「+Ultra」アニメは、2019~2020年の作品を見るに限る
今回は、フジテレビのアニメ枠「+Ultra」について少し書いてみたい。
私、個人的にはフジテレビって凄いと思ってるんだよね。
週の編成の中で「ノイタミナ」「+Ultra」というふたつのアニメ枠を維持して、しかも枠の各々にきちんと「コンセプト」を掲げてるんだよ。
ノイタミナ・・国内仕様アニメ
+Ultra・・国際仕様アニメ
こういう枠の「コンセプト」って、他局のアニメ枠にもあったっけ?
で、今回は「+Ultra」の方を取り上げるんだが、この枠を新規で立ち上げる際、フジテレビ常務(当時)の大多亮氏がこういう発言をしていたそうだ。
「世界を見据えて、破格の制作費を投じる」

大多亮の名前を見て「懐かしいなぁ」と思った方は、おそらくバブル時代を覚えてる世代ですね?
そう、80年代終盤~90年代序盤、いわゆる「トレンディドラマ」を仕掛けてたのはこの大多さんで、まぁ言ってみりゃ、Mr.バブルとでもいうべき人物ですよ。
まさにイケイケの業界人の象徴みたいな人で、某有名女優と浮名を流してたほどの人だし、多分あちこちのオネーチャンに
「ザーギンに、シースー、クーイーに、イークー?」
とか言ってたタイプだと思う。
まぁとにかく、そんだけバブルな大多さんが「破格の制作費」と明言したんだから、これはマジ莫大な金額だったんだと思うよ。
いや、しかし今の「+Ultra」枠放送アニメを見て、
「そんなにおカネかかってるとは思えないけど・・」
と皆さんは感じるかもしれない。
・・うん、そうなんだ。
ぶっちゃけ、上記の大多発言は6年前のことであり、今はその発言の効力も失効していると考えた方が妥当だろう。
ただし、「+Ultra」立ち上がり当初は、その「破格の制作費」は本当だったんだと思う。
それは作品のクオリティを見れば一目瞭然。

<+Ultra 初期作品(2018~2020年)>
【第1弾】INGRESS(2018年)
【第2弾】revisions(2019年)
【第3弾】キャロル&チューズデイ(2019年)
【第4弾】BEASTARS(2019年)
【第5弾】空挺ドラゴンズ(2020年)
【第6弾】BNAビーエヌエー(2020年)
【第7弾】GREAT PRETENDER(2020年)
これらのラインナップ、なかなかの傑作揃いなんですよ。
皆さんにとっても、印象深い作品が含まれてると思う。
正直いうと、第1弾「INGRESS」だけは「あれ・・?」という感想だったが、それ以外の作品はいずれも面白かったし、おカネかかってるのも間違いない感じ。
こうして2020年までは良かったんだが、しかし2021年、博報堂DYメディアパートナーズが+Ultraから撤退、代わりに米国法人Crunchyrollが共同制作に食い込んでくるなど、なぜだか急に不穏な動きを見せ始める。
で、このへんから枠のクオリティが少し怪しくなり、時々ハズレが出てくるようになったんだよねぇ・・。
当時のフジテレビに一体何が起きていたのか、その詳細はよく分からん。
でも、ここで敢えて言っときたい。
+Ultra作品を見るなら、初期作品に絞った方がいい!
じゃ今回は、この初期作品中から、2つの作品をご紹介しようと思う。
まずは、「キャロル&チューズデイ」から。

これ、キャラの絵がめっちゃイイ感じでしょ?
このキャラ原案を手掛けてるのは「ツルモク独身寮」等で知られる漫画家の窪之内英策先生で、やっぱこの人、魅力的な画を描くよなぁ・・。
で、監督は「音楽ならまかせておけ!」という、お馴染みの渡辺信一郎。
案の定、この作品は、彼の洋楽ウンチクがぎっしりと詰まった内容になっている。
音楽モノとはいえ、「ラブライブ」的なアイドル系じゃないよ。
完全にアーティスト系で、作品イメージとして最も近いのはキーラ・ナイトレイ主演「はじまりのうた」じゃないだろうか?

この映画、私めっちゃ好きなんですけど。
多分、渡辺さんはアニメ版「はじまりのうた」をやりたかったんだと思う。
無名の女性アーティストが、今は落ちぶれた元業界人と二人三脚で立身出世していく系のサクセスストーリー。


物語は、とにかくシンプル。
ガールミーツガールから始まり、そのふたりがやがてミュージシャンとして立身出世していくというストーリー。
ただ、それだけである。
一応、舞台は地球じゃなくテラフォーミングされた近未来の火星だし、作中にはAIロボがたくさん出てきて設定上SFではあるみたいだが、あまりそこは重要というわけでもない。
あくまで、主軸は音楽。
で、+Ultraが国際仕様ということもあってか、楽曲の歌詞は全部英語なんだよね。
よって、声優と歌唱担当は別。
まぁ、そこはしようがないでしょ。
だけどこれ、海外ウケは良かったんじゃないかなぁ?
なんせ、楽曲が異様なほどイイから。
ホント、これほど音楽だけに特化したアニメも珍しいと思う。
いまどきのアイドル系のやつは、もうちょっと音楽と関係ない部分でドラマがごちゃごちゃしてるもんでしょ?
だけど「キャロル&チューズデイ」は、ほぼ音楽が絡む要素のみでドラマが構成されてて、LOVE要素とかほとんどないし、萌え要素もないし、イケメン要素もそれほどないし、とにかく、めっちゃシンプルな構造なのよ。
だから余計な事など考えず、ただ音楽のみに集中して見ることができた。
たまには、こういうシンプルな音楽アニメもいいね。
最後、今までお世話になったアーティスト、またはライバル、それらみんな勢ぞろいして「We Are The World」っぽいノリで締めくくるあたり、とてもベタではあるが、こういう王道はストレートに感動できるんだよね。
最終回、ちょっと泣いてしまった・・。
未見の方は、是非ご視聴下さい。
特に音楽好きの人にお薦め。

さて、次にご紹介するのは「BNAビーエヌエー」です。
これはTRIGGER作品、監督・吉成曜、脚本・中島かずきというコンビだから「リトルウィッチアカデミア」のスタッフ再集結ということだね。
ただ今回は「魔女」じゃなく、「獣人」が主人公。

はい、ヒロインはタヌキですわ。
しかし、あれだね。
+Ultraは2019年「BEASTERS」というケモノ主人公のアニメをやっといて、その3か月後に今度は獣人が主人公のアニメという、まさかの動物ゴリ推しである。
というか、これも例の「国際仕様」ってやつなのか?
言われてみれば、海外ってやたら「動物キャラのアニメ」が多い気がする。



外国人は、動物大好きなんだろうか?
というより、「BNA」の場合、これは「人種差別」というデリケートな問題を取り扱ってて、「人間」でそれを表現するよりは「獣人」の方が生々しさがなく、心象が少しマシになってたニュアンスはあると思う。
これを露骨に「〇〇人が〇〇人を差別してる」っぽい表現にすると、色々と問題になってただろうしな・・。
動物キャラは、「表現に便利」な利点もあるということ。
また、TRIGGERの描く獣人はかなり良かったわ。


さすがは天才・吉成曜、相変わらず面白い画を描くよな~。
一応、物語の説明をしておくと、上の画のヒロインは獣人っぽく見えるが、実は人間なのよ。
それがある日突然タヌキっぽくなってしまって、このタヌキ化の謎を探る為に獣人の町・アニマシティに行き、そこで人間に戻る方法を見つけよう、というのが大まかなあらすじね。

結構深刻な話なんだけど、その割に、アニマシティに来てからのヒロインは意外と獣人ライフをエンジョイしてるのが笑える・・。
こういうところ、TRIGGER最近のヒット作「ダンジョン飯」とほとんど同じテイストなんだわ。
「ダンジョン飯」好きな人は、「BNA」も絶対気に入ると思うので、未見の方は是非ご視聴下さい。

しかし、こうして改めて見ると、「キャロル&チューズデイ」にせよ、「BNA」にせよ、2020年までの+Ultra作品ってホントにどれもクオリティが高いんだよね。
ぶっちゃけ、当時として日本最高峰のアニメ枠だったのでは?
それが今では・・。
私が思うに、それまでの流れが大きく変わったのは、きっと2021年10月、この作品からのことである↓↓

皆さんご存じ、「マブラヴオルタナティヴ」ね。
大多常務の「破格の制作費をかける」という話も、この「マブラヴ」あたりから明確に失効となった、と見るべきだろう。
つまり+Ultraは、
・「マブラヴ」以前の作品グループ
・「マブラヴ」以降の作品グループ
この2つのグループは別モノ、と考えておいてください。
でもって、「マブラヴ」以前の+Ultra作品、アニメファンなら全網羅しとくべきかと。


