アトムの頭の2つの突起は、どの角度から見ても重ならない原則
皆さんは、「ヒックとドラゴン」って知ってる?

これはドリームワークスが2010年に公開した3DCGアニメ映画で、アメリカでは結構ヒットし、アニー賞で10冠に輝くなど評判も上々だったのよ。
以降、続編も幾つか制作されている。
正直、日本では全然ヒットしなかったんだけど。
内容はとても面白いので、ぜひお薦めしておきたいほどなんだが・・。
ただ、ひとつ驚いたのは、ここにきてこれが実写映画化されたこと。

この作品、今月9/5から絶賛公開中である。
割と評判いいみたいだよ。
この実写化作品の何に驚くかというと、
アニメの監督/脚本を務めた人がそのまま実写でも続投し、音楽もまるごとアニメのまんま、ストーリーもアニメのまんまらしいのよ。

つまり、この実写化にはドリームワークスが直接絡んでるということだね。
しかも、
今度の実写の方が、世界的に見ると興行成績でアニメ版を上回っているペースらしい!

なるほど。
日本ではともかく、やっぱ全世界市場で見ると依然【実写>アニメ】の構図ということか・・。
そういや、ちょっと前にはディズニーでも実写版「ライオンキング」が成功してたもんなぁ。
というか、上の画を見ていただければお分かりだと思うが、これ「実写」といいつつも、ドラゴンは思いっきりアニメのまんまなんだよね。
つまりこの映画、本質は<実写とアニメの融合>である。
キャラだけはナマの人間が演じるところに今回のキモがあるようで、確かにアニメ版ではラブシーンになると少しアレなんですよ↓↓

正直、萌えない・・
・・というか、ただ人形と人形がチューしてるようにしか見えんわ。
やはり、こういうのは実写の2人↓↓のナマのチューの方が萌えるのは間違いないと思う。

おそらく、実写版「ヒックとドラゴン」の成功を受けて、アメリカでは今後【実写×アニメ】が、ひとつのニュースタンダードになっていくんじゃないかな?
特にドリームワークスは「活路を見出した!」と思ってるに違いない・・。
もともと、アメリカのアニメは3DCGが主流ゆえ、実写との融合はそれほど難しい作業ではないんだ。
思えばJキャメロンの「アバター」だって、あれはほとんど【実写×アニメ】みたいなもんだったろ?

しかし非常に残念な話だが、このおいしそうな【実写×アニメ】という市場(おそらく今後世界のメイン市場?)に、我が国が今後食い込むことはほぼ不可能である。
なぜなら、日本のアニメは3DCGではなく、依然2Dがメインだからさ。
2Dアニメと実写の食い合わせの悪さは、かつてに手塚治虫先生が見事に実証してくれている。


自ら、こうして名作「火の鳥」をネタ系映画にしてしまった手塚先生の狙いが分からんww
とにかく、上の画を見てお分かりのように、2Dと実写の融合は無理である。
ということで、日本アニメ界はこれまで3DCG分野に本腰入れてこなかったことのツケとして、【実写×アニメ】という国際的においしい市場を前に、今後ただそれを指くわえて見ていなければならないという残念な状況にあるわけです。
「・・えっ?何言ってんの?今『鬼滅』の映画が大ヒットしてるじゃん?全然、日本アニメは何も心配いらないじゃん?」

と言いたい人も多いでしょうが、でも正直、「鬼滅」の興収300億突破などは世界的に見ると大したニュースでも何でもないんですよ。
というか、実写版「ヒックとドラゴン」は、もう余裕で興収500億を超えてますから・・。
もともと、アニメ版「ヒックとドラゴン」からして「鬼滅/無限列車編」より世界興収数値では上である。
でも、なぜか日本メディアはそういうニュースをほとんど国内に流さないのよ。
それより「『鬼滅』興収絶好調!」「日本国内のみならず海外でも人気!」と皆が喜ぶニュースばっかり流して、「世界では、もっと売れてるアニメが他にもたくさんある」という肝心なニュースの方は黙殺している。
この傾向、昔から私は不思議なんだよねぇ・・。
まぁ、嘘の報道をしてるわけじゃないから別にいいんだけど、ただ、この「日本アニメは相変わらず安泰」とする恣意的な情報コントロールの意味は一体何なのか、個人的には少し気になっている。

・・いや、国内アニメファンは「日本アニメ最強!」と確かにノーテンキなもんだろうが、かたや、現実に直面してるアニメ制作会社の方はというと、彼らはそれなりにこのへんの危機感を分かってるみたいなんだよね。
だから、どこも3DCG部門にチカラを入れてるし(あの手描き信奉のジブリですら)、OLMのように社内に実写セクション(三池崇史のセクション)を設置してるところもある。
彼らは我々アニメファンほどにはノーテンキではなく、このままいくと日本アニメの未来は暗いことをちゃんと分かってるんだわ。

ひとつ、最近私が注目してるのはProductionI.Gだね。
ここは日本の制作会社の中で最もハリウッドとパイプの太いところであり、あるいは最近発表された庵野秀明を役員に迎えた件、あれも「アニメでなく実写部門を想定して」という可能性はゼロじゃない、と私は思うんですよ。
意外と知られてない事実だが、ProductionI.Gは以前に実写版「亜人」の制作を手掛けていたわけで・・。


ところで、皆さんは<ProductionI.G三大神>というのをご存じですか?
・・そう、言うまでもなく
・黄瀬和哉
・西尾鉄也
・沖浦啓之
というリアル系アニメーターの3名ですね。
この中でも、特に「規格外のバケモノ」と称されてるのが沖浦啓之であり、彼の才能の凄さは、漫画家でいうと大友克洋、もしくは鳥山明に近いものだとされている。



沖浦、大友、鳥山。
この3名の画の共通点が分かりますか?
それは、この3名とも
パース(物体の立体感/奥行きの表現)が完璧なんですよ。

これは「空間把握能力」という素養を要する領域であり、ぶっちゃけ凡人が上記3名のような画を描くのはかなり難しいですよ。
ただ、日本の漫画/アニメはパースをむしろ狂わせることを持ち味としてるのもまた事実。
<金田パース>

<アトムの髪型>

「漫画の神様」と称される手塚治虫先生は
「アトムの髪型って不思議なんですよね。
どの角度から見ても2つの突起部分が重なることがないんだから」

と自ら作画のパース矛盾に言及し、「漫画とはそういうものだ」と総括したのよ。
逆に、パースが常に完璧な大友克洋の画を認めようとしなかったらしい。
これ、難しい問題だよね。
一概に手塚先生の言い分が間違ってると言えないが、でも、だからといって大友先生の画を否定するのもおかしな話である。
また、「日本の絵のパースの狂いは大昔から始まっている伝統」という見方もある。


・・そう、古くから西洋の画には常にパースという呪縛がある。
逆にパースの呪縛があるからこそ、欧米ではその完璧な表現技術としての<3DCG>があっさり定着したのかもしれないよね?

一方、日本の漫画/アニメは、あくまで<平面>の表現である。

・・いや、これは一概に良し悪しをいえる話ではないんだが、ただ沖浦さんのようなタイプのアニメーターは3DCGが出てきた時、ジレンマがあったと思うのよ。
3DCG作画とは、もともとパースが完璧なものである。
つまり、手描きでは沖浦さんにしか表現できなかったことすら易々とやってのけちゃう技術さ。
これは、今まで写実を売りにしてきた画家が、カメラ(写真)という文明の利器が出てきた時、「うわっ、俺これからどうしよう」となってしまうのと同じことである。
ちなみにだが、後輩の黄瀬さんは敢えてこっち側↓↓に舵を切ったりもしてるよね。

一方、鳥山先生は「Dr.スランプ」の頃によく見せてた超絶作画がだんだんとなりを潜めるようになり、

「ドラゴンボール」では、回が進めば進むほどに「ジャンプっぽい漫画」になっていったわけです↓↓

「いや、これこそ↑↑が鳥山先生の画じゃないか!」と言いたい人もたくさんいるとは思うが、でも私は少し違う捉え方だわ。
先生は本来、もっとメカとか背景とか諸々を描きこみたい人だったと思うし、彼が「早く『ドラゴンボール』終わらせたい」とボヤいてたことの意味はとてもよく分かります。
そして、大友克洋先生。
確か、大友先生のアニメ監督最新作はこれだよね↓↓
「火要鎮」監督/大友克洋(2013年)


あの大友先生が、敢えて「平面」の日本画をアニメーション化したあたりが逆にめっちゃ興味深いわ~。


これはオムニバス「SHORTPEACE」の中の一篇で、マジ一見の価値があると思うから未見の方は是非ご覧になってみてください。
「今後いくらリアル系を志向しようとも、3DCGにはいきませんから・・」という大友先生の意思表明とも解釈できるアニメです。
「ももへの手紙」監督/沖浦啓之(2011年)


さて、沖浦さんについてだが、彼は「ももへの手紙」以降すっかりご無沙汰だな~と思ってたが、どうやら彼は今、ProductionI.Gにおらず、スタジオカラーの方に拠点を移したみたい。
・・ん?
庵野さんがProductionI.Gの役員に入り、一方で沖浦さんがスタジオカラーに移ったとは、これ、どゆこと?
・・近いうち、ProductionI.G×カラーでまた大きなプロジェクトが発表されそうな気がする

このへんカギを握ってるのが、私は沖浦さんであるような気がしてならん。

