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庵野秀明は、なぜ「さよならジュピター」を愛するのか?

皆さんは、このSF映画↓↓をご存じですか?

「さよならジュピター」(1984年)

原作/脚本/総監督:小松左京

はい、駄作と揶揄されることも多い本作ですが、なぜか近年になり一躍注目を集めるようになりました。

それは、この作品↓↓がキッカケだとされています。

「シンエヴァンゲリオン劇場版」

というより、正しくは林原めぐみが唄った挿入歌ですね。

唄:林原めぐみ(オリジナル:松任谷由実)

一番クライマックスのところで「なぜユーミン?」と皆さんも思っただろうが、とはいえ、この映画の「泣きポイント」に絶大な効果があった選曲ではなかっただろうか?

♪いつでも人々を変えるものに
♪人々は気付かない
♪行く先はどのぐらい遠いの
♪もう二度と戻れないの

♪私があなたと知り合えたことを
♪私があなたを愛してたことを
♪死ぬまで死ぬまで誇りにしたいから

あかん、思い出したら少し泣けてきた・・。

・・でさ、庵野さんってユーミンと初対面した際に、その場でいきなり「『VOYAGER』を『エヴァ』の挿入歌で使わせてください!」と依頼したらしいのよ。
この曲、おそらく相当お好きなんでしょう。

松任谷由実

で、この曲というのはユーミンが「さよならジュピター」のテーマソングとして作った曲なんだ。
ということは、おそらく庵野さんってこの映画のことが意外と好きなんじゃないかな?
思えば、「エヴァ」の舞台である「第3新東京市」の名の由来は「さよならジュピター」に出てくる長距離貨客宇宙船「TOKYO-III」である、と彼自ら明言してましたもんね。

もちろんだが、曲を作ったユーミンもこの映画のストーリーに着想を得て「VOYAGER」の詞を書き下ろしたわけで、「私があなたと知り合えたことを、私があなたを愛してたことを、死ぬまで死ぬまで誇りにしたいから」というフレーズは「ジュピター」のクライマックスシーンと直結しています。

「さよならジュピター」クライマックスシーン

つまり「VOYAGER」という曲を「シンエヴァ」のクライマックスに持ってきたということは、この曲を介して「ジュピター」と「シンエヴァ」はそのクライマックスの意味を共有してる、ということなんですよ。
そもそも、上の画像(「ジュピター」クライマックス)↑↑をご覧ください。

どこからどう見ても「エヴァ」の世界観まんまじゃないですか!

「エヴァンゲリオン」サードインパクト

そう、「エヴァ」という作品は「ジュピター」成分が高いんです。
特に、こういうビジュアル面で彼に与えた影響は計り知れないですね。

『さよならジュピター』という映画は知ってるけど、駄作と聞いてるから敢えて今まで見てない」という人はおそらく多いと思うが、私が今回敢えて言っておきたいのは、

「『シンエヴァ』をきちんと読み解く為にも、『ジュピター』は視聴必須のテキストである」

ということなんですわ。

「さよならジュピター」における最重要案件ブラックホール

あと、庵野さんがこの「ジュピター」に惹かれてるのは割と分かりやすい話であり、彼は有名な話、「伝説巨神イデオン」の信者なんですよ。

「アオイホノオ」島崎和彦
「監督不行届」安野モヨコ

多分庵野さんの中では【ガンダム<イデオン】

・・で、彼の「イデオン」崇拝と「ジュピター」に何の因果関係があるの?と怪訝に思った人もいるだろうが、因果関係は大いにありますとも。

なぜなら、

「ジュピター」って、ほぼ実写版「イデオン」といって差し支えない内容なんですから・・

「さよならジュピター」
「伝説巨神イデオン」
「さよならジュピター」
「伝説巨神イデオン」
「さよならジュピター」
「伝説巨神イデオン」

確か、劇場版「イデオン」の公開は1982年。
そして「ジュピター」の公開は1984年。
つまりタイムラグがほとんどない。
だから「ジュピター」が「イデオン」パクったとかないと思うんだが、でも酷似してるのは事実。

それにしても三浦友和はケツ晒しやがって、一体これ誰得のシーンやねん?と思っただろうが、これが有名な「ジュピター」序盤のハイライト<無重力SEXシーン>である。

友和、お前ええケツしとるのぉ・・

この問題シーン、測ってみると結構長いんですよ(正確には6分間です)。

そもそも、なぜ無重力でヤッてるのかというと、友和がはっちゃけたのか、コトの途中で重力スイッチを切っちゃいましてね~。
百恵が相手では絶対できないプレイをしておこう、って(笑)。
・・まぁ、キモチは少し分かりますけど。
無重力って男のロマンだし。
確か、007も無重力でやってたし。

ただ、友和は後で百恵にめっちゃ怒られた気がするわ・・

百恵

さて、この「ジュピター」の原作/脚本/総監督は日本SF界NO1の巨匠、

小松左京先生である!

※この画像は大橋巨泉ではない

ちなみに、これのノベライズはきっちり「星雲賞」を受賞してるので、構想そのものは決して悪くなかったんだと思う。

もともとは東京ムービーが小松先生にアニメ用企画をオファーしたのが最初の原案だったらしく、そのアニメ企画が流れたので東宝が拾ったという経緯だったらしい。
当時は「スターウォーズ」や「未知との遭遇」や「エイリアン」や「E.T」などで空前のSFブーム。
しかし、小松先生はそっち系の娯楽作品というよりは、日本版「2001年宇宙の旅」というのをイメージして脚本を書いてたそうだ。

だから、もう「2001年」のオマージュがテンコ盛りの仕上がりです。

「ジュピター」冒頭シーン
「2001年」冒頭シーン
「2001年」宇宙ステーション
「ジュピター」TOKYO-III

「ジュピター」メカデザインはスタジオぬえ/宮武一貴さんが手掛けており、なかなか悪くない。

庵野さんとかは、まずデザインで「うひょ~!」となったクチでしょう。

で、ストーリー的には「木星を<第二の太陽>にする」というプロジェクトが中軸になってて、これって実は「2001年」の正統続編「2010年」と全く同じ設定なんですよ。

「2010年」(1985年)

原作:アーサーCクラーク「2010年宇宙の旅」(1982年初版)

なお、小松先生はクラークと仲いいらしく、友情出演の依頼がてらこの映画の脚本を彼に送ったら「うわっ、俺の『2010年と同じアイデアじゃん!」と思いっきり驚かれたらしい。
そうか、木星<第二の太陽>化計画って、SF作家なら割と思いつきがちなアイデアなのかな?

皆さんもご興味があれば、一度「ジュピター」と「2010年」を見比べてみてください。
ただ、さすがに世界3大SF作家の一角アーサーCクラークですら

「2010年」で無重力SEXをヤッてなかったしここは一応小松先生の<判定勝ち>ってことにしておきましょうかw

・・で、このイチャイチャしてるバカップル↑↑ですが、少しネタバレさせていただくと、物語終盤にはやや富野由悠季的展開になります。

ただし、そこに至るまでの過程が結構色々あるんですよ。

まず、三浦友和は「このままではブラックホールの襲来で人類がみんな滅亡してしまう」という危機を知り、

なぜか知らんが地球に帰還し、海で鮫とバトルするという謎の展開になる(笑)

しかし友和の奮闘も空しく、一頭のイルカ(名前はジュピター)が鮫の犠牲になって死亡してしまう・・。

ジュピター

ちなみに、このジュピターは登場するのがこのシーンが初めてなんですが、ここからが中盤のハイライト、謎のジュピター追悼シーンです。
生前のジュピターの元気な姿が回想シーンとして流され、観客の涙を誘うという趣向ですね。
まぁ、観客はそのイルカには特に何の感情移入もありませんけど(だって、このイルカは今出てきたばかりじゃん?)

なお、その回想シーンの中でイルカと戯れてたオッサンが、ジュピター追悼ソングをエモ~い感じで切々と唄い上げてくれます(フルコーラス3分間)

このシーン、私は号泣した!(意味不明で)

ジュピター教の教祖だという謎のオッサン

えっ?『さよならジュピター』って、イルカのジュピターとサヨナラする物語だったの?」とミスリードを誘う、大胆なプロットでしたわ。

というかさ、こういう鮫とかイルカとかオッサンの唄に尺を使うぐらいなら冒頭で張ってた重要な伏線、「木星に出没する謎の巨大宇宙船、ジュピターゴースト」の回収に尺を使うべきでしょ?
あのジュピターゴースト、当初は「2001年」でいう「モノリス」的立ち位置のものだっただろうに、結局は何も回収しないまま終わってしまった(笑)。

結局、最後まで放置された「ジュピターゴースト」

で、ラストは主人公とテロリスト(ヒロイン)の壮絶な殺し合いに・・

主人公
ヒロイン

このへんが、よく分からん!

ヒロインは過激派ながらも一応環境保護思想の人ゆえ、「木星を破壊してはならん」という主旨は理解できるが、でも今の事態は「木星を爆破することで襲来するブラックホールの軌道を反らす」「もし軌道を反らさなければ、人類は滅亡する」という状況だよ?
おそらく、ヒロインの行動の意味は「人類が絶滅しようとも木星を守ろう」ということなんだろうが、こうなると1ミリも共感できる要素がない。

天下の小松左京ともあろう人が、何でこんなワケ分からん設定にしたの?

う~む、小松先生、相当テンパってたんじゃないかな・・?

聞けば、この映画は予算が足りず、特撮班の川北紘一(「ゴジラ」の父)が小松先生に「おカネがなくて宇宙船模型を作れません!」と言ったところ、小松先生が「じゃ大根でいいよ」と言ったとされる逸話があってね。

私も気になって、本作のどこかに大根が映ってないかな?と探してみたが、残念ながら見つけられませんでしたw

ある意味、日本のVFX映画制作にトドメさしたとされる本作

1989年、SONYがコロンビアを買収したのも「もはや日本は自前でVFX映画作るの限界」という、一種の「ジュピター」効果だった可能性さえあるんだ。


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