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押井守が繰り返し描く、「立喰師」とは一体何なのか?

今回は、押井守の謎のライフワーク「立喰師」について少し書いてみたい。

立喰師、これは押井さんが作った架空の職業であり、無銭飲食のプロの職人のことを指している。
おそらく、これが世間で初めて注目されたのは、アニメ「うる星やつら」の第99話「必殺!立ち食いウォーズ!!」(1984年2月8日放送)においてのことだと思う。
例によって、原作を無視した回ですね(笑)。

※興味ある人は、ニコ動にアーカイブされてますのでどうぞ

この回で、第64話「さよならの季節」以降時々出てくるようになった三隣亡学園のスケ番「ケツネコロッケのお銀」(cv榊原良子)の師匠として、「ケツネタヌキの竜」なるプロの立喰師が登場したわけだ。

ケツネタヌキの竜(左)とケツネコロッケのお銀(右)

なお、この回でお銀もまたその正体は立喰師であるという設定が明かされたのね。
お銀には固定ファンがそこそこいたはずなので、ある意味では衝撃回だったといっていいだろう。

劇中で屈指の美貌を誇るクールビューティー系キャラゆえ、ファンが多かったお銀

また、この回では他に「フランクフルトの辰」「ハンバーガーの哲」「牛丼の牛五郎」「中辛のサブ」「クレープのマミ」など、複数の立喰師の存在が明かされた。

いや、これだけなら例によって単に押井守の悪フザケと解釈できたんだが、ところが押井さんはその数年後、今度はOVA「御先祖様万々歳」作中にて、主人公の犬丸のその後の職業が「哭きの犬丸」を名乗るプロ立喰師である、という設定が明かされたのよ。

裏「うる星やつら」として、一部でカルト的人気を誇る「御先祖様万々歳」
主人公/犬丸(cv古川登志夫) 彼が後に「哭きの犬丸」と呼ばれるようになる

ちょいちょい出てくる、この「立喰師」設定は一体何なんだろう?と思ってたら、遂に押井さんは2000年から「立喰師列伝」なる小説を書き始め、またそれを映画化してしまったわけね。

それが、コレ↓↓

「立喰師列伝」(2006年)

原作/脚本/監督:押井守

これはねぇ、まごうことなきカルト作品なんですよ。
何が凄いかって、そのキャスティングである。

<キャスティング>

ケツネコロッケのお銀・・兵藤まこ(「天使のたまご」少女cv)

哭きの犬丸・・石川光久(ProductionI.G会長)

冷やしたぬきの政・・鈴木敏夫(ジブリ社長)

牛丼の牛五郎・・樋口真嗣(特撮監督)

ハンバーガーの哲・・川井憲次(音楽家)

中辛のサブ・・河森正治(アニメ監督)

ロッテリア店長・・神山健治(アニメ監督)

ロッテリア店員・・押井友絵(押井さんの実娘)

手前にいるのが「中辛のサブ」こと河森正治(自称インド人)ですww

キャストがほぼ全員、押井さんの知人/友人(笑)。
皆さんノーギャラだったという説もある。
こんなフザけた映画なのに「押井作品」ということで、なぜだかベネツィア国際映画祭に出品されてしまったという・・。

ケツネコロッケのお銀(兵藤まこ)
冷やしたぬきの政(鈴木敏夫)
牛丼の牛五郎(樋口真嗣)
中辛のサブ(河森正治)

やっぱ、中辛のサブのパンチ力が凄いww


なお、これに興味が湧いた方はYouTubeで「mamoru oshii tachigui 2006」と検索してみてください。
無料フル動画が見られます。

また、これのスピンオフ短編として「女立喰師列伝/ケツネコロッケのお銀-パレスチナ死闘編-」というのもあります。

原作/脚本/監督:押井守(2006年)

ここでもお銀役を兵藤さんが演じていて、しかもこれ、ちゃんとパレスチナでロケ撮影してるんですよね。

「立喰師列伝」本編の方で、お銀は「70年代消息を絶った」というカタチで終わっていたが、どうやら人知れずパレスチナに渡っていたらしい。

超大作というのは嘘です。たった22分の作品ですから・・

これに興味が湧いた方は、YouTubeにて「famele fast grifter」と検索をしてもらえば無料フル動画が見られます。

ケツネコロッケのお銀・・とおぼしき美女

こうしてパレスチナで、日本人っぽい女性がライフル持ってる画を見てると当然ですが「あの人」のことを思い出しますよね?
・・そう、「あの人」ですよ。

日本赤軍リーダー重信房子

70年代、パレスチナを拠点として革命活動を指揮していた重信房子

おそらく、学生時代の押井さんにとっては重信さんがアイドルであり、憧れのマドンナだったんだろう。
彼のミリタリー趣味も、そのルーツは間違いなく重信さんだと思う。

極論すると、

草薙も多分、原型は重信さんだと思うよ?

まぁ、押井さんの「全共闘かぶれ」は結構有名なんだが、たとえばこの作品では、それがモロですよね↓↓

「人狼JIN-ROH」(2000年)

原作/脚本:押井守 監督:沖浦啓之

うむ、ここでも「女立喰師」お銀同様、赤い布を纏ったオンナがモチーフとなってる。
このモチーフ、押井作品の中で繰り返し出てくるよな?

押井守実写デビュー作「紅い眼鏡」(1987年)

原作/脚本/監督:押井守

「真・女立喰師列伝」(2007年)

原作/総監修:押井守

「アサルトガールズ」(2009年)

監督/脚本:押井守
(ちなみにこの女性は「ケンタッキーの日菜子」という立喰師である)

赤=革命の色、というのは言うまでもなく、多分押井さんは女闘士というのに萌えちゃうタチなんだと思う。

で、彼のこの時代錯誤とも思える「革命」への渇望に皆さん昔から違和感のようなものを感じてきたと思うが、多分ね、それは彼のコンプレックスからきてるのよ。
押井守は1951年生まれ。
東大安田講堂陥落(1969年)の時は、まだ高校生である。
つまり、「少し遅れた世代」なんだよね。

ただし、彼とほぼ同世代にこういう人たち↓↓もいるんだ。

村上龍(1952年生まれ)
佐世保北高校でバリケード封鎖を敢行

坂本龍一(1952年生まれ)
新宿高校にてセクトの中心人物として活躍

そう、同世代の村上龍や坂本龍一は「少し遅れた世代」といいつつ、高校でそれなりに爪痕を残してるわけさ。
ところが押井さんはどうかというと、実は彼もまた村上龍同様に「バリ封」を実行する予定だったのに、

事前に計画が親バレし、隔離されたらしい・・(笑)

彼にとって、これが生涯拭えぬコンプレックスであり、その<不完全燃焼>の鬱憤を晴らすかのような作品を後にいくつも作っている。


その鬱屈したキモチが顕著に出てるのが、私はこのシリーズ↓↓だと思うぞ。

「機動警察パトレイバーTHE MOVIE」(1989年)

「機動警察パトレイバー2THE MOVIE」(1993年)

このふたつの作品、押井さんが描きたかったのは、篠原遊馬でも泉野明でも後藤隊長でもなく、テロを企てた帆場(1作目)と柘植(2作目)という両名である。

帆場

柘植

1作目は、かなり抽象的な物語だね。

押井さんは、この作品を「『天使のたまご』でやろうとしたことと同じ」だと語っている。
「天使のたまご」と同じ?

じゃ、神(天使)なんてここにはいない、と?

「天使のたまご」

なるほど。

「パトレイバー」ではラスボスでありつつ、物語の冒頭で自殺してしまった帆場という人物、やはり彼は

帆場⇒ホバ⇒エホバ⇒神、ということで

帆場の自殺⇒「もう神は不在」って意味だったのか?

革命の理想は敗れ、その正義は幻想だった、と後に思い知った押井さん。
まさに、「神は死んだ」である。

で、やたら抽象的だった第1作目に比べ、第2作目からは若干具体性を帯びてくる。
これは「天使のたまご」より、押井さんの実写デビュー作「紅い眼鏡」の方に近いんだよね。

原作/脚本/監督:押井守

これは「人狼JIN-ROH」とやや繋がりがある物語で、「ケルベロス隊」所属の主人公がお上からの隊の解散命令に従わず、プロテクトギア(強化服)を持ち出して逃走する(国家に叛逆する)というプロットである。

プロテクトギア

ただ、なぜかこれの主演が千葉繁(声優)でしてw

もともとが「千葉繁のプロモーションビデオを作ろう!」というところから始まった企画らしく(⇐意味分からんw)、超テキトーなやつだからあまりお薦めする気はありません。
ラスボスが玄田哲章だし・・(笑)。

ケルベロス隊

一応、ケルベロス隊の元同僚、および恋人だった女性と体制派⇔反体制派という敵対した立場になって哀しい再会するくだりは「パトレイバー」の柘植⇔南雲と全く同じシチュエーションではあるんだが、でも、こっちは千葉繁⇔鷲尾真知子(「うる星やつら」サクラ役声優)という生臭いカップリングだからなぁ・・。
「パトレイバー」に比べると、これ、画的に全然ダメだわ(笑)。

「パトレイバー2」柘植と南雲

なお「紅い眼鏡」見てみたいという物好きがいらっしゃるなら、YouTubeで「THE RED SPECTACLES1987」と検索してみて。
無料フル動画あるから。
見て後悔しても、私は一切関知しないが・・。

ただ、この「紅い眼鏡」でも兵藤まこさんが「謎の女」役として出てきます。

本作では名が明かされてないキャラだが、これどう見てもケツネコロッケのお銀ですよね?

で、全てを(叛逆の敗北を)見届けた彼女がラスト、タクシーに乗って空港に向かうところで物語は終幕となる。
・・やっぱ、その行き先はパレスチナ?

なぜか、その時の運転手が大塚康生だというボケ(笑)

とにかく、立喰師というのは<革命の闘士>のメタファーだと私は解釈してるのね。

それは、押井さんにとっての青春そのもの


結局、クリエイターというのは自身の青春の残像を一生描き続けていくものだと思うのよ。

たとえば庵野さんとか、そのへんが超分かりやすいでしょ?

つまり、庵野さんにとってのウルトラマンや仮面ライダーに等しいのが押井さんにとっての<革命>であり、それをシンボル化したものが、<赤い布を纏ったオンナ>という立喰師。

それは青春時代に憧れた重信房子のメタファーかもしれません。


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