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今の日本アニメでは辿り着けない領域「Flow」

今回は、話題の映画「Flow」について少し書いてみたいと思う。

3DCGアニメ作品「Flow」(2024年)

監督/ ギンツ・ジルバロディス(ラトビア)

・米アカデミー賞長編アニメ映画賞受賞
・アニー賞長編インディペンデント作品賞/脚本賞受賞
・ゴールデングローブ賞アニメ映画賞受賞
・アヌシー国際アニメーション映画祭審査員賞/観客賞受賞


これは、制作費5億5000万円という低予算インディペンデント作品であり、さすがにオスカー受賞は予想外だったそうだ。

監督はギンツ・ジルバロディスというラトビアの新鋭。
長編は、これが2作目だという。
1作目は「Away」という作品で、これもアヌシー国際アニメーション映画祭でコントルシャン賞を受賞している。

3DCGアニメ作品「Away」(2019年)
ギンツ・ジルバロディス

このジルバロディス監督、いうなれば「ラトビアの新海誠」ですよ。
それこそ「ほしのこえ」の頃の新海さんみたく、たった1人で映画1本作ってしまう人なんだ。

・・いや、新海さんはさすがにあの頃でも、音楽と声優だけは専門の誰かにお願いしてたはず。
でもジルバロディス監督の場合は、音楽制作まで全部自分でやっちゃうのよ。
あと、彼の作品にはセリフが1個もない仕様の為、もともと声優は不要。
少なくとも長編デビューの「Away」は、正真正銘彼ひとりだけで完成させている。

「Away」

まぁ、オスカー獲るまで日本じゃ知名度低かったので彼の作品見たことない人も多いと思うが、無料動画はYouTubeで見れますので、是非ご覧になってみてください。
※「Away」⇒「Away(2019)」でYouTubeを検索
※「Flow」⇒「Flow yuka misaki」でYouTubeを検索

この2作品、実はめちゃくちゃ似てるんですよ。

・どっちも全編セリフがない
・どっちも厄災に追われる形のロードームービー
・どっちも美しい自然描写、かわいい動物描写


あくまで本命はオスカー受賞「Flow」の方だが、でも「Flow」の前に予習として「Away」を見といた方が絶対にいいね。
「セリフがない」「ナレーションもない」⇒「画だけで全部を理解する必要あり」というのを、あまりナメてはいけません。
どちらかというと「Away」の方が易しいから、そこで一回慣れておく。
その後、少し難解な方の「Flow」に臨む、という二段構えがベストだよ。

さて、では本命である「Flow」の概要説明から入りましょうか。
この物語は、上の画の黒猫が主人公である。
特に名前はない。

舞台は、なぜか人類がひとりもいない世界。
・・といっても「核戦争後」とか、そういう雰囲気じゃないのよ。
自然は豊かだし、ただそこに人間の姿がないだけ。
この件の説明は何もないので、自分たちで考えなきゃならんのだが・・。
まぁ、それはひとまず置いておこう。

とにかく、主人公の猫が住んでる森にある日突然、大洪水/津波が押し寄せるところから物語は大きく展開するのね。

見ての通り、水位はどんどん上がってくるし、泳げない猫は絶体絶命。
ところが、そこに都合よく方舟が通りかかるんです(笑)。

そんな都合のいい展開があるかい!」とツッコみたくもなるが、おそらくこの洪水⇒方舟という流れそのものが「神の采配」という意味でしょう。

ちなみに、この方舟に乗ってた先客は、なぜかカピバラ(笑)。

カピバラと初対面の猫

その後も方舟には犬、猿、大鷲なども加わって、これがひとつのパーティーみたいな感じになるのね。

だが基本、動物は各々に縄張り意識があり、異種間では決して馴れ合わないものである。
その一方、この非常時でそんな悠長なことを言ってられない現実もあるわけで・・。

で、こういう展開、日本のアニメファンなら、どうしたって思い出しちゃうのが、この作品なんだよね↓↓

「けものフレンズ」

この「Flow」はラトビア版「けものフレンズ」という解釈で、ほぼOKだと思いますww


ただ、「けものフレンズ」はみんな人語を話すから会話内容で状況を掴めたけど、「Flow」では誰も喋らんから、とにかく状況を把握しにくい。

中でも特に把握しづらく、見る人の解釈が最も分かれてるのがこのシーンだといわれてるんです↓↓

<大鷲、ワームホールに吸い込まれていくシーン>

それまでファンタジーっぽい描写とかひとつもなかったのに、この場面だけ幻想的なファンタジー(SF?)で、みんな「・・はぁ?」となったんだよね。

で、私の知る限りだと、このシーンの解釈には主に3通りがあるらしい。

【解釈①】大鷲⇒死亡、猫⇒ギリギリで蘇生

溺れて失神状態の猫が見た夢が、上のシーンだという解釈(陸地にいた場面は、まるごと夢)。
つまり「三途の川」っぽいシチュエーションで、ワームホールにまで上った大鷲は死亡したことを意味する一方、途中で地上に戻った猫は死ななかったという意味になるのかと。

【解釈②】大鷲が自ら生贄になり洪水を鎮めた

大鷲が自分の意思で自己犠牲を選択し、自分の命と引き換えに洪水を鎮めるよう、神と取引した(事実、大鷲の昇天後、なぜだか急に水位が落ちた)という解釈。

【解釈③】大鷲のみ「神の審判」をクリアし、「楽園」へ行くことを許された

自らを犠牲にして猫を救うなど、動物たちの中で最も清廉といえた大鷲。
この洪水が仮に聖書にある「審判」なら、「楽園(エデン?)」へ行く資格を得たのは大鷲だろう(猫は、まだ少し足りなかった?)という解釈。

①~③のうち、どれが正解というのも特にないはずだし、好きに解釈すればいいと思う。

あと①の補足としては、大鷲の昇天後に、猫は水面に映った自分の姿を見るくだりがあったでしょ?
①の解釈でいくと、猫は水面を見たことで「これは現実じゃない」と悟った流れになるのさ。
そしてラストシーン、猫はまた再び水面に映った自分を見るくだりがある。
これもまた、今この瞬間が現実か否かを確認する作業だったのかもしれないよね
で、それが現実と確認できたかは、よく分からないんだけど・・(笑)。

さて、一方映像についてだが、これもなかなか秀逸だったよなぁ。

しかし、これはそのへんで市販されてる類いのソフトを使って制作したものらしく、実は全然おカネかかってないのよ。
それでも優れたアニメーションとして仕上がってるのは、ひとえにアングルのとり方の巧さだろうね。
あと、いわゆる「長回し」や「手ブレ」など、まるで動物ドキュメンタリーの密着カメラみたいなテイストである。

しかも、いまどきはこういうソフトの活用により、ビックリするほど少人数でアニメ作りを実現できている。
「Flow」はその典型である。
2Ⅾの人海戦術ばかりをやってる日本のスタジオは、もはやどうしようもないほどのガラパゴスになってきちゃったよね・・。

・・いや、それでも日本アニメのクオリティは近年どんどん向上してはいるのよ。
ただ、その向上の仕方というのが、世界アニメの潮流からだいぶ乖離してるという感じ。
今の日本って、絶対「Flow」みたいなアニメは作れないでしょ?
野生の島のロズ」みたいのも無理だし、「ロボットドリームズ」みたいのも無理。
ぶっちゃけ、今の日本アニメ作品はたとえクオリティが高くとも

国際コンペで勝てる映画のイメージが私は近年全く湧かなくなってきている・・

アヌシー国際映画祭2025最終選考作品群

お分かりいただけます?
この少しヤバそうなニュアンス。

ひとつに、メディアの報じ方も悪いのよ。
近年の国際コンペにおける日本アニメの凋落を全く報じてないもん。
最近「君たちはどう生きるか」以外で、何か目ぼしい栄冠ってあったっけ?

・・いや、私たち日本アニメファンも、「Flow」をじっくり見てみるところから一度仕切り直した方がいいのかもしれん。
思えば、日本のアニメ作品だって、米アカデミー賞、アヌシー、アニー賞にエントリーはしてたんだよ?
それらがことごとく、「Flow」に負けてしまった・・。

じゃ、日本のアニメには一体何が足りなかったのか?

そろそろ、そういうことをちゃんと真剣に考える段階にきてると思う。

2Ⅾ⇔3Ⅾ、そんな単純な次元の話ではない。


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