて何もしていないのに」というのは、あくまであなたの世界の感覚です。
相手の世界にとっては、その行動が、まるで銃口を向けられたかのように感じられている可能性だってあるのです。
自分の世界観や常識だけを物差しにするのではなく、「肩を叩かれるという行為が、ある人にとっては命を脅かされるほど恐ろしく感じられることもあるんだな。この人は、そうなのかもしれない」と、相手の世界を想像し、理解しようとすることが大切です。
なぜなら、そうした反応をしてしまうご本人自身も、自分の行動の理由や、何がそうさせているのかに気づいていない場合も、実は少なくないからです。
トラウマ研究の第一人者であるベッセル・ヴァン・デア・コーク医師の著書「身体はトラウマを記憶する」には、こんな事例が紹介されています。
その女性には、12歳より前の幼い頃の記憶が全くない。けれど、その頃のことを想像して絵を描くように促されると、どう見ても性的な虐待を受けていたことを示すような絵を描く。にも関わらずご本人は心の底から「自分はきっと幸せな幼少期を過ごしたはずだ」と信じている。
あまりにもつらい真実に直面する時、私たちの脳や意識は、このように論理をねじ曲げてでも、自分自身を守ろうとすることがあるのですね。
私たちにできること
では、もし「この人は、何かトラウマを抱えているのかもしれないな」と感じた時、私たちには何ができるでしょうか。
まずは、そう気づけるようになること。これが第一歩です。
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