日本でウケるアニメ、ウケないアニメ、絶対コケるアニメ
今回は「日本でウケるアニメ、ウケないアニメ」というテーマで少し書いてみたいと思う。
じゃ、まず最初に取り上げてみたいのが、記録的大爆死が昨年話題となったこの作品です↓↓
「ChaO」制作:STUDIO4℃(2025年)


・・はい、昨年は細田守の「果てしなきスカーレット」大爆死の方にばかり皆が食い付いたが、ホントいえばこの「ChaO」の方がエグかったんです。
「果てしなきスカーレット」興行収入➾約6億(推定)

「ChaO」興行収入➾約5000万(推定)

「興収5000万ってことは、ようするに単館上映だったんだろ?」と思われるでしょうが、いえ、きっちり全国300館のロードショーだったみたいです。
うわぁ~、それだけの数の映画館押さえて5000万ってことは、おそらく地方では観客ゼロの状態で上映した日もあったのでは?
いや、本来なら300館というのは「鬼滅」級の映画を上映する場合の規模で、正直「ChaO」程度ならせいぜい50館前後ぐらいでも十分。
なのに、なぜ全国300館という身の程知らずなことをしてしまったのか?
はい、理由はコレ↓↓
「構想7年!作画枚数10万枚超!アヌシー国際アニメーション映画祭<準グランプリ>受賞!
あのSTUDIO4℃が放つ、渾身の力作!」

おそらくね、STUDIO4℃的には「アヌシー国際準グランプリ」がもっと効くと思ってたんじゃないかと。
・・そうだよね、アヌシーはもともとカンヌ国際映画祭からアニメ部門だけ分離独立したものであり、おそらくこのてのアニメ国際映画祭では最高権威かと。
少なくとも東京アニメアワードより上。
めっちゃ難関とされるコンペで、事実、これの長編部門で最高賞獲ったことある日本人は僅か3人のみで、宮崎駿、高畑勲、湯浅政明、彼らが各々1回ずつ。
あと準グランプリ(長編部門)獲れたのも、確か今まで原恵一/片渕須直だけじゃない?

ところが、実際のところ「アヌシー」のネームバリューなんてのは日本じゃ「何それ?」というレベルなんすよ・・。
それが「ChaO」の興収で証明されたでしょ?
で、実際これを見た観客たちのレビューもかなり辛口で、「酷い」と。
で、そういう酷評してる人たちも「作品としては最悪」「でも、作画だけは異様に凄い!」とアニメーションに対してだけは褒めてるのがひとつの傾向である。
そう、この「ChaO」という作品を最も端的に表現するなら
<作画厨向けアニメーション>です!


で、これはSTUDIO4℃にしては珍しいオリジナルアニメ企画なんだが、内容そのものは人間と人魚のラブストーリー(?)です。
でさ、皆さんやっぱり思うでしょ?
こういうオリジナル企画になると、何で各スタジオは皆がこぞって「人魚」をやりたがるんだ?と・・
<スタジオジブリ>

<サイエンスSARU>

<キネマシトラス>

やっぱね、アニメスタジオというのはどこも<水>を描きたいのよ。
だから必然、人魚などはよくモチーフに使われるわけさ。
で、こういう<水>に一体何の意味があるのかという話なんだが、そうね、たとえば食通の人は寿司屋でまず最初のネタは「卵」から注文するとかいう話があるじゃん?
あと、中華飯店で食通は最初に「チャーハン」を注文するという話もある。
で、この「卵」や「チャーハン」に何の意味があるのか?というと、ようは
そういうものにこそ調理人の力量が如実に出るからだとされてるのね。
・・で、アニメーションにおいて、その「卵」や「チャーハン」に該当するのが<水>なのよ。
こういう透明なものの表現が、最もアニメーターの実力の差が出るものだとされている。


でもね、じゃ我々観客が「お~、やっぱスタジオ〇〇の描く水の表現は他とひと味違うな!」という見方を毎回してるのかというと、案外そうでもないでしょ?
・・いや、中にはそういうマニアもいないことはないんだろうが、そんなのせいぜい全体のうちの1~2割といったところだと思う。
なのに、腕に自信のあるスタジオであればあるほど、どうしてもそういう画の技巧表現の方に走っちゃう傾向があるんだよね。
ある意味、我々お客(素人)を置き去りにして・・。


で、特にSTUDIO4℃というところはかつて「海獣の子供」(監督:渡部歩)で<水>の表現アニメ史上最高峰を示したという自負があるもんで、そこに絶対的自信を持ってるわけよ。
だからこそ今度は「ChaO」、つまり人魚の物語ですわ。
で、確かに「ChaO」のアニメーション技巧は素晴らしかった!
ベクトルこそ違えど、それこそ「海獣の子供」に匹敵するほどの作画密度の高さだったと思う。
・・で、あまりにも画の密度が高すぎるもんで、おそらく一回見ただけじゃ絶対に脳の情報処理がアニメーションに追い付かないんだよね。
こういうパターンってさ、普通なら作画厨は何度も繰り返し作品を見るものなのよ。
だけど、これ興収5000万程度だろ?
・・だとすりゃ、この作品はマニアの作画厨ですらリピート視聴しなかったということだと思う。
ある程度リピート客がいれば、普通なら興収は絶対1億はいくよ?
でも、今回は多分そのての作画厨ですら「アニメーションは凄い!でも見るのは1回だけでいいや・・」と撤退したんでしょうなw
で、これほどの作画厨向けアニメを前にしてもなお、敢えて彼らが撤退したというのは、
とにかく映画として「つまらなかった」ということに他ならないと思います(笑)

実際、岡田斗司夫さんも「作画は最高!でも脚本が・・」と仰ってましたね。
・・そう、脚本/構成をあまりにも軽視してますわ。
私は何より驚いたのは
「ChaO」の公式サイトの制作スタッフ欄に、脚本家の名前が記載されてないんですよ!

監督や作画監督/キャラデザ、美術監督の名前まで載せられてるのに、なぜか脚本家の名前が載ってない。
Wikipediaにも載ってない。
・・こんなの、普通あり得ます?
(ちなみに、脚本は木ノ花咲さんという人が書いてるんだが)
いや、確かにカロリー全て作画に極振りしたアニメがひとつぐらいあってもいいとは思うし、特にSTUDIO4℃は国際仕様でやってるから、言語はどうせ翻訳されて細かいニュアンスまで伝わらんし、ならばいっそ全て画で語ろうという発想は一応分からんでもないのさ。
・・とはいえ、いくら何でもそれにも限度ってもんがあるやろ~!

さて、この「ChaO」がアヌシー国際で準グランプリ獲ったことについては前述した通りだが、じゃその時にグランプリを獲った作品は何だったか?というと、実はコレ↓↓ね。
「ARCO-アルコ-」製作:フランス(2025年)


はい、これはアヌシーのみならず、米アニー賞長編インディペンデント部門(日本からは「果てしなきスカーレット」がノミネート)でも最優秀作品賞を獲ってます。
かなり評価が高いアニメで、お薦めです。
で、これの作画の技巧そのものなら「ChaO」の方がむしろ上では?と私は感じたが、とはいえ、トータルで見りゃ完全に【「ARCO」>「ChaO」】なんだよな~。
結局、その差は何だったかというと、
「ARCO」は圧倒的に脚本/構成が巧いんだ!

これ、ベースはジュブナイル系SFなんだが、そこに環境問題、AI問題等をうまく織り込みつつ、でも最後の最後には「家族の物語」として着地させたあたりは思わず「うまいっ!」と唸りましたね。
最後、ホント泣けます。
というか、私は泣きましたし・・。
ストーリーは「西暦2932年に生きる10歳の少年アルコは、タイムトラベルで西暦2075年にたどり着き、そこでイリスという少女と出会う。
タイムトラベル装置が故障したアルコは彼女の助けを借りて未来に戻る方法を探る」という非常にシンプルなボーイズミーツガールものである。
この前年もフランスは「マーズエクスプレス」というSF傑作アニメを輩出したが、あの作品がSFファン向けの硬派なやつだったのに対し、こっちはもっとファミリー向けの万人ウケする類いのやつさ。

「マーズエクスプレス」は「AKIRA」「攻殻機動隊」オマージュのテイストだっただろ?
一方「ARCO」は明らかに「天空の城ラピュタ」オマージュなんだよ。


いまや本家ジブリですらこういうSF系は全くやらなくなってしまったが、フランスは我が国のスタジオなんかよりよっぽど正統なカタチで日本の王道を受け継いでくれてる感じだね。
あぁ、でもね、STUDIO4℃は田中栄子社長が
「王道はジブリがやる。
私たちは側道を埋める」

とハッキリ仰ってるので、その<側道>がまさに「ChaO」なのかも?


というか、「ChaO」キャラデザはもう少し何とかならんのか・・
いや、それをいうなら「ARCO」だって「マーズエクスプレス」だって秀作ながらも日本では全然お客が入らなかったというのは、やっぱキャラデザが無関係ではないということさ。


やっぱ、ポイントは<目>ですよね?
我々が慣れ親しんでるアニメ文化ではもっと<目>のサイズが大きく、瞳にハイライトが入ってるものである。

フランスをはじめとして外国のアニメは大体がこういう描き方をしないし、またそれに合わせてかSTUDIO4℃も昔からこの<目>を採用していない。
STUDIO4℃の映画がいつもコケるのは、そのへんにも理由があるといえないか?
だって、「ChaO」の約2300倍の興収を記録した「鬼滅の刃」なんて
<目>にはハイライトどころか、
漢字を入れちゃってますからね?

STUDIO4℃も興収が欲しけりゃ、そろそろ<目>を変えるべきだと思う。

