見えない影と去り行く仲間 [茶トラ猫まいけるアイドル伝説] 第5話
〜マグロかカツオか!? 絆を裂く缶詰の溝〜
歌舞伎町での「おもち失踪事件」を乗り越え、さらに絆が深まったかに見えたニャらシ。
しかし、頂点に立ち続けるストレスと過密スケジュールは、メンバーの心の余裕を少しずつ削り取っていました。
そんな中、些細な、しかし猫にとっては死活問題である「食」を巡り、グループ崩壊の危機が訪れます。
1. 楽屋に漂う不穏な空気
それは、全国ツアー最終日の直前、テレビ局の豪華な特別楽屋で起きました。
その日のケータリング(差し入れ)は、超高級芸能事務所ニャニーズ御用達の「築地直送・究極の猫缶シリーズ」。
用意されたのは、最高級の「極みマグロ缶」と「至高のカツオ缶」でした。
しかし、手違いでそれぞれ1缶ずつしか届いていなかったのです。
「今日はダンスで激しく動いたから、鉄分の多いカツオを僕が先に食べるよ」 ワイルド担当のレオが、鋭い爪でカツオ缶を引き寄せました。
すると、クールなルナが、冷たい視線でそれを遮りました。
「ちょっと待って。私は次の曲でソロバラードを歌うの。喉を潤すには脂の乗ったマグロが必要。私が先に選ぶのが筋じゃない?」
2. マグロ派vsカツオ派、勃発
「筋? 僕はグループのパワー担当だ。僕がバテたら、あのバック転の塔はどうなるんだよ!」とレオが唸れば、ルナも負けじと毛を逆立てます。
「パワーだけじゃアイドルは務まらないわ。私の表現力があってこそのニャらシよ。カツオばっかり食べて、頭まで魚の骨になったんじゃない?」

最初はただの、どちらが先に缶詰を食べるかの順番争いだったはずが、いつしか言葉のトゲは「仕事へのスタンス」へと飛び火していきました。
レオの思いは、「伝統のダンスを完璧に踊るのがニャニーズだ!」
一方、ルナの思いは、「古い型に縛られすぎて個性を消すなんて、私はゴメンよ!」
「もういい! ルナとはやってられない! 僕は一人でも踊れる!」レオが吠えると、ルナも「望むところよ、私は私で自分らしい音楽を探すわ!」と言い放ち、楽屋のドアを爪で引っ掻いて出て行ってしまいました。
3. 揺らぐリーダー、まいけるの苦悩
残されたまいける、おもち、プリンは、開いたままの2つの缶詰を前に呆然と立ち尽くしました。
「まいける……これ、どうするの?」おもちが震える声で尋ねます。
リーダーのまいけるは、手付かずのマグロとカツオを見つめました。

かつて代々木の路地裏で、一つの煮干しを分け合っていた頃には考えられないような、贅沢で、そして悲しい喧嘩でした。
「……僕たちは、お腹が満たされるうちに、心まで太ってしまったのかもしれない」
まいけるは、ジャニー猫さんの言葉を思い出しました。
『YOUたち、一番大切なのは、隣の猫が何を食べてるかじゃなくて、隣の猫が笑ってるかどうかだよ』。
4. 決戦のステージ、無音のダンス
仲違いしたまま、コンサートの幕が上がりました。 ステージ上ではプロとして振る舞うルナとレオでしたが、呼吸が合いません。
シンクロ率100%だったダンスはガタガタになり、ファン猫たちも「何かおかしい……」とざわつき始めます。
中盤のMC。まいけるは意を決して、マイク(小型ピンマイク)を取りました。
「みんな、聞いて。今日、僕たちは最低な喧嘩をした。マグロかカツオか、そんなことで仲間を傷つけたんだ」
観客席から「ええーっ!?」という驚きの鳴き声が上がります。
「でもね、ルナ。君の繊細な歌声は、マグロみたいに華やかだ。そしてレオ。お前の力強いステップは、カツオみたいに真っ直ぐだ。どっちが先かなんて関係ない。両方揃って、初めて最高の『海鮮丼』……じゃなくて、最高の『ニャらシ』になるんだよ!」
5. 涙の「ミックス・フレーバー」
まいけるの言葉に、ルナとレオの動きが止まりました。 二匹はステージの端と端で見つめ合い、ゆっくりと歩み寄りました。
「……ごめん。カツオが食べたかったんじゃない。ただ、認めて欲しかったんだ」と涙ぐむレオ。 「私も……。あなたのパワー、本当は頼りにしてるのよ」と涙ぐむルナ。
二匹はそっと鼻を寄せ合い、仲直りの挨拶(クンクン)を交わしました。

その後のパフォーマンスは、伝説として語り継がれるほど熱いものでした。
マグロの華やかさと、カツオの力強さが混ざり合い、会場はこれまでにない一体感に包まれました。
しかし、その成功を影で見つめるジャニー猫さんの足取りは、心なしか以前より重くなっているように見えました。栄光の時代の裏で、運命の時計の針は確実に進んでいたのです。
第5話 完
次回予告
ついにニャニーズに激震が走る! 事務所の精神的支柱、ジャニー猫さんが病に倒れ、天国へと旅立ってしまう。 「YOUたち、あとは頼んだよ……」 残されたまいけるたちを待ち受けていたのは、世間からの激しいバッシングと、事務所分裂の危機だった。
第6話:カリスマの旅立ち、冬の時代 をお楽しみに!
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