貴方は、富野由悠季の主張を正しく理解できてますか?
最近、YouTubeで「戦後80年/富野由悠季監督に聞く(ディレクターズカット版)」というのを見たんだ。
いや、動画といっても内容はTBSラジオが放送してるラジオ番組の音源で、荻上チキ氏がパーソナリティをやってるやつだった。


いや、正直皆さんも日常の中で<ラジオ>を聴く機会なってほとんど無いと思う。
クルマに乗る時ぐらい?
私も学生の頃には「オールナイトニッポン」とか聴いてたけど、それ以降はまるでご無沙汰である。
そういや、学生の頃はFM番組もよく聴いてたし(FMの専門誌も購買してた)、あの頃はラジオDJが我々にとって聴くべき音楽の「先生」だったんですよ。
佐野元春さんとか、渋谷陽一さんとか。
確か、日本で初めてラップをラジオを流したDJは佐野さんじゃなかったかな?
それを聴き、しばらくRUN DMCにハマっていたのも今となっては懐かしい思い出である。

・・とはいえ、テレビ、スマホ、パソコンなど他媒体が様々ある今の時代にラジオって、明らかに<時代遅れのメディア>なんだよね。
雑誌もまた、そうである。
昔は雑誌媒体が腐るほどあったし、そういうのがラジオ同様我々にとっての「先生」だったんだが、今は出版冬の時代に入り、かなり淘汰されてきてるだろうねぇ・・。
当時、私の「先生」は月刊「宝島」(編集に町山智浩がいた頃)でしたよ。
見るべき映画などは、全てここで教えてもらったものである。

さて、話をラジオに戻そう。
ある意味、今において<時代遅れ>の媒体であるはずのラジオが、こうしてしぶとく生き残ってるのは私にとって意外な顛末ではあるんだが、その意味というのは、やはり他媒体にはない<強み>がラジオにはあるからだと思うんだよね。
で、その<強み>とは、圧倒的な情報量、ようするに尺の長さなんだわ。
前述の富野由悠季インタビューなんて、私が聴いたのは尺が2時間もあったんですよ?
いや、それも編集版で2時間だから、本音源は多分もっと長かっただろう。
今はTikTokなどの興隆でお分かりのように、「短く簡潔なものほどいい」とされる時代。
それに対し、ラジオはむしろ真逆のベクトルを示すことで稀少性を示してるのかもしれない。
そりゃね、84歳のお爺ちゃんの支離滅裂な長い話を2時間も聴く奴なんて、世の中にはそんなにたくさんいませんって・・。
でも、「長くても聴きたい」という私みたいな物好きも稀にだが存在するんですってば!

そういう意味で、この令和にも<ラジオ>という旧時代の媒体が生き残ってくれていることはホントにありがたいと思った。
【富野由悠季ロングインタビューの概要】

①パーソナリティ荻上氏の「おぎうえ」という姓がどうしても覚えられないそれはなぜか、という話(一見、どうでもいい雑談に思えて、このくだりがこの後の重要な伏線になっている、なかなか巧みなイントロだった)
②虫プロに入った経緯、いかに当時の虫プロが酷かったかという話
③高畑勲、宮崎駿と一緒に仕事をした時の話(どうも、この御二人との邂逅が彼にとっての覚醒、原点になったみたいだね)
④最近の若いアニメ演出家たちは驚くほど本質を分かってない、だから大体は実際消えていくという話(ただ細田守と新海誠の存在は例外としていた)
⑤自身の戦争体験(子供時代)の話
⑥戦前戦中、科学者で賢ったはずの父が、戦後には腑抜けた人間になったという話
⑦盾の会(右翼/三島由紀夫)の話、自衛隊の話、「自衛隊は軍隊ではない」という欺瞞についての話
⑧日本の軍隊は、敗色濃厚になると「階級が高い者順に」戦地から撤退したという話
➈玉音放送後、軍人たちは軍事物資を盗んで脱走し、また、それを処罰するべき上層部も空洞化していたという話
➉最近PCのAI機能を使ってみたが、分かったのは「AIは答えを出さない」ということだった話
⑪「ガンダム」について、スポンサー(バンダイ)は玩具にしか興味なく、物語(戦争)にはまるで関心が無かった、という話
⑫ガンダムファンは、「ガンダムは<戦闘機>である」ことを理解してない(ガンダムをガンダムとしか認識せず、常に思考停止している)という話
⑬統治論「人間は目に見える範囲でしか領土を統治できない」⇒「宇宙でもスペースコロニー統治は無理なのでは?」という話
⑭今年になり、ようやく自分の中で<ニュータイプ>の概念が完成した
<ニュータイプ>・・既存インフラの管理・維持できる胆力のある人材
ようするに一般人、という話
⑮プーチン批判、トランプ批判の話
⑯ヒッピー批判、ロックンローラー批判、統治論のない反抗への批判の話

いやいや、富野さん相変わらずお元気ですねぇ
84歳という高齢で、ここまで精力的にメディア露出するお爺ちゃんというのも彼ぐらいですよ。
このインタビューは結構富野さんも楽しかったのか、この音源は会話の途中にコンコン!という音を拾ってますね。
これは、ノッてきた富野さんが話しながら机を拳で叩いてる音だな?

今回は、聞き手の荻上チキさんがとても相性良かったと思う。
基本、富野さんの話は政治論、戦争論、歴史論がそのほとんどを占めてる為、そのへんに精通してる人じゃないと会話が成立しないんですよ。
荻上さんは日本の言論人の中でもそこにかなり精通した人ゆえ、スムーズに会話が進んで富野さんもさぞキモチ良かっただろう(落合陽一との対談の時も富野さんは目をキラキラさせてたよなぁ・・w)。

幸い、私はたまたま学生の頃に政治学、歴史学を専攻してたことで富野さんの論旨や「ガンダム」を辛うじて理解できるが、でも「ガンダム」ファンの全てがそういう道を通ってきた人じゃないだろうし、そのへんのズレみたいなものが富野さんは歯がゆいみたいで・・。
自分の言わんとしてることが、何ひとつファンには伝わってない、と。
まぁ確かに、マックスウェーバーすら知らない人が「ガンダム」を理解できるとも思えん・・

で、そのへんのジレンマを語ってるのが、上の項目でいう⑪⑫なんですよ。
このへんのくだりで、富野さんは「衆愚」という尖った言葉を敢えて出してきている。
衆愚、知性のないアホな民衆、もしくは自分はアホだと自覚してない民衆のことである。

これねぇ、本来こういう場で絶対に使っちゃいかんワードである。
だって、それを聞いたファンは「あ、こいつ今俺のこと馬鹿にしやがった」と短絡的に捉えちゃうだろうし、普通に炎上しちゃいますよ。
だけど、なぜか富野さんは炎上しないことの方が多い。
多分、ファンたちも彼のキャラを理解してるんだろうね。
富野「お前らは、馬鹿だ」
富野ファン「うぇ~い!」

今はもう絶滅危惧種となった「いつも説教してくる、ご近所の偏屈ジジイ」的ポジションを確立した人である。
敢えて彼は挑発的な言動をすることがあるので、このインタビューでも
「『鉄腕アトム』第96話(富野さん初演出回)は絶対に見ないで下さい」

という発言をわざわざしてたので、
逆に、見ましたとも(笑)

これね、大学を卒業したばかりでシロウト同然の富野さんが初めて絵コンテを描き(しかも脚本は無かったので実質富野オリジナルである)、手塚先生に見せたら「うん、いいよ」とあっさり放送された回だという。
この経験で、富野さんは「虫プロ、ここアカンわ・・」と思ったらしいけどね。
「こんなものをDVD&Blu-ray化する側もアタマおかしい!」と彼は怒ってましたが、まぁ、実際に見た感想をいうと、そこそこ面白かったです(笑)。
この初期「アトム」の富野回については、やはり「青騎士」編をお薦めしておきたいですね。
第179/180話「青騎士」(1966年)

これは、「鉄仮面を着けたダークヒーローが体制側に反旗を翻し、独立運動を興す」という、後の「ガンダム」シャアの原型と見るべき名作である。
また、大学時代は全共闘の渦中にいた富野さん自身の姿を投影したものともいえよう。
これが約60年前の富野さんの仕事かぁ・・

ところで、今年2025年は富野監督作「リーンの翼」20周年だという。
それを記念し、先日に新Blu-rayがリリースされたそうだ。

これは20年前の作品ではあるものの、その一方で富野作品としては2番目に新しい作品でもある。
20年前のものが、2番目に新しい?
富野さん、どんだけ寡作やねん!

で、約半世紀を経たことで、最近の富野さんは「青騎士」の頃とだいぶ作風が変わってきて、オンナノコの物語(お姫様系)を作るようになってきたのよ。

うむ、それを踏まえると今年の彼と愛子様との邂逅にはやはり感慨深いものあります。

これね、主催側は「富野さんは気難しいと聞くし、大丈夫か?」「彼は左翼(反体制思想)なのに皇室に会わせて大丈夫か?」と、めっちゃ心配してたという。
ところが大方の予想に反し、愛子様と懇談後の富野さんは、めっちゃ上機嫌だったそうだ(笑)。
その会での会話の詳細は不明ではあるが、関係者いわく、「愛子様の富野氏への応対は見事だった」とのことで
このお姫様、意外と只者じゃないということが分かりましたw

最近のマスコミの論調、明らかに愛子様の天皇即位待望論に傾いてきてますね。
で、富野さんもこれまで皇室に対しては色々複雑な思いもあっただろうが、少なくとも愛子様には好印象を抱いた様子。
・・えぇ、富野さんも富野さんで、ああ見えて実はアップデートされてる人なんですよ。
前述のインタビューの件に話を戻せば、彼は収録の終盤にて非常に興味深いことを述べてまして・・。
「僕もこの齢になって、ようやくジョンレノン『イマジン』を認められるようになりました」


白富野も、遂にそういう領域にまできたんですね(笑)

