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3DCGの時代、<特撮>は必要なのか?

今回は映画監督、および特撮のスペシャリストと知られる樋口真嗣について少し書いてみたいと思う。

今春、彼はNetflixで「新幹線大爆破」という大作の監督を手掛け、そのプロモーションとして、かなりメディア露出の機会が多かったんだ。
私は彼の出演番組等を幾つかチェックしてみたが、いやいや、彼のトークはいつも例外なく面白い。
何でも話してくれる人なので、情報源としてもありがたい存在である。

樋口真嗣(1965年生まれ)

この人、いまだ評価が定まらない監督だと思う。
シンゴジラ」にて日本アカデミー賞の最優秀監督賞を受賞しつつも、その少し前には「進撃の巨人」という世紀の大駄作を撮ってるわけで・・。

実写版「進撃の巨人」

ただねぇ、この「進撃の巨人」には色々な人たちの思惑が複雑に絡んだこともあり、単純に樋口監督だけを責められるもんじゃない、という話も・・。

・・とにかく、これほどの駄作を撮りながら、その後も仕事が絶える様子は全くない。
これは、業界が彼という才能を認めてることに他ならないのかと。

彼は幼少の頃から筋金入りの「特撮マニア」、いや、もっと厳密にいうなら「爆破マニア」で、なんせ中学生の時に「スターウォーズ(EPⅣ)」を見た時の感想は「爆破が日本の特撮よりレベルが低い・・」というものだったというんだから、ちょっと変わってるよね(笑)。

きっと皆さんは「ハリウッドの特撮が日本の特撮より劣るわけねーだろ」と普通に思うだろうし、実際その認識は間違いではないものの、ただ時々例外というのもあるのさ。

たとえば、東宝が1954年に制作した名作「ゴジラ」

実はこの前年の1953年に、ハリウッドはこういう作品↓↓を公開してるのね。

ハリウッド作品「原子怪獣現わる」(1953年)

これ、どう見ても【ハリウッド<東宝】だろ?

でも一応言っとくと、「原子怪獣現わる」のプロットは「水爆実験の影響で恐竜の生き残りが覚醒し、ニューヨークを襲う」といった内容であり、これどう考えても「ゴジラ」の元ネタなのよ。
つまり、東宝はハリウッドのネタをパクったわけね。
しかし、そのパクリの方が本家を凌駕してしまった・・

そう、ある一時期までは、日本の特撮はハリウッド相手にしても全くヒケをとらないレベルだったのさ。

東宝スタジオ

そして樋口さんは、たまたまお祖母ちゃんが東宝スタジオに出入りするような仕事をしてたらしく、幼少の頃からそのお祖母ちゃんの同伴でスタジオに何度も出入りしてたんだそうだ。
見学を繰り返すうち、スタジオの関係者たちと仲良くなり、やがて少しずつ雑用のような仕事を手伝うようになっていったらしい。

・・うむ、ここで最大のポイントとなるのが「関係者たちと仲良くなり」という部分で、樋口さんの最大のストロングポイントは、多分このコミュ力である。
人のフトコロに入っていくのが実にうまい。

実をいうと、この樋口さんと全く同じタイプが彼↓↓なのよ。

スティーブン・スピルバーグ

この人も、こう見えて実はコミュ力を武器にしてノシ上がってきたタイプである。
いきさつは、ほとんど樋口さんと一緒。
スタジオに出入りするうちにそこの関係者たちと仲良くなり、どんどん人脈を作っていったわけさ。
そのうち、空き部屋だったスタジオ内の掃除部屋を自分の住居にし、そこで暮らし始めたという(笑)。
こいつ、やっぱ只者じゃない・・。

で、樋口さんに話を戻すが、彼はその後も東宝で雑用のような仕事を続け、「ゴジラ」(1984年)では着ぐるみの着脱担当をやっていたという。

1984年版「ゴジラ」

で、この経歴がやがて大きく効いてくるのね。
というのも、その後知人のツテでガイナックスのメンバーと知り合うことになるわけだが、彼らは樋口さんが「ゴジラ」の撮影現場で仕事してた人だと聞くやいなや、もはや庵野秀明あたりは彼のことを完全に羨望と尊敬の目で見てたらしいんだわ。
庵野さんは、その「ゴジラ」を見て感動してたクチらしい。

・・いや、ホントはただ着ぐるみの着脱をやってただけのバイトなんだが、樋口さんも敢えてそのことは言わなかった為、ガイナックス側は彼を「特撮のプロフェッショナル」として三顧の礼に近いカタチで迎えることになったのだという(笑)。

で、彼のガイナックスデビュー作がこれ↓↓ですわ。

「八岐之大蛇の逆襲」(1985年)

もうね、この作品はとにかく爆破がエゲツないんだが、これは東宝スタジオで爆薬作りの手伝いをしてたという樋口さんのこれまでのキャリアがだいぶ活かされてたと思う。

さて、業界で樋口さんがその名を轟かせた出世作といえば、これ↓↓だというのが定説かと。

平成「ガメラ」3部作

監督/金子修介 特技監督/樋口真嗣

「ガメラ/大怪獣空中決戦」(1995年)
「ガメラ2/レギオン襲来」(1996年)
「ガメラ3/邪神覚醒」(1999年)


・・「ガメラ」かよ、と馬鹿にするなかれ。
この平成3部作は「怪獣映画の金字塔」とされており、たとえば「歴代怪獣映画人気投票」みたいな企画をやると、必ずといっていいほど3作品ともがTOP10入りするほどなのよ。
特に特撮マニアにはタマらんシロモノらしい。

この爆破シーンなんて、樋口さんの真骨頂だねw

で、マニアがこの映画を高く評価するポイントは、3DCGよりも特撮の方をちゃんとメインにしてるというところなんだ。

・・言っときますけど、「シンゴジラ」や「ゴジラー1.0」はあれほとんど3DCGですからね?

だけど、「ガメラ」はかなりの部分が<特撮>なんです!

そう、着ぐるみの中に人が入って、ミニチュアで作った街を破壊していくという日本古来の伝統芸能。

ただし、そういうクラシックな特撮でできることのほぼ全てが今は3DCGでできてしまう。

・・じゃ、特撮はもう要らない時代なのか?


いやぁ、そこが難しいところですよね。
樋口さんもそこは悩んでるらしく、最近は彼もかなり3DCGを多く使うようになってきてるから・・。

じゃ、費用面で一体どうなのかというと、一般的には3DCGの方が特撮より安上がりになるという。
ただし、ハリウッド並みにきっちりとした3DCGにする場合は、特撮の方がむしろ安上がりになるという。
何とも煮え切らない状況だな・・。

3DCGの「ゴジラー1.0」

ただ、樋口さんがひとつハッキリ言ってるのは、「特撮という技術は捨てるべきではない」ということだね。
特撮には3DCGにない何かがある、と。

そうねぇ、こういう新⇔旧というもの、これまでも写真が出てきた時に絵を描いてた人たちは困ったんだろうし、またテレビが出てきた時には新聞局やラジオ局あたりが困ったんだろうし、また最近ではネットが出てきたことによりテレビ局が思いっきり困ってるのが現状。
<新>の登場は、どうしても既存の<旧>を圧迫してしまうものである。

アニメでいっても、やはり手描きが<旧>で3DCGが<新>、ということになってしまうだろう。

<旧>

<新>

3DCGに圧迫されてる<旧>って意味では、手描きアニメと特撮というのはよく似た境遇なのかもしれない。
ただし、両者とも3DCGとは敵対するのではなく、むしろ融合していこうとしてる流れも非常によく似てるよね。

というか、むしろ私は3DCGが媒介となり、いずれアニメと特撮は融合するのでは・・?という気さえしてるんだけど。

アニメ「シンエヴァ」制作の為に作成された特撮ミニチュアセット

でね、私は特撮⇔3DCG⇔2Dアニメという3つがコーディネートされていく流れの中、そこで最大のキーマンとなるのが意外と樋口さんじゃないかな、という気がするんですよ。

彼と2Dアニメの縁は薄いように思われるかもしれんが、彼って「ナディア」の後半では実質的に監督だったんだからね?
あと、「トップをねらえ!」のプロット作ったのは意外にも樋口さんだったらしいんだわ。
どうもこのへんの話を聞くと、樋口さんがそのプロットを作ってる時に、「あの実相寺監督が新作(帝都物語)を撮るらしい」という情報を耳にし、居ても立っても居られなくなって思わず仕事放り出してその「帝都物語」の撮影現場にお手伝いとして参加してしまったらしいんだ。
それ、オトナとしてアカンやろ・・(笑)。

「帝都物語」(1988年)

ただ、その時に樋口さんは書いてたプロットを机に放置したままカイシャを出てしまったようで、たまたまその放置されてたのを読んだ庵野さんがその企画を気に入り、「この企画、俺にくれない?」と樋口さんに連絡があったらしい。
あぁ、別にいいよ、とその時は答え、やがて樋口さんも「帝都物語」の仕事が終わってガイナックスに戻ったら、例の「トップをねらえ!」が大ヒットしててビックリした、という話だね。
・・なお、この作品の原作は岡田斗司夫となってて、樋口さんのクレジットはどこにもありません(笑)。

なんつーか、樋口さんって結構損な役回りになってると思う。

「シンゴジラ」の時だって庵野さんばかり脚光浴びたけど、実際の現場では撮影スタッフがみんな庵野さんのワガママっぷりに相当キレてたらしくて、危うく全員にボイコットされるところだったという。
それを未然に食い止めたのが樋口さんだったらしく、さすがはコミュ力の人だね。
彼は学生時代からスタジオの職人(頑固なオジサンたち)に揉まれてきた分、そういう人たちの相手に慣れてたんだと思う。
でもホント、樋口さんがいなかった完全にアウトだったらしいぞ?

多分、庵野さんも「樋口が何とかするから」と分かってて、敢えてワガママ放題やってる気がするなぁ・・w


いや、このふたり、いいコンビである。
樋口さんって絵コンテも描けるし、ホントに何でもできる器用な人なのよ。

樋口真嗣のスケッチ

こういう右腕がいたら、そりゃ庵野さんだって心強いはずである。

ただ、彼もそろそろ樋口真嗣という個人の看板で売っていくべき頃合いですよね。


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