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アニメ映画の<原価>について「君たちはどう生きるか」

今回は少しおカネの話をしたいと思う。

この記事を読んでくださってる方の中には、ご自身で商売をなさってる方もいるでしょうね。
そういうプロの方々の前で私が商売の話をするなど釈迦に説法であり、大変おこがましいことなのは百も承知。
だからまぁ、素人の戯言だと思って軽く聞き流してください。

皆さんは一杯800円のラーメンと高級フレンチ一人前5万円のフルコース、原価率は各々がどのぐらいだと思いますか?

これ、意外と思われるかもしれんが、実は原価率にそれほど大きな差は無いとされてるんですね。
どっちも、せいぜい3割程度だという。
つまり残り7割はたとえば人件費とか、店舗の家賃とか、流通にかかる費用とか、そういった諸々の諸費用を回収する為の上乗せ金額である。
・・あ、それと「儲け分」も当然そこに含まれるけど。

もちろん「おいおい、ウチの原価は3割なんかじゃねーぞ」という店もあるでしょう。
案外、どこも一律3割というわけじゃないんですよ。
たとえば、

牛丼の原価は実質4割を超えてるのでは・・?とも言われている(サイドメニュー除く)

チェーン関係者の方々、間違ってたらゴメンナサイ。
・・でも、キャンペーンの時の価格はどう見ても原価率4割超えてるよね?

じゃ、次は服の話。

服の原価も、実は大体3割程度だとされている(ただし、ここではブランド服限定の話ですのであしからず)。
残り7割は人件費、家賃、流通費用等を上乗せしてるんだね。

・・ただ、服に関しては「じゃ、アウトレットは?」と考える人たちも多いでしょう。

そうなんですよね。
ブランド服の場合、売れ残った商品が翌年半額ぐらいの値段でアウトレットに並ぶのが通例である。
ここでポイントなのは、服というものは1年程度じゃ減価償却されないので原価は1年前の時と全く変わってない、ということ。
なのに販売価格は半額だし、当然皆さんは「これって販売側にとって損なんだろうな・・」と思ってるでしょ?

いやいや、実はそうでもないんですよ。
私が個人的によく知ってるブランドなどは、

「アウトレットの体制なら半額で売っても実は利益が出る」と言ってましたわ。

・・そう、こういうところが商売のマジックなんだよね~。

ようするにアウトレットというのは、「原価3割に上乗せする7割分」の「7割」のところをかなり圧縮できるシステムなのよ。
それは多分、人件費と家賃の部分だろう。
特に人件費の部分が大きい。

皆さんも街で普通に百貨店や専門店で服を買う際、商品見てるとすぐに販売スタッフに張り付かれて困った経験とかない?
逆に、アウトレットでは商品見てても全然販売スタッフが寄ってこない。
それどころか、問い合わせたいことがあるのにスタッフが全然つかまらず、イラっとした経験がある人も案外多いだろう。

・・でも、ああいうのにいちいちキレてはいけないんです。
というか、アウトレットの商品が高品質の割に値段が安いのは、価格から「サービス」分をごっそりカットしてるから、なんだ。
あと、販売スタッフも「プロ」じゃなく「ただのバイト」だったりする例も多く、あの人たちのギャラも全く桁が違うものらしいぞ?

<アニメーションの原価について>

さて、こうして冒頭から長々と原価の話をしてきたのも、実は今回のテーマを「アニメの原価」に設定したかったからなんですよ。
アニメの原価、すなわち制作費のことだね。

じゃ、上の表をご覧ください。
これは「テレビアニメ1話あたりの原価」である。
もちろんこれは単に平均的な一例にすぎず、実際はピンキリだろうけど。
・・でも、1話(23分)あたり原価1300万
このぐらいをひとつの目安として、頭の片隅にでも残しておいてください。

じゃ、今夏の話題を独占し続けた劇場版鬼滅の刃/無限城編」の原価はどのぐらいか、皆さんはご存じですか?
まぁ、推定にはなりますが、

約18億円だと噂されています。

ちなみに、この作品の長さは155分。
これを前述のテレビアニメ「1話(23分)あたり1300万」と照らし合わせてちょっと計算してみてください。
・・あれ?全然計算が合わないんですけど?となるよね(笑)。

そう、「鬼滅」はめっちゃ原価高いんですよ。
・・でも、世の中は広くて、これよりも遥かに上という例もあるんですわ。

「塔の上のラプンツェル」⇒274億円

制作/ディズニー(2010年)

・・274億って、ディズニーは馬鹿なの?


まぁ、日本だってディズニーと似たような例はあるんだけどね↓↓

はい、日本アニメ史上の制作費最高額は「ファイナルファンタジー」だが、これは少し特殊な3DCGの作品だし、普通の2Dアニメでの史上最高額の例を挙げた場合、実は意外にもコレ↓↓なんですよ。

「君たちはどう生きるか」⇒制作費未公表

・・おいおい、制作費未公表なのに何でこれが史上最高額だと分かるねん?と言いたい人もいるでしょうが、これは鈴木敏夫さんが

「今まで日本で作られたどの映画よりも、一番制作費がかかってると僕は思ってます」


と発言しており、具体的な額には言及してくれなかったものの、ひとつだけハッキリしてるのは51億(それまでのジブリ最高額「かぐや姫」)よりは上だということ。

また、鈴木さんはこうも発言してくれている。

「1本の作品で、400~500人の人が関わってるんです。
その人達を拘束するでしょ?
そうするとね、何カ月かかるかでアニメの制作費というのは決まるんです。
アニメーターっていうのも、色々いるんですけどね。
その人達のノルマが、1週間5秒なんです。
そうすると、1ヶ月で20秒になるでしょ?
1年間になると、240秒になるんです。
つまり、1年間で1人あたり4分になるんです。
だから僕らの作品では、2時間の映画を作るのに最低2年掛かるんです」

「ジブリ作品の興行収入を全て足すと、なんと1,400億円になるというんです。
では、そのうちどれくらいジブリに残ってるかって気になるでしょ?

ほとんど残ってないんです」


この鈴木さんの話、嘘だと思う?
・・いや、私は案外マジだと思いますねぇ。

ここで興味深いのは、彼が「何カ月かかるかで制作費は決まる」と語ってる点である。
・・で、この「君たちはどう生きるか」は7年もかかってんのよ(笑)。
この7年という歳月、とても計画通りだったとは思えん。

じゃ、なぜ7年もかかってしまったのか?

多分、誰かさんが無茶なリテイクを出したんでしょw

この作品に関しては、何だか「いつもと違う」違和感があったのよ。

・制作費は全てジブリ負担の自主制作というカタチに
・メディアを使った広告宣伝は基本的にナシで
・映画公開後、すぐにジブリの日テレ子会社化を発表


いつも飄々としてる鈴木さんだが、今回ばかりは生きた心地がしなかったんじゃない?
だって、50億を超える制作費を全部自社負担し、そのくせ広告宣伝ナシって普通あり得ないでしょ?
「何でそんなギャンブルしたの?」というより、そうせざるを得ないところまで追い込まれていたんじゃないだろうか?
あぁ、このままいくとウチ潰れるわ・・」と覚悟をし、そこから水面下で日テレ子会社化の動きを映画制作中から既にとっていた、と見るのが自然である。

結果的には興収100億を超える大ヒットを記録し、逆にこれまでにないほどジブリは潤ったわけだが、それはあくまで結果論さ。
あの難解な内容だけに、ぶっちゃけ大コケしてても何らおかしくはなかったと思うよ・・。

あと、この作品は米アカデミー賞オスカーを獲ったことは皆さんも記憶に新しいと思うが、ひとつ思い出してほしいのは、その翌年のオスカー作品のことである。
Flow」という作品が受賞したんだよね。

・・これ、めっちゃ面白い作品だったんだが、

なんと制作費は、僅か5億5000万円!

「君たちはどう生きるか」の約10分の1スケールやないか・・。

鈴木さんは「1本の作品に400~500人が関わってる」と言ってたけど、この「Flow 」では50人以下だったそうです(笑)。

・・そう、原価を決定するのは常に<人件費>

いや、だからといって「日本も3DCGで人件費節約を」などと短絡的な話をするつもりはないさ。
・・でも、今のジブリが結構アブナイ綱渡りをしてるということは皆さんにも少しだけご理解いただきたい。

そもそもさぁ、映画の原価率っておかしいと思わない?

だって、原価50億以上の「君たちはどう生きるか」と原価5.5億の「Flow」がチケット価格同じなんだよ?
多分、DVD価格も同じなんだよ?

この映画は制作費が高いのでチケット1枚2万円となってますが、よろしいでしょうか?」と言われても、それはそれで困るけど(笑)。


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