黄金の時代、キラキラの首輪[茶トラ猫まいけるアイドル伝説] 第4話
〜新宿歌舞伎町、大きい黒のサングラスに隠したおもちの涙〜
『レッツゴーニャンニャン』の爆発的ヒットにより、まいけるたち「ニャらシ」を取り巻く環境は一変しました。
行く先々でファン猫に囲まれ、移動は常にスモークガラスの高級ペットカート。しかし、その「黄金の時代」の光が強ければ強いほど、彼らの影もまた濃くなっていきました。
1. 超多忙な「アイドル猫」の悲劇
デビューから数ヶ月。ニャらシのスケジュール帳は、真っ黒な肉球スタンプで埋め尽くされていました。
朝4時に「おはニャん」の生放送、昼は雑誌『週刊猫(にゃん)ポスト』のグラビア撮影、夜は全国各地でコンサート。睡眠時間は日向ぼっこの10分間だけ。
そんなある日、癒やし系担当のおもちに異変が起きました。
「……もう、無理だよ。ボク、アイドルじゃなくて、ただの座布団になりたいんだ」
おもちは、事務所が用意した「純金製の超重量サングラス」を床に投げ捨てると、テレビ局の楽屋から姿を消してしまったのです。

2. 歌舞伎町の喧騒、消えた白猫
「おもちがいなくなった!?」 リーダーのまいけるは、血眼になって街を探し回りました。
目撃情報を頼りにたどり着いたのは、不夜城・新宿歌舞伎町。 ネオンが激しく明滅し、野良猫たちが鋭い目で獲物を狙う、代々木の路地裏よりもずっと危険な街です。
まいけるたちは、目立ちすぎる「金の首輪」をバンダナで隠し、捜索を続けます。すると、ひときわ騒がしい一角から、聞き覚えのある音が聞こえてきました。
「ジャラジャラジャラ……ニャーーン!」
そこは、24時間営業のパチンコ店「ニャンキチ歌舞伎町店」でした。
3. パチンコ台の上の「おもち」
店内の隅っこ、新台『CR・またたび天国』の椅子の陰に、おもちはいました。
彼は、どこで手に入れたのか、自分の体よりも一回り大きい「大きな黒のサングラス」を不自然にかけ、パチンコ玉を夢中に打っていたのです。

「おもち! 何してるんだよ!」 まいけるが駆け寄ると、おもちは大きな黒のサングラスをずらし、虚ろな目で言いました。
「まいける……見てよ。ここには『シンクロ』も『カメラ目線』もない。玉が回る音を聞いてるだけでいいんだ。ボク、キラキラの首輪をつけて踊るより、こうやって鉄の玉を追いかけてる方が、よっぽど自分らしい気がするんだよ……」
4. リーダーの説得と「金のサングラス」
おもちは、あまりの忙しさに「自分」を見失っていました。
毎日カメラに向けさせられる「作られた笑顔」。
本当は眠いのに、無理やりハイテンションで歌う日々。
おもちにとって、アイドルの栄光は重すぎる金のサングラスと同じで、視界を遮る邪魔なものでしかなかったのです。
そこへ、店内にニャらシの曲『レッツゴーニャンニャン』が流れ始めました。 すると、店内にいた荒くれ者の野良猫たちが、リズムに合わせて尻尾を振り始めたのです。

「おい、この曲……。聴いてると、明日のゴミ拾いも頑張れる気がするニャ」 一匹の傷だらけの老猫が呟きました。
まいけるはおもちの肩に前足を置きました。
「おもち、聞いて。僕たちがつけているのは、ただの重い金じゃないんだ。あの老猫さんの心を温めるための、光なんだよ。おもちが座布団になりたいって言うなら、ファンのみんなが疲れた時に座れる、世界一あったかい座布団になればいい。それが僕たちのアイドルだろ?」
5. 栄光の再会
おもちは、黒のサングラスをゆっくりと外しました。その瞳には、パチンコ店のネオンではなく、かつて代々木公園で見た星空のような輝きが戻っていました。
「……まいける、ごめん。ボク、もう一度踊るよ。でも、このサングラスは持って帰ってもいいかな? ライブの衣装にしたら、きっと面白いと思うんだ」
翌日のコンサート。 ステージには、金の首輪に加えて、お揃いの「金のサングラス」をかけた5匹の姿がありました。

それは、単なる「成金アイドル」の姿ではありません。挫折を知り、痛みを分かち合った、真のトップアイドルの風格でした。
「黄金の時代」は、ここからさらに加速していきます。
しかし、彼らはまだ知りませんでした。この後に、事務所を揺るがすジャニー猫さんの健康問題という、巨大な挫折が待ち構えていることを……。
第4話 完
次回予告
グループ内で「自分たちの音楽」を追求したいルナと、事務所の伝統を守りたいレオが、築地から直送されたある物で些細な衝突。 内部崩壊の危機を、まいけるはどう乗り越えるのか?
第5話:見えない影と、去りゆく仲間 をお楽しみに!
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